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松浦信孝の読書帳

11冊目 ぼくとわたしと本のこと

2019.12.30 00:15

22人で同時に作家デビューを掲げた、あるゼミの先生と生徒たちの挑戦

先日後輩に誘われたクローズのイベントで2年ぶりくらいにプレゼンテーションをする機会に恵まれた。


テーマは若い医療者達への読書のすすめ、おこがましい話ではあるが、今の自分が考えていることを、思う存分共有させて貰った。その中で若い世代でも本を読む人たちの例として、一つこの本を紹介させて貰った。


産業能率大学という、面白い試みをする大学が自由が丘にあるという。そのあるゼミで、教授と学生合わせて22名で、本を執筆、全員同時に作家デビューという企画が立ち上がり、この本が生まれた。


21人の学生達は、本好きの人も、本を余り読まない人も様々。それでもテーマは本について、コンセプトは「てわたし」。優しい風合いの本が出来上がった。


書いている学生は20歳前後、帯を外してしまっているが、もともと帯には


「わたしたちの20年に、本があった」


というあおりが付いている。

自分とも年齢が近い大学生達の、日々を振り返った生の声が込められている。


家族との思い出、恋の話、部活の話、友人の話。近い世代の人たちが、普段考えていることを知ることが出来るって、なんだか凄く新鮮だ。


そして皆どこかで本と出会っている。読み続けている人も、本を読んでいたことを忘れてしまった人も。


世代が同じ事もあり、彼らが読み聞かせて貰った思い出の絵本、小さい頃に読んだ本には共通点も多い。温かい家庭で、愛されて育ったのだろうと文章から察する。


そして、それぞれがいま在籍するゼミがとっても素敵な空間なんだろうって事もよく分かる。


彼ら一人一人と実際に会って話してみたい、そういう気持になった。


一人一話形式で書かれていて、それぞれの話の終わりに本が二冊紹介されている。知っている本や、意外な本、堅苦しくない、等身大の選書に親近感が増す。


本を読みたいけど、何を読んで良いか分からない、そういう人の架け橋にもなれる本


最後の、読書のすすめの小川さんの解説も素敵である。


センジュ出版らしい、あたたかい本がまた一つ、生まれた。