第200回国会 衆議院 法務委員会 第5号 令和元年11月6日 串田誠一委員
会議録情報
令和元年十一月六日(水曜日)午前九時三十分開議
委員長 松島みどり君
法務大臣 森 まさこ君
法務副大臣 義家 弘介君
委員 串田 誠一君
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件
質疑
○串田委員 日本維新の会の串田でございます。
突然の交代劇というのもありましたが、所信を聞かせていただきまして、大変わかりやすい所信になっているのかなと思います。
きょうは、その所信に沿って質問させていただきたいと思うんですけれども、この森大臣の最初の所信の冒頭が児童虐待を取り上げたということでございますが、これは、どういうような思いで所信の冒頭に児童虐待が入ってきたのでしょうか。
○森国務大臣 法務行政が直面する課題はさまざまでございますので、それら一つ一つの課題に全力で取り組んでまいる所存でございます。
その上で、法務省は法をつかさどる役所であり、正義の実現のために力を尽くすべきであると思っております。
そのため、所信でも述べましたが、一旦人権が傷つけられたり、虐待や犯罪の被害に遭ったり、法的な解決を要する事態に陥った場合には、これにより傷ついている皆様を本来あるべき状態に、正義が保たれている状態に戻してさしあげる、そういった役割が期待されている、そういう思いから、まず、虐待や差別のない社会の実現を挙げさせていただきました。
そして、その中でも、近年、児童虐待により子供が亡くなる大変痛ましい事案が後を絶たない状況にございますので、児童虐待の根絶は、政府を挙げて取り組む必要がある喫緊かつ極めて重大な課題となっていると認識しております。
私としても、児童虐待防止対策には、法務大臣就任前から強い関心を持っていた課題でございますので、法務大臣としても力を入れて取り組みたい課題の一つであるということで、まず、冒頭で述べさせていただきました。
○串田委員 子供というのはなかなか自分が意見が言えないということで、声なき声ということでございますので、子供のことを冒頭で取り上げて、守っていくというのは非常に私としても大賛成なんですけれども、一方で、子供の侵害されている権利というのは、虐待されているだけではない、御存じだと思うんですね。
今回の二月に出されました国連の子どもの権利委員会からの勧告にも、虐待はEという項目の中に書かれているんですけれども、F以下も、いろいろな、AからこのEの虐待以外にもたくさんの子供の人権侵害というのが書かれている。
大臣は、人権というものを取り上げてはいただいているんですけれども、子供の人権であることを書かれている子どもの権利条約、これは、私は非常に不思議だと思うのは、前大臣もそうなんですけれども、今回の森大臣も子どもの権利条約のことが一言も書かれていないんですよ。虐待というのは書いてあるんだけれども、それ以外の子供の権利に関してはどうでもいいのかというような思いも感じざるを得ないんです。
なぜこの子どもの権利条約についての言及がないのか、大臣にお伺いしたいと思います。
○森国務大臣 子どもの権利条約についても、委員御指摘のような、どうでもいいというお言葉をお使いになりましたが、そういったことは決してございません。
私自身、弁護士時代、弁護士会の子どもの権利委員会に所属をしておりましたので、子どもの権利条約についてもしっかりと守っていくという認識でございます。
○串田委員 浜地委員が、先ほどの質問の中で法の支配ということを質問されていて、答弁の中にも、アジア諸国に対して研修を行っているんだ、法の支配の研修を行っているんだというお話がありました。
ところが、日本は一九九四年に批准した子どもの権利条約を守っていないということで、国連から二月に勧告を受けているんですよ。こんな国がほかの国に行って研修しているなんというのは恥ずかしくないですか。大臣、いかがでしょう。
○森国務大臣 国連の児童の権利委員会から、民法等における体罰の許容性について不明確であるとの懸念が示されたことは、委員御指摘のとおりでございまして、守っていないというような指摘であったかというようなことというよりは、不明確であるとの懸念が示されたというふうに承知をしております。
所信表明の中でも、私も、子供の人権問題についてしっかり取り組みますということを表明させていただいておりますので、この点についてもしっかり受けとめてまいりたいというふうに思っております。
