三年間の軌跡。今何を思うのか。2年生インタビュー#3(小谷俊輔、田村真央、渡部明日香)
あけましておめでとうございます。
いつも『Bunken Magazine』を読んでいただきありがとうございます。
今年も研修科編集部一同、皆様に楽しんで頂けるような記事を書いていきますので、あたたかく見守っていただけると幸いです。よろしくお願い致します。
さて、第三回の今回は「ドルン役、小谷俊輔」「アルカージナ役(A)、田村真央」「アルカージナ役(B)、渡部明日香」にお話を伺いました。
①『かもめ』と2年生
―かもめに決まった時の心境をお願いします。
小谷
有名やし、一回やってみたかった。
なんとなく話も知ってて、
このメンバーでやったらどうなんのかなぁって。
田村
私はね〜、トラウマ!
―「トラウマ」ですか…?!
田村
本科の時に祐子さんの授業の『かもめ』であたしほんとに大失敗してて…。
明日香
…泣いてたよね。笑
田村
発狂してた。笑
「地獄だ!地獄の始まりだ!」と思って…笑
ロシア文学好きだけどチェーホフは相当難しいだろうなって思ってて。
―田村さんはロシア文学の良さはどんなところにあると思いますか?
田村
ん〜、意外と喜劇チック。
一人一人の”陰”な部分が”陽”にみえることが多いと思う。
明日香
なんか人間が屈折してるよね、ロシア文学に出てくる人って。不倫の話多いし。
ーそうなんですね…!
明日香さんはどうですか?
明日香
私は大学のゼミの先生がロシア文学専攻で、授業でも『かもめ』を取り上げてて。
それでチェーホフのことを少し勉強してたり、それとは別で、昔お世話になった先輩に『かもめ』の台本をプレゼントしてもらったりもしてて、
本科の授業で取り上げていたし、文学座にいる間にまさかこの作品をできるとは思ってなかったけど、
アルカージナをやってみたかったから、この作品に決まってうれしかった。
―アルカージナをやりたかった
理由や魅力はなんですか?
明日香
すっごい俗物的な人なんだよね、アルカージナって。
ロシア文学って、(格好つけて)ポーシュロスチ…、あ、喜田くんみたいになっちゃう。笑
(インタビュー#1の喜田裕也の真似をして)”ポーシュロスチ”って言葉があってそれが俗物的って意味なんだけど、
すごい表面上美しく着飾ってるのに中はぐちゃぐちゃみたいな意味で。
アルカージナは、そういう言葉の象徴みたいな人間だなって思う。
すごく感情の起伏が激しいし、演じがいあるなって。
―なるほど。
小谷さんと田村さんはご自分の役についてはどう思われていますか?
小谷
またお医者さんかと。笑
『わが町』も『怒濤』もそうやったから。
田村
私は、「天変地異が起きたのかな」って。
一番アルカージナだけはないなって思ってたの、自分の中で。
自分と同じ年齢の役とか、それ以下の役ばっかりやってきて、大人の役が初めてだから”どうしよう、どうしましょう”って思った。
今も思うけど。
(田村真央)
―自分より年上の役を演じる上での実感はありますか?
田村
ない。全然ない。
実感を持ちたいんだけどさ、どうしたら持てるのかなぁ?今はまだあるかないかって聞かれたらほんとにないと思う。
みんなどう実感を持ってるんだろう、ききたい。
明日香
あんまり自分が何歳だって考えて演じないけど、
でも他の役との関係の中でこの人は”自分より年下”だとか、この人は”自分より年上”だとかあるじゃん。
そういうのは考えるかもしれないなあ。
小谷
今の俺は昔の自分が思い描いてた27歳ではないし、10年前とあまり変わってない。
多分55歳になってもこのままやし、
あんまり年齢がどうこうというのはないかな。
だから別にいいんじゃない?
そのままで。
明日香
アルカージナとか特にそうだもんね。年齢に追い付いてない感じがすごいよね。笑
②過去の演目について
―3年間で影響受けたり、面白かった演目はなんですか?
小谷
『大市民』(57期本科卒業公演)。
自分がやりたいことをやりたいようにやれたなと思う。
明日香
そうだね、余白が結構あったから小谷さん毎回違うことしてたよね。
田村
私も同じく『大市民』。
1番研究所でやる意味があると思った。
いろんな人がいてさあ、誰が主役みたいな話じゃないのよ。
明日香
切り取った写真をいっぱい張り付けたみたいなね。
小谷
場数が30場くらいあって。
明日香
そして前後関係あるのかないのか微妙にわかんない。笑
―明日香さんはいかがですか?
