はろいん/大塚智穂
「とりっくおあとりーと。おかしをくれなきゃいたずらするぞ」
小豆島に住むことを決めた時、小豆島について色々調べているうちに、ある人のブログに辿り着いた。私たちより半年程まえに小豆島で生活をスタートさせた辰巳(たつみ)家。夫婦の年齢も近かったこともあり、小豆島での彼らの生活ぶりをインターネット上で追っていた。その頃4人家族だった辰巳家も、今では6人家族になり、赤ちゃんだった子が会うたびにどんどんお姉ちゃんになっていく姿がなんとも微笑ましい。自然とも触れ合い、のびのびと暮している辰巳家の子どもたち。彼らを見ていると自然と笑みがこぼれてしまう。
昨日、用事があるからと、我が家に来てくれた女の子チーム(お母さん、娘3人)。おめかしをした小さなおばけは、猫耳のついたカチューシャをしてたりしてとってもかわいい。「あ!ハロウィンか!」と家にあったお菓子をそれぞれ小さな袋に入れて持って出る。1番上のお姉ちゃんが「とりっくおあとりーと。おかしをくれなきゃいたずらするぞ」と言うので「いたずらされたら困っちゃうな。はい、どうぞ!」と、用意したお菓子をそれぞれにわたす。
すると、なんと、可愛い小さな猫ちゃんのおばけからプレゼントを貰ってしまった。中身は手作りの「栗入りロールケーキ」が2つ。ロールケーキはそれはそれは美味しそうで、聞けば、私にプレゼントしたくて図書館で子供向けのお菓子作りの本を借りて、それを見ながら作ってくれたそう。しかも、手作りのうさぎちゃんのオモチャ付き。うさぎちゃんの耳を互い違いに折って手を離すと、クルクルと回りながら下に落ちるというもので、これは、私のお腹の中にいる子にと、プレゼントしてくれたものだった。ケーキもオモチャも姉妹が小さな手で作ってくれたかと思うと、胸が一杯になった。
かわいいおばけたちがクルリとうしろをむいて歩きだす。スカートには小さな尻尾がついている。よくよく見ると、ちいさな「くつした」だった。どこまでも可愛くて笑ってしまった。
翌日、もったいなくてすぐに食べられなかったロールケーキを食べた。普段は「食べてもらう」ことが多い私。心を込めて作ってもらったものがこんなに嬉しいなんて。こんなに美味しいなんて。
いままでハロウィンなんて全く縁がなかったけれど、来年のハロウィンは手作りのお菓子を用意しておかないとな。小豆島に住んで得たものは数え切れない。
大塚 智穂