親権者による体罰の問題に関しては、本年の通常国会において児童虐待防止法が改正され、これを明確に禁止する旨の規定が設けられたところでございます。
この改正は、懲戒権について規定する民法第八百二十二条の解釈にも影響を及ぼすものと考えておりまして、改正法によって禁止される体罰に含まれる行為については、民法八百二十二条に言う、子の監護及び教育に必要な範囲には含まれないと解釈され、懲戒権の行使として許容されなくなるものと理解をしております。
また、民法の懲戒権に関する規定については、御指摘のような懸念が示されたということでございますので、現在、法制審議会民法(親子法制)部会において、そのあり方について検討がされているところでございますので、充実した調査審議が行われることを期待しているところでございます。
○串田委員 また、体罰のことを御指摘されたんですが、私も、二月に予算委員会で、安倍総理に対し、この勧告に基づく体罰については質問させていただいて、安倍総理からも、懲戒権は見直しをするんだということは答弁をいただいております。
さらに、この勧告は、それだけではなくて、たくさんのことが書かれているということを御指摘しているんです。虐待だとか体罰以外にも、共同で養育をしなければならないような改正をしなさいと。これは子どもの権利条約に書いてあるわけですから、どうしてそういったようなところに目をつぶって、体罰だとか虐待ということの部分だけを注目をして、これはやりますよと言って、そして諸外国から批判を受けている。
昨年はEU二十六カ国から抗議を受け、ことしの二月からは勧告を国連から受け、アメリカからは子の連れ去りに対して不履行国として認定されている。こういうようなことを次から次へと諸外国からされていて、イタリア、フランスは、国営放送でドキュメンタリーとして日本の人権、子供の人権侵害というものを取り上げているわけですよ。
こういったようなことをしっかりと守っていかないで、ほかのアジア諸国に対して法の支配の研修をしているというのは、私は、聞いていてとても恥ずかしいなと思っています。
そういう意味で、そういったようなところもしっかりと取り上げていただきたいというふうに思っているんですが、きょうは所信に対してですので、個別のことはまた改めてお聞きをしたいと思うんですが。
児童虐待に関して、これも一つ大臣の念頭に入れていただきたいのは、児童虐待をなくすというのは非常に大事なことではあるんですけれども、一方で、非常にそれが間口が広がることによって、誤報の通報によって子供が一時保護されていくというようなことで、苦しんでいる親御さんもたくさんいらっしゃるということは私の方にも相談を受けているし、大臣もいろいろニュースでお聞きになっていることもあるかと思うんです。
そういう意味で、児童虐待を防止するということを強化するとともに、しっかりとした検証システム、これも国連の勧告の中にあるんですけれども、子供を親から引き離すんだったら、司法のしっかりした介入というものをつくりなさいというふうになっているんですが、現在の児童福祉法はそういうふうになっていないんですよ。
二カ月、神隠しのように親から引き離されている。これは、検証すれば、すぐに、たちどころにわかることも多いと思うんですね。例えば、あざができているから通報されて一時保護されている、でも、子供に、どうしてこんなあざができたのと言ったら、ブランコからちょっと落ちてけがをしちゃったんですと言えば、すぐ話がわかることも、それをしないで、一時保護して二カ月間もずっと隔離されているということもある。
もっと検証システムもしっかりと仕組みをつくっていただかないといけないと思うんですが、その点についての大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○森国務大臣 委員御指摘の一時保護のあり方をめぐっては、虐待の事実がないにもかかわらず、一時保護が行われる場合があり得るとの指摘があるということは承知をしております。また、自分の行為が虐待と思っていない親が一時保護に反発することもあるとの指摘もございます。
私は、法務行政が信頼されるためには、現場の実情を的確に把握し、国民の皆様の声もしっかりと聞きながら政策課題に取り組んでいくことが重要と思っております。