明日香
私は『ロミオとジュリエット』(56期研修科卒業発表会)だな。
シェイクスピアの長いセリフを2年生がどんどんものにしていく様がすごく見えたし、稽古の中で会話が成立していく過程が分かったから、
「あ、こういう風に台詞ってものになっていくんだなあ」って思った。
稽古場に来れなかった先輩の代役をやらせてもらったことで、そうやって変わっていく先輩達とやり取りもさせてもらったし。
作品が出来上がっていく過程と先輩たちの努力がすごく見えて、舞台の上で“存在する”って楽しいなあって。
私ももっと演じたいってすごく思った。
研究所って何作品も同じメンバーでできるから、他の人が舞台を終える度に苦手を克服していくのが目に見えてわかる。
それがすごく意味があったなって思う。
(渡部明日香)
④これから
―今後どんな役者になりたいですか?
田村
私は、「◯◯さんにみたいになりたい」とかこういうジャンルの役者になりたいとかって全然ない。かといってオールマイティになりたいとかじゃなくて。
”田村真央というジャンル”をつくりたいな。
まだ自分の個性が”これ”っていうのはわかんないけど一個人としてありたいとは思う。
明日香
私は子供の時から自分が没個性的な人間だなと思っていて。笑
だから真央みたいに「私はこう!」っていう役者になるよりかは、
役によっては渡部明日香が忘れられてもいいなって思う。
前回の役と今回の役で同じ人じゃなかったって言われたら、私はすごく嬉しい。
役名で呼ばれるのって嬉しいじゃん。
毎回自分を捨てて演じたいって思うけど、
”人としての魅力がなかったら役も魅力的にならないんだな”
とも思うし、そこは両立しないとだね。笑
カメレオンみたいになりたい。
小谷
俺は好きな俳優がたくさんいて、
演技プランはよく参考にする。
勿論その人になれへんけど、それを自分ができたら楽しいなと思う。
―インプットしようって意識があるということですか?
小谷
インプットしようという意識ではなくて、
ただそれが好きだからやってるみたいな。
あと最近よく考えるのは、
思考があってアクション(行動)があるということ。
だからアクションを見てると、そこからその人の思考がわかるっていうかさ。それがうまくできたらいいな。
(小谷俊輔)
⑤57期から58期へ
―後輩に向けてのメッセージをお願いします。
小谷
特にないかな。
明日香
ちょっと。笑
小谷
個人々々にはあるけどね、
楽しんでゆるくやったらいい。
田村
58期は人として素晴らしいと思います。
自立してる人多いし、でも否定されることを恐れないほうがいいなって。
否定されるのが怖くて何もしないよりは怒られたほうがいいと思う、素直に。
私は新しいものは反発する何かがあって、生まれるものだと思っているから、
いつもいい子でいるよりかは、反発をしたほうがいいと思う。
むやみやたらに反発するわけじゃなくて、たまにはパンチ食らわせてもいいんじゃないかなってこと。いい反発心を持って欲しい。
明日香
ん〜、その場その場でどういう風にいるべきかをちゃんと読める人が多いよね、58期って。
小谷
そのへんの"ちょっとはみ出す"さじ加減がむずかしいよね。
明日香
演出家が求めるものを出そうとするよりかは、
型にはまらずに探究心というか遊び心を持つのって大事だなって。
今日はこうやってみようかなあとか、ここは違うかも知れないけど相手を笑わせてみようかなあとか。
誰かが求めていることをするより、自分がやりたいことを見つけに行くほうが楽しいのかもって最近思うんだよね。
ある意味傲慢になった方がいいのかなって。
58期の皆がこれから先いろんな芝居をどんどん傲慢にやっていく姿を見るのを楽しみにしてる!私も頑張るよ!
ーみなさん、ありがとうございました!
そして!
57期インタビューも次回でラスト。
57期インタビュー#1
(喜田裕也、春田玲緒、鈴木結里、陳韻怡)
57期インタビュー#2
(飯川瑠夏、川合耀祐、平体まひろ、青木佳)
演出家・松本祐子インタビュー
インタビュー 村上佳、池亀瑠真
記事 池亀瑠真
写真 池亀瑠真
※このインタビューは2019年12月14日に行いました。
※この記事はインタビューを元に再編成したものです。
文学座附属演劇研究所
2019年度卒業発表会『かもめ』
は、
1月17日(金)〜1月19日(日)
文学座アトリエ
にて上演されます。
発表会詳細はこちらからご覧いただけます。