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【特集】建物のシステム管理の効率化にフォーカス①~「ビルラック」サービス【Geo Valueセレクション】

2019.12.25 01:59

◆空調等含む施設全体のシステム管理の効率化にフォーカス◆

◆導入のしやすさ等から注目される施設管理システム「ビルラック」サービスに注目◆

 地中熱・地下水熱利用においてこれまでヒートポンプや熱交換器、工事方法などの技術開発が進み、進化し続けています。運転開始以降のメンテナンス等の高効率化を含めた技術開発も一部で進んでいますが、熱利用システム単体に関するものです。一方で、建屋のオーナーや施設管理会社は各種システム全体の一部として地中熱・地下水熱利用システムを管理することになります。そこで、施設全体のシステム管理の効率化という視点で注目されるサービスに焦点を当て、紹介してみたいと思います。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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 今回焦点を当てたシステムは、施設管理システム「ビルラック」サービスです。このシステムは、シークェンス(大阪市西区靭本町1-6-6大阪華東ビル6階、安達和寛社長)が経済産業省新連携事業により開発を行った製品。2019年4月にリリースを開始したもので、導入のしやすさや管理業務の効率化などの点から注目しました。(下図はシークェンス社提供)

 「ビルラック」サービスは、ビル等建物の日常の点検業務・支援の履歴や計画を一元的に管理し、最適な中長期修繕計画立案を短時間で作成することで、施設の資産価値の向上、長寿命化、施設管理業務の効率化やコスト削減に寄与するサービス。

紙等で管理され、現場担当者に依存するような運用の建物保全履歴等を一元管理

 現在、建物の保全履歴の管理は、Excelや紙等で管理されており現場担当者に依存するような運用をされているケースがほとんどですが、「ビルラック」はデータを蓄積することに加えて、それらのデータを連動させることで、専門知識がなくても中長期修繕計画を容易に作成することができるようになる点が特徴です。

 同社では、これまでデータ化されなかった管理情報を蓄積することで、ビル管理のスタンダードモデルを構築して業務効率化を図るとともに、「施設存廃転売の判断」に資する情報の提供も行っていくとしています。

 このサービスについて、提供価格も導入のしやすさから注目しました。管理システムの多くは導入時のイニシャルコストの高さから躊躇するケースは少なくありませんが、同システムサービスはクラウド環境での提供により、安価な月額制で導入できる点が特徴。1棟(1事業所)から導入可能であり、アカウント数も不問。ユーザーにとって利用しやすい環境が整っていると言えます。

 主な機能は、作業者の予定管理、作業内容を「カレンダー機能」で一元管理できるほか、蓄積したデータから専門知識がなくても作成可能な「中長期修繕計画」、直観的な作業が行えることから書類検索の時間が1/10程度に抑えられる「ファイル管理」、複数棟管理に適した「管理ツリー構造」などがあります。こうした点でも柔軟なシステムになっています。

 空調を含む建屋の各種システムは保守点検が必要ですが、建物の保全履歴の管理は、Excelや紙等で管理されており現場担当者に依存するケースが多く、入力作業や確認作業の煩雑さや確認漏れ、担当者間での情報伝達の不備などによるエラーが起きる可能性が拭い去れませんが、一元化した「ビルラック」システムを導入することで複数の担当者がそれぞれの端末から確認でき、各種保守点検のスケジュール管理を共有化することで確認漏れ等によるエラーを防ぐことも可能になります。

 また、国土交通省のデータに基づき、建物用途・建設費・延床面積などから設備・部材を自動で生成することができるため、こうした視点でも導入しやすい特徴です。

 地中熱・地下水熱等利用システムの現状を見ると、熱利用システム単体での技術開発が進み、建物全体のシステムの一部として組み込まれてきました。地中熱・地下水熱利用空調システムは導入後のメンテナンスが比較的少ない点が特徴として挙げられますが、空調システムとして見れば、運転開始後にヒートポンプの定期点検、ファンコイル等のフィルター清掃などのほか、地下水を直接利用している場合では井戸洗浄などのメンテナンス作業は必ず発生します。オーナーや施設管理者視点で見ると、地中熱・地下水熱利用システムも建屋全体にある複数システムの一つである場合を考えると、こうしたシステムサービスと融合した顧客への提案等も有効と考えられ、今後、こうした動きが始まるのか注目されます。


※この記事は「Geo Value」Vol.89で掲載された記事を転載したものです。