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トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(2)

2019.12.30 03:00

松山・ケミビルで不定期に開催されているイベント「知らなくても楽しい、知ったらもっと楽しい○○の世界」。

10月11日の第4回目となる同イベントでは『愛媛の建築について』のテーマのもと、白石卓央、宮内健志と宮畑周平さんの三人で、愛媛の建築やデザイン、地域の素材など様々な観点でトークを行いました。

本記事では宮畑周平さんによるトークの内容を2回に分けてお伝えします。


Photography: 宮畑 周平 [Setouchi Editorial Institute]


以前の記事はこちら

トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(1)

トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(2)

トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(1)


Design / Materials


ここからは、古民家の見方というか、街並みの見方みたいなものを、デザインや素材の観点から説明してみます。


これはうちの店Kitchen313です。ここでは新たに焼杉を張りまして、現在四年目です。母屋の焼杉は百年ものですから表面の炭化層が全部剥がれ落ちて浮造り(うづくり)のようになっています。



このような焼杉の街並みが瀬戸内海の島嶼部ではデフォルトです。



次に、なまこ壁を新しくしたものがこの写真です。以前のものはかなり痛んでいたので、今回作り替えました。なまこ壁にもいろいろな装飾がありますが、うちは十字型というか花柄のような模様がある意匠です。なまこ壁については私も作業を見ながら理解しましたが、ここには瓦が並んであり、その瓦の目地を隠すようにこの模様が描かれています。これは何のためにあるかというと、雨がかかるので防水のために実用的に作られているのですが、お洒落で小粋な演出にもなっています。



他の家を見ると、例えば小林さんの家では「小」という字を並べ目地を隠すようになっています。その他にも様々な模様があります。



続いて、瓦の話です。うちの百年物の瓦には「菊間」と書かれていました。実際に刻印が打たれているんですね。「菊・間」の二文字の間に「〇」に「佐」と描かれています。


この刻印は瓦の小口に打たれているのですが、最近、菊間町かわら館に行ってやっと謎が解けました。かわら館の中は結構楽しくて瓦の歴史などを展示していますが、先程の刻印について、窯元別の刻印、名前とハンコが並んでいるものが展示されています。


この中に私の家の瓦と同じものがありました。岡田佐市さん作の瓦が遠く弓削島の古民家に残っているとがわかり、かなり震えました。この展示の側に、大正6年に岡田佐市さんによって作られたことが記されています。岡田佐市さんの瓦だけでなく菊富さんとか、松金さんとか、いろいろな窯元の瓦がひとつの家の中で使われていると分かりました。その中でも「佐島かどや」というものがあって。弓削島の隣が佐島なのですが、佐島瓦という菊間瓦ののれん分けのようなもので作られていたことが分かっています。



佐島に行くと瓦が町中に放置されています。島民に話を聞くと、島の中でも瓦葺きが徐々に普及し始めた頃に、蛸壺を焼いていた人が菊間に修行に行き技術を持って帰ってきて焼き始めたのが、佐島瓦の起源だということです。古民家は悲しい運命をたどることが多く、島の中でも荒れ果ててしまい崩れるのを今か今かと待っているもの非常に多いです。古民家には魅力がありますが、維持管理の問題とか、どうやって活かすのか、問題になることが非常に多いです。だけど、やっぱり良い古民家を残していきたいなと思いがあります。古民家はなるべく風通しを良くし、人間が使うという事が一番大事だと思います。今の私の課題は、このような古民家をどのように開いていくかということです。それが今後、私の人生の10年から20年先位の大きなテーマになってくるのではないかと思います。



続きはこちら

トークイベント『愛媛の建築について』座談会


Photography: 宮畑 周平 [Setouchi Editorial Institute]


トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(1)

トークイベント『愛媛の建築について』宮内健志(2)

トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(1)

トークイベント『愛媛の建築について』宮畑周平(2)

トークイベント『愛媛の建築について』座談会



トークゲスト PROFILE

宮畑 周平・みやはた しゅうへい

神戸市出身。瀬戸内海・弓削島で暮らす編集者、写真家、ライター、コーヒーロースター。最近はブランディングも。専門は建築。国の登録文化財に指定された古民家住まい。