人々を魅了する秘境は 千三百年前から続く祈りの地
上杉謙信や眞田家と縁の深い米子不動尊の御神体である米子大瀑布
その歴史を紐解くと、驚くような偶然に辿りついた
10月中旬頃に見頃を迎える、見事な紅葉の米子大瀑布 向かって左側が権現滝、右側が不動滝
古くから信仰の地だった米子不動尊奥之院
美しい渓谷を上がった先に広がるカルデラの断崖絶壁。落差80m超の滝が二条、轟音を立てて流れ落ちる雄大な光景が広がる米子大瀑布群は、2016年NHK大河ドラマ「真田丸」のオープニング映像でご覧になった方も多いのではないだろうか。
国指定名勝・日本の滝百選にも選ばれる須坂きっての景勝地だが、ここは古くから山岳信仰の地として修験者が修行を行う場所だった。
米子不動尊の起源は白山信仰だという。奈良時代、越前国(福井県)の僧・泰澄(たいちょう)が717(養老元)年に白山への登頂を果たし、開山した。それまで山への信仰といえば、遠くから眺めて山の神に感謝を捧げる「遥拝(ようはい)」が主流だったが、山中に分け入って厳しい修行を積み宗教的境地を目指す「修験」という祈りの形への移行のきっかけになったとも言われている。翌年718(養老2)年、泰澄の一番弟子・浄定(きよさだ)が四阿山に登頂し、白山大権現と四阿大権現を合祀したのが、米子不動尊・奥之院の起源と伝えられている。この頃より、二条の滝はそれぞれ「不動滝」・「権現滝」と呼ばれ、御神体として崇められてきた。また、不動滝は古くから修験者の「みそぎの場」として知られ、現在も夏には滝に打たれる白衣の行者の姿が見られる。
滝の近くにある奥之院はトレッキングの際もぜひお参りを
上杉謙信の護持仏が御本尊
時代は移り、1559(永禄2)年、上杉謙信が京に上洛した際、関東の庶民安寧のため平安時代に弘法大師(空海)が刻んだ不動明王を室町幕府13代将軍足利義輝より拝領した。以来この不動明王は、謙信の護持仏となる。
1561(永禄4)年、川中島第四次合戦の際、本陣にこの不動明王を祀り、謙信自ら戦勝祈願の護摩を厳修したと伝えられている。帰途の折、重臣柿崎景家、甘糟景持、直江実綱の手により、奥之院に不動明王を本尊として安置し、ここに寺号を米子瀧山威徳院不動寺と改め、現在に至っている。
ここに来ると心が落ち着く、と遠方から何度も参詣する方も少なくない 毎年5/1の春季大祭でのご開帳には多くの人が訪れる
眞田家と米子不動尊の関わり
米子不動尊の本堂に掲げられている「六文銭」は言わずと知れた眞田家の家紋。住職は眞田家の子孫だ。
眞田信繁(幸村)の子孫である住職がお見合いで結婚したのは、なんと信幸(信之)の子孫だった。つまり、関ヶ原の戦い直前、眞田家の存続をかけた激論の末、信繁と信幸が石田三成側と徳川家康側に別れることとなった「犬伏の別れ」から約400年ぶりに兄弟が再び一つの家族に戻ったということ。結婚するまで誰もそのことに気が付いていなかったので、親戚一同大変驚いたそう。
いつの時代から眞田家が不動寺と関わるようになったのかはあまりはっきりしていないのだが、奥之院本堂横の白山・四阿大権現社において眞田幸隆(眞田昌幸の父)や、幸隆の長男信綱などが祭司をした文が残っていることから、白山信仰だった眞田家と白山信仰の流れを汲む不動寺との関わりが既にあったと推察される。しかしながら、元々武田家の重臣だった眞田家がなぜ上杉謙信の護持仏を守っているのだろうか?副住職に伺ってみた。「信繁を人質として預かった上杉景勝が、信繁の才能を見出して大切に扱ったから、その恩返しなのかもしれませんね。」
副住職はイタリア語の通訳を務めるほど語学が堪能 住職も英米文学科卒で、インターナショナルなお寺!
副住職が「これからのお寺の役割」について話してくれた。「今生きている人を救うこと。山奥だからガソリンは減るけど、心を満タンにして帰っていただけたら嬉しい。」不思議な縁で守られてきたお寺で静かに自分と向き合ってみてはいかがだろう。
米子不動尊 本坊米子瀧山不動寺
住所 長野県須坂市米子町1057
TEL 026-245-0972
受付時間 授与品、御朱印 9〜16時 /ご祈祷・ご祈願、滝行 要予約
アクセス 須坂駅から長電バス(すざか市民バス)米子線終点より徒歩1分
◎お寺で悩みを相談してみませんか?
秘密厳守いたしますので、事前にお電話でご予約の上お越しください。
米子不動尊 奥之院
アクセス 本坊より米子大瀑布駐車場まで車で約30分。さらに徒歩20分
※渓谷を登るため、登山のできるような服装でお出かけください。
※2019年台風19号の影響で米子大瀑布へのアクセス道路である林道米子不動線が一部崩落したため、2019年12月現在も通行止めとなっています。
通行止め解除の時期は未定となっておりますので、米子大瀑布へお越しの際は最新状況をお確かめの上お出かけください。
米子不動尊 本坊米子瀧山不動寺へは問題なくアクセスできますので、どうぞお越しください。