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郷愁の風景

【横浜市】山手(中区)

2020.02.03 05:42

横浜開港後の慶応3(1866)年、山手の高台に外国人居留地が置かれ、山手本通を中心に道路が造られ、住宅をはじめ学校、病院、教会、劇場など西洋館が建てられるようになった。

しかし、大正12(1923)年の関東大震災でそのほとんどが倒壊、 現在見られる洋館の多くは、その震災後に再建されたり移築復元されたものである。

震災の教訓からか、耐震や防火を考慮して木造建築の外壁はモルタルが主流となり、学校や教会は鉄筋コンクリート造りである。

昭和20(1945)年の横浜大空襲で被災を免れたものの、昭和40年代以降はマンションの建築や老朽化による建て替えも相まって洋館の数を減らし始め、連続性を持つ街並みが見られる場所は限られている。

それでも、昭和44(1969)年にイギリス館を取得したのを皮切りに横浜市が西洋館の保存に努め、現在は7軒の西洋館を保存公開している(いずれも入館無料)。 


【横浜市】山手「山手89‐6番館(えの木てい)」(中区)202001

元町公園の向かいに「山手234番館」(写真左)と並ぶ白地に赤の木枠が目立つ西洋館。

震災後の昭和2(1927)年に建てられ、設計は並びの234番館と同じ朝香吉蔵。

現在は喫茶店として利用されている。


【横浜市】山手「山手234番館」(中区)202001

前述の山手「89‐6番館(えの木てい)」の並びに建つ「山手234番館」は、設計者も同じ朝香吉蔵で竣工年も同じ昭和2(1927)年。

関東大震災によって横浜を離れた外国人を再び戻ってもらおうと外国人集合住宅「アパートメントハウス」として建てられ、戦後の米軍接収を挟みながらも昭和50年まで集合住宅として利用された。


【横浜市】山手「ベーリング・ホール」(中区)202001 

「元町公園」のそばにある洋館街では最大規模の外国人住宅。 

昭和5(1930)年、イギリス人貿易商B.R.ベリックの邸宅として、アメリカ人建築家J.H.モーガンが設計し竣工。 

第2次大戦まで住宅として利用後は宗教法人カトリック・マリア会に寄付され、平成12(2000)年までインターナショナルスクールの寄宿舎として利用された。 

スパニッシュスタイルの建物で、四葉型の小窓や瓦屋根を持つ煙突など多彩な装飾が見られる。

1階居間とサンルーム

2階子供室。この建物の特徴でもある四葉型の小窓がある。


【横浜市】山手「イタリア山庭園」(中区)202001 

大蔵谷上に館内を一望できるイタリア山庭園には2軒の洋館が残っている。 

写真手前は関東大震災後に建てられたブラフ18番館(旧カトリック山手教会司祭館)、奥には明治43年築で渋谷南平台から移築された外交官の家(旧内田家住宅)が見える。

「ブラフ18番館」1階ダイニングルーム

「外交官の家」サンルーム

「外交官の家」ステンドグラス


【横浜市】山手「イギリス館」(中区)202001 

昭和12(1937)年に英国総領事公邸として竣工。 

「港が見える丘公園」の中にあるが、移築ではなくもとからこの位置に築いてある。 

全体的にはモダニズムだが、所々に古典主義的な意匠も見られる。

裏庭からの外観

玄関脇にはめ込まれた王冠入りの銘板には西暦で竣工年が刻まれている


【横浜市】山手「山手111番館」(中区)202001 

ベーリング・ホールと並ぶ、イギリス人建築家J.H.モーガン設計の洋館で、こちらは大正15(1926)年竣工。 

こちらも3連アーチの玄関ポーチが特徴だが、天井ではなくパーゴラ。 

玄関を入ると、2階吹き抜けのホールがお出迎えで圧巻である。

2階吹き抜けのホール

バラ園からの外観。正面からは2階建てだがここからは3階建てに見える


【横浜市】山手「カトリック山手教会」(中区)202001 

明治39年創設だが、関東大震災で倒壊したため昭和8年に再建された。 

尖塔アーチの窓を持ち、背の高い鐘塔が控える典型的なネオゴシック様式で、ヤン=ヨセフ=スワガーの設計。 

今回訪れた時は中に入れなかったが、どうやら修復工事の最中のようだ。


【横浜市】山手「山手聖公会」(中区)202001

元々はあのコンドル設計による赤煉瓦の建物があったが関東大震災で倒壊し、イギリス聖公会の援助により昭和6(1931)年大谷石の外壁を持つ現在の建物の姿に再建される。

しかし、昭和20年の横浜空襲で内部を焼失したため、戦後にアメリカ聖公会の援助で再建されたのが現在の建物。

前述の「えの木てい」「山手234番館」の並び、向かいに「ベーリングホール」や「エリスマン邸」というロケーションは山手洋館街の最大の見所だろう。


【横浜市】山手「山手資料館」(中区)202001

元々は横浜本牧にあった木造の邸宅で、明治42年に戸部の大工の手で竣工された、横浜市内で現存する最古の木造邸宅。

一度は諏訪町に移築されたが、昭和52年に現在地に移築、山手にまつわる資料を展示する資料館として活用されている(前述の西洋館と異なり入館有料)。


【横浜市】山手「横浜地方気象台」(中区)202001

西洋館が残る山手に建つ「横浜地方気象台」は昭和2(1927)年竣工。

細部にわたるアールデコ調装飾を見せつつ、それまで重厚華美な市内の公共施設とは一線を画し、シンプルなモダニズム建築だ。

本庁舎の並びにある新庁舎は安藤忠雄の設計、一部ながら内部見学も可能だ。