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トリニティ

いざ京都へ ③ 浪人時代

2019.12.24 16:11


長女が京都に戻って数日後、

おばあちゃんから

さすがに二浪は大変だろうと、

学費援助の申し出があった。

とてもありがたかった。


二浪するとは予想外だったので

正直これから先が不安だった。


おばあちゃんは

長女が画の道に進むことを

心配して

子供の頃から警鐘を鳴らして、

アドバイスもしていた。


おばあちゃんの言う通り、

たしかに大変な道だった。

大学に行く前から

親子でヘトヘトになっていた。


それでもやはり可愛い孫が

苦労していたら、

兎にも角にも

応援しようとしてくれる。


おばあちゃんが

「頑張る気力があることが大事。

   気力だけは

   自分で出さなきゃ

   周りが応援しても

   出てくるもんじゃ無いからね。」

と、言ってくれた。



ふと思う。


おばあちゃんが

「画の道は大変。

 選んだら苦労するよ」

と長女に

話してきかせてなかったら。


誰も反対もせずに

好きなようにやりなさい、と

言っていたとしたら。


長女が高校生まで

想いを封じ込めることもなく

のびのびと

好きな画を描いていたら。



もし、そんな状況だったら、

誰にも理解されないと

苦しみながら

画を描き続けた

草間弥生さんに

共感したのだろうか。


草間弥生さんの通った大学を

目指したのだろうか。


こんな背伸びをしてまで

あの大学にと、

ここまでの努力を

したのだろうか。


部活も続かず、

習い事も一通りやると

飽きてやめてきた

器用貧乏の長女が

こんなに根気強く

1つの目標に向かって 

努力していることは

本当に驚きだった。



後になって振り返ると

あの時、あの人から

言われた言葉に

悔しい思いをした、

あの人のせいで

諦めかけたなど、


その当時には

嫌なことを言われたと、

その人に悪役のイメージを

持っことは多々ある。


でも時が経って振り返ると

本当にその人は 

悪役だったのか。


その言葉があったから、

その言葉に萎えて

自分の気持ちを抑えて

でもずっとくすぶっていて


その言葉に負けまいと

頑張った、なんて経験が

誰にでもある。



振り返って

そのことに気づいたとき


その人はむしろ

ガイドだったのではないか。




長女も然り。


画を描きたい気持ちを

封じ込めたからこそ


小さく小さく屈んだからこそ

大きなジャンプをしようとしている。



おばあちゃんは

意図したわけではなく

長女の生まれ持った

ブループリントの達成のために

あえての悪役を演じて

くれたのではないか。




そんなふうに思えた。






二浪はやはり苦しかった。

描きたい画は全く描けず

ひたすら3つの課題と向き合う日々。

評価と技術は上がるが

画に対するモチベーションは

下がる一方だった。


夏期講習まで必死でやり切って

評価も松が取れ

合格判定も出たら

燃え尽きた。

そこから1ヶ月、

全く気力が出なくて

画が描けなかった。


勉強はN先生に教わりながら

時々考え方の違いでぶつかる。


もうN先生に習いたくない、

と言い出して

しばらく時間を空けたことも。

それでも思い直し

また踏ん張った。



そして極めつけは

センターを終えた後に

気が抜けすぎて、

二浪目にして

なんと志望校への願書を

出し忘れていた。


締切3日前に予備校の先生の

指摘で気づき

慌てて提出しようとしたら

なんと成績証明書を紛失していた。

それが日曜日。


長女の悲鳴のような電話に

月曜朝から、長女の高校に連絡して

お昼前に成績証明書を

受け取り、

その足で書留速達で郵送。


長女は

願書だけでも提出期限の

消印有効に間に合えば

成績証明書は後日持参でも良いと

大学から言われたので

最後の直前模試を

ぶっちぎり

郵送のみで受取の願書を持って

郵便局に駆け込んだ。

そして締切日に成績証明書も

大学に届けた。


なんとかギリギリセーフだった。


まさか二浪目でこんな落とし穴が

待っているとは。


冷や汗とともに 

緊張感も戻ってきた。

気力云々の話ではなくなった。

ただやるしかなかった。





そして



晴れて




合格を手にした。



一緒に浪人した友達と

2人して合格できた。


白黒の風景が

カラーに変わった。


そのくらい苦しい2年間だった。


画を描く道を選んでから

4年の月日が経っていた。


ようやくスタート地点に立てた。



画を描く。


線を描く。


気分の良い日も

そうでない日も

ただひたすら


鉛筆を動かし

光と影を

描きこむ


ただ無になる



その繰り返しの積み重ねは

重ねてきた時間と

重ねてきた線の分



見えない柱となって

これからの長女を

支えてくれる。



何一つ無駄なものはなく

すべてが、

花になり

実となる。


たとえ

その先に筆を折り、

違う道を選ぶことが

起きたとしても

この経緯が

新たな路に続くことを


きっとまた信じられる。




おめでとう。




その先を

その未来を信じた

あなたの手にしたもの。