ニンニク/大塚智穂
「大塚さん、ニンニクのアルバイトしない?」
「ニンニクのアルバイト?」
「そう、ニンニクの皮むきね」
と、昨年の今頃(5~6月)声をかけていただいたのが最初で、香川県の「ニンニク」の生産量が全国で2位、というのも、昨年知りました。
スーパーで多く見かけるニンニクは真っ白。
中国産は沢山入って低価格だけれど、国産のものは1株でも結構なお値段がしますね。
さらに、手軽に使えるチューブに入ったすりおろしたニンニクも大小あったりして、ニンニクの皮を剥いて手がニンニク臭くなることもない。便利な世の中です。
当たり前な話だけれど、ニンニクは野菜の仲間で土の中で育ち、球根の部分がニンニク。収穫目前になると球根からニンニクの茎がにゅ~と伸びて、ニンニクの芽(茎ニンニク)が出ます。ニンニクの芽にいたっては、中国からの輸入のものがほとんどだと思いますが、この時期になると少しだけ島でも出回る(いただくことがほとんど)こともあります。
収穫されたばかりのニンニクは土まみれ。
根っこを落とし、皮を剥き、真っ白な状態に持っていくのが「ニンニクの皮むきアルバイト」なのです。とはいえ、慣れるまでは結構大変で、根を落とすのにもちょっとしたコツがいります。小刀サイズの小さな鎌がついた道具で、根っこの部分を丸く落とすのですが、刃を入れすぎるとニンニクのお尻の部分の身まで傷つけてしまうので、刃を入れすぎることなく根を切り落とさなければなりません。さらに、土の付いた皮も剥きすぎると実が出てしまう。しかも、全部が全部真っ白ではなく、皮が赤いものも良く見かけます。玉葱のように何層にもなっている皮を剥きすぎること無く、白い状態で留めるのもコツというか、「ここまで剥いていいかどうか…」という判断が難しかったりするのです。全ては慣れですが、土埃の舞う中、マスクに手袋、同じ姿勢で無心になってひたすら根切&皮剥きをこなします。
ここまでできれいな状態になった初期のニンニクたちは生ニンニクとして出回りますが、一定の時期を過ぎると、全て乾燥へ回されます。生ニンニクは水分が多く、全ての皮が生なので分厚い皮をめくります。実を庖丁の側面で叩くとパン!と破裂するように粉々になり、香りもフレッシュで生ニンニクは日持ちがしないので、今の時期だけ食べられる旬のものです。小豆島に来るまでは乾燥ニンニクしか食べたことがなかったと思う。乾燥ニンニクはみなさんがご存じの通りのもので、白くて薄い皮を何枚も剥いていくと実が出てくるというもの。根を切り落とした生ニンニクを乾燥室に入れ、数日間しっかり乾燥させます。その後、土のついた皮を剥くという作業がまっているのですが、薄い和紙をめくるかのような繊細な作業が待っているのです。乾燥ニンニクは生ニンニクと違って水分を飛ばしているため、日持ちがします。
綺麗になったニンニクたちは、大きさや状態(皮が綺麗に残っているか)などで等級が変わり、それぞれのランクに分けられ袋詰されます。皮が破れてしまったり、表面に赤い皮が出ているものはB品として価格が下がるそうです。味は一緒なのにね。
昨年も同じ作業をしましたが、今年はニンニクにならなかった実が凄く多かった。
玉葱の様な状態で収穫され、剥いても剥いても皮ばかりで実がないものが多かった。
それはもともの苗のせいなのか、天候のせいなのか、複合的な理由でそうなったのか、理由は分からないけれど、1年に1度しかチャレンジ出来ない農業って、改めて凄いなあと思う。1人の農家さんが一生のうちにチャレンジできる回数を数えたら、1年1年がどれほど貴重なのか。そんなことも考える事ができたのも、小豆島に来てから。
大塚 智穂