微睡みの行方
2016.04.25 09:14
彼女は彼の大きなバスタオルに包まり
朝の光の中、静かにその涙を拭った。
彼の放った正論を理解しながらも
受け止める時に、少し違和感のある痛みが伴ったからだ。
…では何故、私をここに?
いつまでこんな不毛極まりない、
愛に辿り着かない恋擬きの感情に心を傾けるのだろうか。
二人でいる寂しさに蝕まれるのなら、一人孤独に、しかし気楽にいた方が毒ではない。
共に過ごしても、迸る情熱を幾度重ねても、決して交わらないものが明確になっていくだけであろう。
後ろ髪なんて抜ける位引かれようが、
もう振り返るわけにはいかない。
この種の馴れ合いはいずれ何かを壊すだけの悪性腫瘍である。
元の人生や自分を取り戻すなら、いつだって早い方がいい事を知っている。
愚かになりたかった。
望まれていたのなら。
彼が時折、鏡に映った自分の様で放っておけなかったけど、錯覚だった。
自分は自分を守るべきだ。
不確かな余韻にスポットを当てるべきではない。
必要とされる事を必要としていた。
自分が消えても何も変わらず、笑顔で生きていける男に捧げる時間は無い。
少しだけ足踏みして微睡んだね、二人
とっても楽しかったわ。
ふいに幻想が立体的で鮮やかな気がして束の間は幸福な気持ちで。
吐き棄てる様な謝罪の軽さ。
忘れる事はないけど、忘れてと願う。
嘘は無かったが、真実も無かった。
あぁ、彼の微かな残り香さえもうタイムリミット。どんどん薄れていく。
もう少し微睡んでいたかったけれど、
それを拒んで彼女はそっと歩き出す。
もう涙は流さなくて良かろう。