【ゴッホ展】巨匠・ゴッホの大胆絵と弟・テオのイケボ
鮮やかな色彩と、揺れ蠢くような強いタッチで人気のヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(尊敬を込めて以下、ゴッホさん)。
毎年何かしらの展覧会で名前が上がる巨匠の作品が、今年は東京・上野と兵庫・神戸を訪れています。
今回上野と神戸で開催される「ゴッホ展」では、《夜のカフェ・テラス》や《ひまわり》のような超代表作は登場しません。その代わりとは言っては失礼ですが、ゴッホさんが画家として活動した10年間を彼が残した作品とともに振り返ろう! という趣向のよう。
画商や書店員、牧師とさまざまな職を転々としたゴッホさんが画家になることを決意したのは、27歳。それまで絵の勉強などしてこなかったゴッホさん、やはり最初は「??」となる作品が続きます。
しかし、巨匠の若き日の模写や絵の拙さ(失礼か)を補うかのように、ゴッホさんの親戚で絵の師匠でもあった「」や、画家初期の友人(後に絵の解釈で決別してしまう)など、卓越した描写力を感じさせる作品も展示されています。特に師匠である の「羊飼い」は一見モノ。“灰色派”の別名をもつ「ハーグ派」の名に恥じない、空の空々しさと羊たちの白い毛からは、冬を生き抜く人々の懸命さが伝わってきます。
転じて第二部では、ゴッホさんといえば「印象派」のイメージ通り、マネやルノーなど、明るい色彩と軽やかなタッチの作品が鑑賞者をやさしく包み込みます。
しかしながら、その中でも異彩を放つゴッホさん作品。画家人生の晩年3年余りの間に描かれた作品が、次々と顔を覗かせます。同展覧会の目玉となっている《糸杉》や《薔薇》の鮮やかな色彩と強いタッチからは、生物の持つ生命力というよりも、ゴッホさんの画家としての情熱が感じられるよう。
HUNTER×HUNTERの念能力が使えたら、「凝」で確実に念が見えたはず。悲しいかな、私は念が使えないので、見ること叶いませんが。
また、今回の展覧会では、ゴッホに語る際には欠かせない弟・テオが登場します。兄・ゴッホと弟・テオの手紙のやり取りが所々に登場したり、声優・小野賢章さんがテオになり切って兄さんに語りかける音声ガイドも。
はっきり言って……耳が幸せでした。
耳切事件や精神障害、拳銃死など、なにかと事件の多いゴッホさんとその画風に似つかわしくなく(褒めています)、テオ役・小野さんのイケボと、女優・杉咲花さんのやわらかな美声が、ゴッホさんのスキャンダルをかき消すかのように、作品に安心を添えます。
個人的にはゴッホさんの行き過ぎ行動や、ゴーギャンとの諍い、耳切事件など、劇的な場面を扱って欲しいという不足感もありましたが、ゴッホさんの作品それ自体を味わいたいという人には、あっさりとしたやさしい説明の方が良いのかも。
展覧会に行っても音声ガイドは買わない人が多いですが、今回のゴッホ展ではぜひ聴いてもらいたいですね。
それでは、Au revoir !
「ゴッホ展」
【東京会場】
会期:令和元年10月11日(金)~2年1月13日(月・祝)
※12月31日と1月1日は休館
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
【兵庫会場】
会期:令和2年1月25日(土)~3月29日(日)
※月曜休館(月曜が祝祭日の場合は翌火曜休館)
会場:兵庫県立美術(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
「ゴッホ展」の詳細はこちら↓↓