フォード対フェラーリの結論は
雑誌に記事を書くので、アメリカ映画「フォードvsフェラーリ」の試写会に出かけた。以前から観たかった映画を観ることが出来たのも嬉しい。
実話をもとにした映画で、60年代のレースシーンにおいて、フェラーリに対するフォードの挑戦がテーマとなっている。
欧州でのレースが販売成績に影響すると聞いたフォード本社がフェラーリを買収しようとするが、最終的にエンツォ・フェラーリに断られ、自社で「フォードGT」というスポーツカーを開発する過程が前半部。
レースのためにクルマを売るといわれたフェラーリでは、量産車部門はフォードに売ってしまってもいいと考えていたとされる。
私が本で読んでいたのは、それでも、エンツォ・フェラーリがフォードの買収のオファーを断ったのは、レース部門はフェラーリに任せるといっておきながら、自分の権限が狭められるのを恐れたからだとか。
映画の後半部は、ケン・マイルズ役のクリスチャン・ベールが登場して、1966年のルマン24時間レースにおけるフォードとフェラーリの戦いだ。フォード・マークⅡはギアボックスにトラブルを抱えていたのは知っていたが、ブレーキが弱かったというのは映画で知った。
ベールがそれで事故を起こすエピソードも出てくる。ベールはアカデミー候補にあがっているとかで、たしかにいい演技だ。とても強く印象に残る。マイルズの奥さん役をやったモデル出身のアイルランド人カトリーナ・ボルフもいい。
ケン・マイルズがフォード本社にとってpain in the assだったというのは、この映画の原作本で触れられているが、映画はそこを強調することで人間ドラマに仕立てている。リー・アイアコッカはいいひととして描かれている。
ただ、クルマファンとしては、フェラーリ(レースカーのP3やP4を含めて)フェラーリが悪役になっているのが気に入らない。フォードGTをめぐる当時のドラマもそうとうおもしろかったようだけれど、ポルシェに打ち負かされるようになるまで、フェラーリが一所懸命、レースに打ち込んできた姿こそ、もっともドラマチックだから。