#NHKニュース - 男性の性被害 その実態は.....
「NHKニュース おはよう日本 」さんより掲載
東京駅前で開かれた集会で、ある男性の訴えに注目が集まりました。
「僕も何度も痴漢被害を受けて、それを人に言えたのは25年経ってからでした。
これは、女性の問題だけでは無いんだと思います。」
この集会は、性被害を受けた当事者や支援者などが、その撲滅を訴え、開いたものです。
女性たちの中に最近、男性の姿が目立つようになってきました。
今年(2019年)、連合がおこなった調査では、就職活動中に企業側の担当者などからセクシャルハラスメントを受けたという20代の男性は21%に上り、女性よりも多いことがわかりました。
表面化しづらい男性の性被害、いまその実態が少しずつ明らかになってきました。
神奈川県の企業に勤めるケンイチさん(仮名)。
50代だった男性の上司から、半年近くにわたりセクシャルハラスメントを受けていたと言います。
始まりは、温泉巡りという共通の趣味で話が合い、上司から日帰り温泉に誘われたことでした。
2人になった温泉施設や車の中。
上司は、ケンイチさんの股間を何度も触ってきたと言います。
ケンイチさん(仮名)
「ふりほどこうとしたら怒鳴られてしまって、『いいから!』って。
すっごい嫌でしたね。
恐怖でした。」
以来、ケンイチさんは職場でも、被害を受けるようになったと言います。
すれ違いざまに乳首をつままれたり、2人で作業をするとき、股間を触られることが続いたと言います。
ケンイチさん(仮名)
「押しのけて逃げるんですけれど、相手の人が怒ったりもするので、仕事ではお世話になっている部分がどうしてもあるわけですから、やっぱりその、本当に面と向かって反抗できるかといえば、なかなかしづらいっていう部分がありますよね。」
ケンイチさんは、思い切って企業のセクハラ相談窓口に打ち明けました。
ところが…。
ケンイチさん(仮名)
「そういう風なやつだよ、気にしない方がいいよって。
いつまでも気にすると、仕事に支障をきたすからって言われてしまって。
ぼう然としてしまって、どうしたらいいんだっていう、絶望感ですね。」
他の上司にも相談しましたが、セクハラは無くならなかったと言います。
ケンイチさんは適応障害を発症し、1年以上休職することになりました。
ケンイチさん(仮名)
「いろんな人に相談するんですけど、あまりまともに取り合ってくれなかったっていう形でですね。
もう私1人孤立、周りから孤立してしまったような形で、全然仕事が手につかなくなってしまいましたね。」
企業側は取材に対し、「セクハラをしたとされる上司に注意をし、2人ができるだけ接触しないようシフトを配慮した」と話しています。
しかし、男性は被害はなくならなかったとして、国に労災認定を求めて提訴しました。
東京高等裁判所の判決では、上司が日常的に男性の尻を叩いていた事実は認めたものの、「スキンシップの一環」だとして、セクハラ行為として認定しませんでした。
また、男性の股間などを触ったことについては、目撃者がいないなどの理由で認めませんでした。
男性の弁護士は、「尻を日常的に触る事実が認められたにも関わらず、労災が認定されなかった背景には『被害者が男だから、たいしたことはないだろう』という偏見がある」と話していました。
男性被害者も、女性と同じように傷ついています。
でも、そうした男性の心情は、実は女性たちの間でも理解が進んでいないと、指摘する専門家もいます。