負ける美学 執筆者:けんとん
皆さま、年の暮れですがいかがお過ごしでしょうか?
どんな一年だったでしょうか?
僕は沢山の本や映画、音楽そして人と出会いとても充実した年となりました。
そしてその中で出会った皆さまがこうやって僕の文章を読んでくださってることを感謝した
いと思います。
本当にありがとうございます。
今回僕が書評を書かせていただく本は「鴻上尚史著 空気を読んでも従わない-息苦しさから
ラクになる-」です。
こちらの本は中高生向けに書かれているのでとても読みやすく、また大人が読んでも納得で
きる内容になっています。
話しがそれますが、しかださんが前に書かれた書評の中に出てきた大人という言葉ですが、
自分も今使って非常に違和感を感じました。
あれ?自分って大人って今の自分は使ってもいいのかなと。
内容がずれてしまうので深くは書きませんがとても興味深いテーマだなと改めて感じまし
た。
改めまして...この本のテーマになっている生きている事の息苦しさという事ですが、皆さん
も一度は考えたり感じたりした事のあるものだと思います。
この本ではこのテーマについて社会学的な見解から学術的に解いてくれています。
日本は個性が強い(見た目や考え方など所属する場において周りと違う事)と排除される傾
向が強い、これはどうしてなのか?という事に始まり自分がこれからどうすれば生きやすく
なるのかという解決法まで。
僕が非常に面白いなと思った部分があるのでご紹介したいと思います。
ある外国人の子供が両親の仕事の関係で日本にやってきて日本の学校に通い始めてからイジ
メにあってしまったそうです。
その原因は周りと比べて服が奇抜な格好だったから。
その子は今まで好きだった格好で学校に行っただけなのに、ただそれだけでイジメられてし
まいました。
その子はそれが原因で地味な服を着て登校するようになったそうですが、本人は全く理解出
来ずとても悩んでしまったそうです。
作者のこの子に対するアドバイスが非常にカッコよく感動しました。
学校というのは狭い世間であって世界の全てではない。
だからこの狭い世間には一旦負けて地味な服を着て登校する、そしてそれ以外の放課後友達
と遊ぶ時や習い事の時には自分の着たい服を着て登校する。
いつかあなたはこの世間に勝つために今は負けるのだと。
僕はずっと負けてばかりいました。
それが正解か不正解かは置いておいてとても生き辛い生活を送ってきていたと思います。
なんでこんなにも自分は意見を言えないのか、周りになんで飲み込まれてしまうのか、変
わってるねと言われてしまうのか、すっと疑問でした。
そしてその疑問が解き明かされた気がしています。
いつか勝つためにこの場では負けるのだと、あなたが受け入れられる場所を見つけるまで負
け続けて良いのだと。
そしてこの日本社会の成り立ちについて詳しく書かれていたのですが、こちらも非常に腑に
落ちた内容でした。
日本は農耕民族で村という社会で団結しないと生きることができなかったので、村(世間)
が神様というものとなっていった。
世間様に顔向けが出来ないという言葉がありますがこれはその事を表しています。
逆に西洋では狩猟民族でしたので村というよりは個人を大切にするという考えが基盤となっ
ていたので個人主義、自分を大切にするという考え方が広まりました。
しかしこれでは信じるべきもの神様がいません。
ここで登場したのが一神教の宗教です。
詳しく述べるの長くなるので省きますが、一神教の教えは非常に厳しく、自分以外の他の神
を信仰してはならないという教えがあります。
その為、西洋では他人より神を信じるのでより自分の考えに従うようになったと言われてい
ます。
僕はこれが非常に面白い違いだと思います。
日本人にとって神様というのは非常に曖昧でとてもミステリアスな存在だと思っています。
初詣には神社に行っておみくじを引くし、結婚式の時にはチャペルで挙げるし、そしてお葬
式の時にはお寺にお願いする、こう行った方が多いと思います。
初めて日本で教会で式を挙げた方は非常にバッシングを受けたと思います。
その時の言葉はきっと「そんなことしたら世間様が何と言うか...」
でも今の日本ではその世間様が教会での結婚式を受け入れ始めています。
今の日本はこの世間様が曖昧で壊れかけてきているのだと思います。
そんな時代、自分はどう生きたら良いのでしょう。
負け続けてきた僕が思うのはやはり負ける事だと思います。
負け続けて負け続けて僕が思った事、それは寂しさと孤独でした。
言葉に言い表せない不安や悲しさ、僕の頭の中の中心にある言葉は生き辛いです。
僕はこの言葉共に生きてきました。
そして今年で28になりましたが、ようやく気づくことができました。
立ち上がる時が来たのだと。
僕が共に生きてきた言葉と共に立ち上がるべきだと。
世間にずっと負けてはいけないと心から思います。
負け続けた事によって僕はよりこの気持ちが強くなったと思います。
これからも負けてしまい、また立ち上がれなくなる時もあるかもしれない。
でも僕は思います、一度は立ち上がることができたのだ、また準備してから立ち上がろう
じゃないかと。
この言葉を僕の生き辛さにかけてやりたい。
そして共にまた生きていこうと心から伝えたいと思います。