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「宇田川源流」 ブレグジットを控えたイギリスは中国を選ぶのかアメリカを選ぶのか

2020.01.07 22:00

「宇田川源流」 ブレグジットを控えたイギリスは中国を選ぶのかアメリカを選ぶのか

 昨年の年末の時点で最も大きなニュースは、たぶん12月12日のイギリスの総選挙であろう。これでイギリスは1月31日にEUから離脱をし、そのうえで、イギリスが独自の外交や経済活動を行うということになる。離脱に関して移行期間がそれなりに存在するが、その内容をうまく行わなければならない。

さて、現在「大国」というか「G-ZERO」といわれるように「超大国」がない時代になっている。アメリカは「世界の警察」という看板をオバマ大統領の時に完全に下ろしてしまい、すでに超大国ではなく、普通の国になってしまったのである。

そのために世界は「アメリカ」「中国」「ロシア」「ヨーロッパ連合(EU)」「イスラム」というようにいくつかの極に分かれて存在するような状況になっているのである。

そのような内容の中で、イギリスという「元の超大国」が「ヨーロッパ連合」という一つの極を抜け出た。

歴史的にロシアとの間においては対立関係がある。実際にロシアの艦隊は黒海から地中海に抜け、ボスポラス海峡とジブラルタル海峡を通って大西洋にでるか、あるいは、北洋を通って大西洋に抜けるしか外界に出る方法はない。もちろん、ウラジオストクから太平洋に出ることはできても、それではヨーロッパの戦線には間に合わないのである。逆に、その逆回りをして、日露戦争の時に日本海海戦で東郷平八郎率いる日本連合艦隊に、完膚なきまで敗れているのである。そのように考えれば、ロシアにとってはヨーロッパでの自由な海軍力を持つためには、イギリスの北洋かイギリス領のジブラルタルの横を通らなければならないのである。つまり、ロシアは大西洋に出てヨーロッパをけん制するためには、イギリスと対立する必要があり、イギリスは当然にそれに対抗することになる。

次に、イギリスにしてみれば、元のヨーロッパ連合に戻るわけにはいかずまたロシアにも付くわけにはいかない。元の植民地である中東と一緒というのは難しい。そこで残りは「アメリカ」と「中国」ということになるのである。


英首相、対米関係で苦慮 ファーウェイやFTA交渉めぐり

 【ロンドン=板東和正】来年1月末の欧州連合(EU)離脱を目指す英国のジョンソン首相が対米関係に苦慮している。米中対立の一因である第5世代(5G)通信網への対応や米国との自由貿易協定(FTA)といった難題に直面しているためだ。ジョンソン氏が「蜜月の仲」とされてきたトランプ米大統領との接触を避けているとの報道もあり、米英が緊密な関係を維持できるか不安視もされている。

 英メディアは最近、ジョンソン氏がトランプ氏から新年に米ホワイトハウスに招待されたものの、乗り気ではなく、「訪問を渋っている」と報じた。

 トランプ氏はウクライナ疑惑で弾劾裁判を控えており、ロイター通信などによると、英首相官邸関係者は弾劾問題に引きずり込まれることを警戒しているという。疑惑を否定するトランプ氏にジョンソン氏の言動が利用されかねないと恐れているようだ。

 英議会では年明けからEU離脱協定案の最終審議が行われる。英与党・保守党には発言が人種差別的としてトランプ氏を嫌う議員もいるだけに、訪米で反発を招いて、審議への協力を得にくくなるようなリスクも避けたい考えがあるとみられる。

 対米関係の悩みはこれだけではない。その一つが、トランプ氏が安全保障上の理由から5G通信網からの排除を呼びかける中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への対応だ。

 ジョンソン氏は4日、ロンドンで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で「ハイテク分野に関して中国の課題を認識すべきだ」と述べ、トランプ氏に同調する姿勢を見せた。だが、その翌日、テレビ番組でジョンソン氏が華為のスマートフォンを用いて「自撮り」する様子が放映され、英メディアは華為を完全に排除することはできないと予測する。