先月設置した児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチームにおける検討におきましては、そういった実態を正しく把握するというところにおいて、有識者や関係省庁からのヒアリングのほか、視察等も行うところとしているところでございますので、プロジェクトチームにおいて、委員の御指摘もしっかり踏まえて、実態を正しく把握した上で検討を進めることが重要と思います。
今後とも、子供たちの命を救うために、また、委員御指摘のような状況を改善していくためにも、法務省として更にどのようなことができるか、しっかりと検討してまいりたいと思います。
○串田委員 先ほど一時保護の話をしましたが、保護という名前ではあるんですけれども、子供にとってみると、新聞にも報道されたりしていることもあるんですが、まるで刑務所のようだったというふうなことを感想として述べられている子供もいるんですね。
これは、突如として通学中に車に乗せられて、知らないところに連れていかれる、親にも会えない、そして友達にも連絡がとれないという中で、義務教育も受けられない。同じ施設の中で五十人ぐらいいれば、学年も全部違うわけです。非行児童とも混合処遇されているわけなんですね。いろいろな子供たちが入っている中で、義務教育を受けられないで何カ月もいるというような状況になっているんですが、これは保護と言えるんでしょうか。
○森国務大臣 御指摘のような、一時保護が行われている子供について、当該措置が行われている間、学校へ通うことができなくなるとの指摘があるということは承知しております。学校にはしっかりと通わせてあげなくてはいけないというふうに思います。
これまでも、可能な限り通学ができるよう、一時保護所等から子供が通学する場合の付添人の配置、また、本年三月に取りまとめられた「児童虐待防止対策の抜本的強化について」に基づいて、虐待により一時保護された子供について、適切に教育を受けられるように、里親の活用を含め委託一時保護の積極的な検討でありますとか、子供の安全確保が図られない場合等を除き、学校等に通園、通学させ、必要な支援を行うなどの措置も講じられているものと承知しております。
プロジェクトチームにおいて、委員御指摘のような点も含めて、実態を正しく把握した上で検討を進めることが重要と認識しております。
私自身も義務教育を受けられなかった状態にありましたものですから、やはりしっかりと教育が受けられますように、今後とも、虐待を受けた子供の権利保護を図るため、法務省として更にどのようなことができるか、しっかりと検討してまいりたいと思います。
○串田委員 たたかうということなので、虐待から離すということは大事なんだと思うんですけれども、子供はそれによって教育が受けられなくなる。現実に、五十人ぐらいいるところに、そんなにたくさん教室があるわけじゃないんですね、どうやって義務教育を受けさせることができるのか。
これは、教育関係に詳しい義家副大臣にもちょっと、子供を保護するということと教育を受けさせるということとの両立というのはどうしても必要になってくると思うんですが、副大臣の所感もお聞きしたいと思います。
○義家副大臣 極めて本質的な御質問だというふうに思います。
私自身も、虐待を受けている子供、そして虐待通報をされた保護者ともさまざまな話をしてきましたが、このケースというのは、本当に、百件あったら百件とも違うんですね。しかし、行政の枠組みの中で、それを一括して考えてしまうという傾向があるような気がします。だから、こういう問題があったときには、まさに学校とそれから児童相談所とそれから行政機関とこれは速やかに連携をして、情報共有をした上で、ケース・バイ・ケースの判断をしていかないと、このような状況が生まれていくというふうに思います。
それから、私は、実は児童相談所のお世話になったことのある数少ない人間なわけですが、私が児童相談所にお世話になったときに、もう一組子供がいたんですね。そのもう一組は、会社が倒産して、保護者が育てられないといって児童相談所に委託したきょうだい、お兄さんと妹の二人だったわけですけれども、一緒のスペースにいたんです。大変申しわけない、私自身が申しわけない思い、彼らは何の罪もない子供なのに、こうして自分なんかの隣にいなければならないというのはおかしいなとすごく感じた十六歳の夜を過ごした人間として、委員の問題意識は極めて重要だと思いますので、さまざまな検討を加えてまいりたいと思います。
