いつだって、 おしゃれは女性の生きる力だ
激動の時代を生き抜いた女性たちを鮮やかに彩った着物に出会う
保存管理のため着物に風を通す「虫干し」 年に2回一般公開されている
驚くほど色鮮やかでモダンな銘仙
広いお座敷に所狭しと掛けられたカラフルな着物。着物というと伝統的な色柄を思い浮かべるが、こちらに展示されているのは大正から昭和初期にかけて作られた、鮮やかでポップな色柄のものが少なくない。普段は季節に合わせた所蔵品の一部として数点の着物を展示しているが、毎年春と秋の大虫干し会では所蔵している約300点の着物のうち50点ほどを見ることができる。須坂クラシック美術館は、元々須坂藩御用達の呉服商牧新七氏の邸宅であり、現在は、日本画家の岡信孝氏の着物をはじめとするコレクションを収蔵・展示している。
元々絹の着物は一部の特権階級にしか手に入れることができない高級品だったが、くず繭(均一でない糸や穴が開いた繭などから作られた糸)を使用した「銘仙」は一般庶民にも着ることのできる絹の着物であった。明治時代までは縞柄が中心だったが、大正時代からは部分的に染め分けた糸を織り上げ模様を表す「絣」の技法が用いられ、模様が表されるようになる。アール・ヌーヴォーとアール・デコの影響、化学染料の発達により、従来の草木染めの伝統的な着物とは全く違う、モダンなデザインの銘仙が当時の女性のおしゃれ着として大流行したのだった。
染めた状態の経糸 緯糸は染める場合と染めない場合がある
銘仙は当時の女性にとってどんな存在だった?
礼服ほど畏まったものではないけれど、ちょっといいところへお出かけ・お食事の時に身に着ける「おしゃれなワンピースのような」イメージ。一見驚くような大胆な色や柄からは、急速に西洋文化が取り入れられ、豊かになっていく時代のエネルギーを感じることができる。しかし近代化の一方、不況や戦争などに翻弄された激動の時代。生活必需品の着物に楽しみをを見出した女性たちにとって、おしゃれは「生きがい」と言っても良いくらい、心を豊かにしてくれるものだったのだろう。
着物を着てまちを歩こう!
蔵造りの建物が立ち並ぶ銀座通り
須坂クラシック美術館では、所蔵している銘仙を復刻した「復刻銘仙」を含む着物のレンタル・着付け体験ができる。洋服だったら絶対に選ばないような色柄にもチャレンジできるのは着物の醍醐味!ぜひ新しい自分を発見してみて。館内だけでなく外出も可能なので、まちを散策したり、カフェでお茶をしたり、思い思いの楽しみ方ができる。激動の時代を生きた人たちを想像しながら着物でめぐるまち並みは、また違ったものに見えるかもしれない。
本町通りの人気カフェ ラビラントのタルトタタンに舌鼓
須坂クラシック美術館
住所 長野県須坂市大字須坂371-6
TEL 026-246-6474
OPEN 9~17時
定休日 木曜日(祝日の場合は開館)・年末年始
入館料 300円 ※着物でご来館の方は2割引