 ジョンソン氏は年内に華為への対応を決めるとしていたが、まだ結論は示されていない。オブライエン米大統領補佐官は今月下旬、英紙で華為使用に伴う危険を改めて警告したが、英国ではインフラ整備に中国マネーも流れ込んでおり、離脱後の経済パートナーとして中国にも配慮せざるをえない事情を抱えている。

 英国がEU離脱後に米国と始めるFTA交渉では、トランプ政権が米国の農家や医薬品メーカーに英市場を開くよう厳しい要求を突きつける構えとされる。低価格の米国産品が押し寄せれば、英企業を圧迫する恐れがあり、ジョンソン氏は「米国は極めて手ごわい交渉相手」と警戒を高める。

 英紙フィナンシャル・タイムズは、米大統領選が来年行われることから交渉で進展はほとんど見込まれないとも分析。交渉が長引くことが予想されている。

2019年12月30日 19時54分 産経新聞

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12274-515062/


 このようにイギリスは「EUから抜けた後」どのようにするかということが大きな問題になっている。日本でも「中国によるべき」というような立憲民主党のような人々もいるし「日米同盟を大事にすべき」という安倍首相のような人もいるが、多くの人は「基本的にはどっちかに寄せるが、どちらかに決めることなく臨機応変に変えてゆく」というような感覚になってしまう。

そもそも保守党であったはずのキャメロン首相は、イギリスの経済の悪化から中国との関係を親密に行い、またインドなどにも土下座外交をしながらイギリスの経済のことばかり考えていた。そのようにして招いた習近平国家主席に対して、エリザベス女王は「下品」と表現した。

イギリスの政治はこのエリザベス女王の言葉から変わったといえるのではないか。まさに「金を追いかける政治」から「義理やアイデンティティを重要視する政治」に変わったのである。そのことの結果、中国と親しいドイツやフランスの社会主義に近い政治からの決別そして中国からの決別ということを行ってきていた。

実際に、ファーウェイなどはあまり問題視していないものの、一方で、中国との関係が深いイランとの敵対的関係を行いまた、EUからの離脱を決断した。また、変わったところでは「パナマ文書」の公開などを裏で操ったといわれている。

さて、その例外的にしていたファーウェイやZTEをどのようにするのかということが非常に大きな問題になるということになるのではないか。実際にイギリスでは「ファーウェイやZTEが何をしていてもイギリスの情報部の方が上手に行っており、中国に情報を取られたとしてもあまり怖くはない」というようなことを言っている。

MI5やMI6の方が、CIAよりも優秀であるとしていた。しかし、それはメイ首相の時代でありジョンソン首相になってからその対応を決めるとしながらいまだに決めかねている。一方、アメリカのトランプ大統領もあまり好きではないらしい。

実際に、上記の記事にもあるが、トランプ大統領は弾劾裁判などもあるので、あまり深入りしたくはないしまた、ブレグジットがトランプ大統領の大統領選挙に使われ、そのことによって、ブレグジットの作業があまり前に進まなくなることを恐れているということになる。

ジョンソン大統領は、さすがにエリザベス女王の「習近平は下品」という言葉を無視はできないし、無視するようなことになれば、ジョンソン首相の支持は一気に失われることになるだろう。

しかし、中国の国家主席が習近平から変わるようなことがあったりあるいは習近平がレームダック化され、他の常務委員が政治を取るようになった場合、あるいは、習近平が暗殺されるシナリオが近々にある場合は、どのように考えるのであろうか。

この「迷っている」というだけで様々なことが考えられる。この結論も1月末日までにジョンソン首相はだいたい決めるであろう。そして、「イギリスが超大国になるためにはどうするか」ということを中心に物事を考えてゆくのである。

日本は、そのような発想を持ってこのニュースを見ることができるのか。1月中にその答えは出るのである。