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まきどき村

唐澤頼充「私生活を一緒に送ってくれる人たち」【村民インタビュー】

2020.01.14 02:55

唐澤頼充さん

長野県出身の35歳。新潟大学農学部卒業生。まきどき村には2014年から参加されている方。まきどき村の活動をまとめた本“TANEMAKI”の著者であり、まきどき村の活動場所である福井集落に在住している。

インタビューした人:赤沼薫
村長のインタビューでも出てきた、福井集落に移住したまきどき村の常連メンバー。たくさん考える方なので、お話を聞くのが楽しみでした。(聞いている時も楽しかったです)

まきどき村に流れる時間

 唐澤さんの奥さんであるもとこさんに誘われてまきどき村に行くようになった唐澤さん。今ではまきどき村も生活の一部のようにまでなっている唐澤さんにとって、まきどき村で活動していて感じたことを聴いてみました。

 「まきどき村にいて感じたことは、時間の流れとその時間の使い方でした。まきどき村では、野菜を育てています。野菜を植えて、育てて、収穫するころには、数か月経っていることが当たり前。その時間の使い方が、現代社会とギャップがあることに気づきました」と言います。

 世の中はどんどん効率重視な世界になっていく。機械が導入された近代以降、いかに少ない時間で多くのことができるか求められるようになった。おかげで、自分たちの暮らしは豊かになった。でも失うものも大きかった。人はいつのまにか“自分のために時間を使う”ではなく、“他人のために時間を使う”ようになっていった。必ずしも、全員がそうなっているとは限らないし、そのほうが生きやすい、という人もいると思います。でも、唐澤さんはその効率重視な時間の使い方が『辛い』と言っていました。

 こんな話をしてくれました。「佐藤家保存会で半日ぐらいひたすらに薪を割る時間がありました。薪を割るだけ。その時、保存会の斉藤文夫さんから“昔は家の薪が積んでいる量(薪のスタックの量)で、その家がしっかりしている家かを判断したんだ”と言っていたんです」。

 それだけ聴いても、なんで薪の量だけでそんなことが?と思うかもしれませんが、唐澤さんの解説を聴いて納得しました。

 「薪を実際に割ってみて、大変だった。でも大変だからこそ、冬までにしっかりコツコツと割っている家が、薪が積んである家であり、コツコツやっているということは、生活もしっかりしているということなんじゃないかな」と。

 とてもなるほどな、と思いました。冬を超えるのに必要不可欠な薪は、冬に使うものだけれど準備するのは暖かく、木が乾燥する時期。しかも薪割りは力がいるから、一日二日でたくさん出来るものでもない。だから、少しずつしっかりやっていかなきゃいけないことなのです。

 話を戻すと、その薪の話は、“昔は自分のために時間を使う”のだと考える材料になるということです。薪は冬の“自分の生活のために”割る。ということは、結果的に“自分のために”時間を費やしていますね。自分のための時間で、自分のために何か生産します。現代社会において、働くのはたしかに“自分が生活するため“ですが、接客業では、お客さんが喜ぶし、営業では会社が喜ぶ。昔も”他人“のために行動する、働くことはもちろんありますが、現代社会と比率が違う。自分を考える時間がしっかりある。でも現代は働くだけでなく、休むといってもどこかに出かけて消費するなど、自分で何かを生産してそれで心が休めるってなかなかないと思います。唐澤さんの前の職場が効率重視なところだったので、余計に現代社会のどんどん出来るようにならなきゃ、みたいなせかせかしている雰囲気が『辛い』とおっしゃっていました。

 だから、まきどき村の”時間の流れ、使い方“について感じることがあったようです。あなたは自分のための時間、自分のために生産する時間はありますか?

あなたにとっての“まきどき村”

 現在福井集落に在住している唐澤さんですが、唐澤さんにとってまきどき村はどんな存在なのでしょうか?

「『私生活の拡張』ですかね」

 まず初めの一言がこの言葉でした。でも私生活の拡張といっても、イメージはなんとなくできるけど具体的にいうとなんだろう…ということで説明してもらいました。

 「私生活を一緒におくる人が家族だけじゃなくて他の人もいる。その他の人にあたる部分がまきどき村の存在」。でも、ただ単に私生活を一緒におくる、だと友達の存在もそれにあたりそうですよね。唐澤さんのイメージは、違いました。

 「例えば、友達であれば一緒に過ごすとなるとディズニー行ったり、観光したり、消費が目立つ傾向がありますね。唐澤さんが言いたいのは、そういうことではなく、一緒に漬物を作ったり、農作業したり、それこそ朝ごはんに集まって食べるなどといった、生産を主に一緒にしてくれる人達がまきどき村の人たちです」。「仕事や友達関係ではなく、お互いの素性はあまり知らないけど集まるときは集まる親戚のようなにも近いかな」とも。

 私はこれを聴いたときに思い出したのは、じいちゃんの田んぼと近所の人の関係。農作業はよく近所の人と協力して、この日はこの家の田んぼを手伝うとか、味噌作るとか、持ち回りでやることが多々あります。それを伝えたら、その近所の人にあたるのがまきどき村の人々だとおっしゃってくれました。

 また、こんなことも話してくれました。「家族は役割がなくても一緒にいるし、でも役割があることが多い。でもまきどき村はそこまで肩肘はらず、役割とかなくてもいていい場所。普段私生活や人間関係でうまくいかない人でも、ここにくれば、単純作業ばっかだからそれなりに出来ちゃうし、出来なくても来てくれるだけで“ありがとう”と言ってもらえる、そんな場所。あたたかい場所です」。

本を作る理由って?

 まきどき村の米づくりなどを記録した本「TANEMAKI」をつくっているのが唐澤さん。例えば、文集とかアルバムとかって大切ですよね?人は瞬間、瞬間を覚えていられないから、だからそういった思い出を残すための手段として、そういったものが存在する。それが、唐澤さんの手段でいったら、本だったそうです。人は、振り返った時に初めて人のつながりを実感できるのだとも言っていました。

 確かに、あの時いろいろあったけど一緒に何かをしたな、とか、この人達といる時いい表情してるな、とか写真やエピソードを時間が経ってから振り返った時にふと感じることが多いと思います。それが“つながり”を感じる瞬間なのかなと、私はこの話を聴いて感じました。

 「この“振り返る”という行為を、みんなで共有することで、まきどき村で活動していた人とのつながりを感じたり、まだ参加していない人にも、このつながりを感じてもらうことで、輪を広げていきたい」と、お話してくださいました。「最終的には、本を読んで参加してくれて、しまいには福井集落に居住してもらって、集落の暮らしがもっと豊かになってほしい」ともおっしゃっていました。

いかがでしたでしょうか?私のインタビューはこれでおしまいです。
いつも一緒に作業して、世間話をしている人達の裏側には色んな思いや行動がありました。普段とは違う一面を見ることが出来たので、インタビューをしてよかったなと思います。
読んでくれた人が、何かを感じて、考えてくれたら。実際にまきどき村に来てくれたら、と。

赤沼薫 https://makidoki.localinfo.jp/posts/7589596

トビラプロジェクト https://makidoki.localinfo.jp/pages/2134552/page_201807301425