○串田委員 物理的に非常に難しい部分もあるし、教員をどうやって配置するか、学年が全部違うわけですから非常に難しいんですけれども、まあ、そこは最善の利益、まさに最善の利益で尽くしていただきたいのと、先ほどに戻るんですけれども、必要のないような保護をされている子供というのが非常に多いという部分も、これもやはり念頭に入れていただいて、速やかな検証システムというものをやはり同時につくっていただきたいんです。
そのときに、やはり確認をしていただきたいと思います。
子供は、児童福祉司、ケースワーカーによって一時保護等になっても、じゃ、心を開くのは児童心理司といっても、子供から見たらやはり児童相談所の職員にすぎないんですよ、大人なんですよ。そういう中で、長くいる中で、その今の現状を悪く言うなんということはできないんですよ。
そういう意味での本当の子供の心というものをどうやって拾い上げていくのかということも、これはやはり考えていただかないと、専門職だから子供の心を開いてちゃんと聞いてもらえるなんて思わないでほしいんですね。そんなに簡単なことじゃないんだということを知っていただいて、真実の部分をどうやって読み解いていくのかということ、子供が本当に、保護されたことによって一生が変わっていってしまうんですよ。
これは、二カ月、更新もできるんですけれども、何のチェックもなく二カ月一時保護をすることが可能なんですね。そうなってしまったときに、そこの子供の家庭の周り、今までおじいちゃん、おばあちゃんも子供、孫を連れていたのが、一切孫もいなくなってしまった家庭、親御さんからも子供がいなくなった家庭、そういったようなことに対してどういう風評被害が行われるのか。子供にとっても、どうやってまた学校に戻るのか。子供にとっても一生の問題であるということを考えていただかないと、たたかうというようなことで、安易に一時保護をどんどんどんどん連れてきて、そして、長時間、保護という名のもとに義務教育も受けさせられないところに入れているということ自体が非常に大変なことであるということの認識の中で進めていただきたい。
児童虐待というのはもちろんなくしていただきたい、大賛成なんですけれども、そういったようなことの部分も並行して進めていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思うんです。
次に、先ほど伊藤委員から森大臣の経歴というのをお話がありました。消費者に対するというのもありましたが、一方で、少子化対策あるいは男女共同参画というのをずっとおやりになられたということなんですけれども、少子化対策と男女共同参画というのは、これは本当に裏表の関係なのかなというふうに思っております。
そういう意味では、やはり女性が社会進出をしていくという意味で、M字曲線も解消していきたいなというふうに思っているんですけれども、そのためには育児も男性が協力をしていくということは当然のことだと思うんですが、大臣、この点に関して、法律婚と事実婚とで男女が共同で養育をするということに区別をすべきであるかどうか、大臣の率直な意見をお聞きしたいと思います。
○森国務大臣 少子化対策と女性活躍についての御質問をいただきました。
私は、以前、少子化問題担当であると同時に女性活躍担当大臣もしておりましたので、その後も、その問題についてもまた私自身のライフワークとしても取り組んでまいりました。
その上で、事実婚であるか法律婚かによって、男性の育児、又は父親としての子供とのかかわりでしょうか、それに違いがあるかというような御質問でございましたが、結論から申し上げますと、父母が婚姻しているか否かということにはかかわらず、子供にとっては父母のいずれもが親であるということには変わりはないと思っておりますので、父母の両方が適切な形で子供の養育にかかわっていくことが子供の利益の観点からも非常に重要であるというふうに思っております。
○串田委員 歯切れのいい回答をいただきまして、大変私もすっきりいたしました。
この件に関しては、男女共同参画社会基本法の第六条に男女というのがありまして、これに事実婚が入るかどうかという質問をこれまでもしてきたんですけれども、内閣府の回答は、この立法時点においてはそこまで考えていないという回答だったんですが、これは当たり前なんですよね、事実婚であろうと法律婚であろうと、これは親子であることに変わりはないわけですから、ここで区別をつけること自体がおかしいわけで、これをはっきり言えなかったということ自体、私はおかしいと思いますので、今の回答は大変歓迎させていただきたいと思います。