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#048.一番最初にすべきこと(ウォームアップ)その1

2020.02.03 21:53

一番最初に何をしていますか?

「毎回の練習でトランペットをケースから取り出して最初にすることは何ですか?」と、初めてのレッスンでよく尋ねます。


ほとんどの方は「具体的に決まっていない」と答えられ、その理由を尋ねると「何をして良いのかわからないから」とおっしゃいます。


また、普段どのようなことをされているか質問すると、マウスピースで音を出す方(音律を奏でる方やタンギングをされている方が多い)、反対にマウスピースで音を出さずにいきなり楽器を吹く方、いろいろいらっしゃいます。重要なのはその行為ではありません。「なぜそれをしているのか」なのです。


残念ながらそれについて明確に答えられた方は、今までひとりもいらっしゃいません。


習っている先生や部活の先輩に「それをやりなさい」「みんなやってるから」と言われた、雑誌やネットで得た、誰かから「それが良いらしいよ」と聞いたからなど、情報源はいろいろですが、それらは「行為」の情報だけであり「理由」がセットになっていないのです。


しかしその「理由」が重要。


僕は子どもの頃からひねくれていて、例えば小学生の時の「分数の割り算」は分子と分母をひっくり返して掛け算をすれば良いと教わっても「なぜそうすべきなのか」を説明してくれないことに納得がいきませんでした。友達に聞いても「言われた通りすればいい」と言われ、それが本当に嫌でした。アニメのワンシーンにもなった算数あるあるではありますが、僕は元々、対峙しなければならない物事に対して、なぜそうなるのか理由が明確でないことに納得がいかなかったのです。


おかげで学生の頃は残念な成績しか取れない人でしたが、トランペットレッスンをするようになってからは本当によかったなと思います。学校の成績だけじゃ人生決められないんですよ!(偉そうに言うな)

…みなさんは学校の勉強もバッチリ頑張ってくださいね。



原理を明確にする

話を戻します。楽器を出して一番最初にすべきことは、ウォームアップです。先ほど言ったように、ウォームアップという行為が重要なのではなく、それを行う理由が明確であるべきなのです。


では、ウォームアップとはどのような目的があるか考えてみましょう。ウォームアップは「自分の持っている実力を最大限に発揮するため」に行います。スポーツのウォームアップと同じ発想ですね。


その中で、一番最初にすべきことは、「最低限の要素で音を発生させること」です。


不要なものを一切持ち込まず、『音が発生する原理』に基づき、その目的を達成するために必要な体の部分を最低限に使う。超低燃費状態のスタートが目的です。


この考え方はウォームアップに限ったことではなく、スキル(テクニック)を手に入れる時や、クオリティを上げる時にも同様に鍵になります。


例えば、タンギングのクオリティを上げるにはどうしたらよいでしょうか。まず考えたいのは「タンギングとは何か」です。ここでは簡単に書きますがタンギングとは「空気の流れの遮断と開放」です。なぜそのような行為が必要かと言えば「音が開始する瞬間が明確になるから」、場合によっては「音の停止するタイミング(音の長さ)が明確になるから」です。そのために必要なのは当然「舌の動き」です。舌は何をするために動くのかと言えば「空気の流れをコントロール(制御)する」仕事のためです。当たり前のことだと思うかもしれませんが、このように考えることで理論、目的、方法のループが完成しました。


このループは、正しければ大変に強固な存在となります。


これを元に、具体的に実験し、検証し、どのようにすればそれが実現するのかを研究します。方法が明確になったら、その次にクオリティを高めるための研究に入ります。これらは根気がいる場合が多く、大変に地味で楽しくないかもしれません。そんなことより楽しい曲を楽しく吹きたいかもしれません。


しかし、ほとんどの場合途中で行き詰まります。できないものがどうしてもできない。それが解決しないから何となく停滞感を覚えて、テンションが低くなってしまう。ストレスが溜まる。そんなことが起きかねません。



できないことは不足しているから?

そこであれこれ考えるわけです。理由は何だ?どこにあるのだろう?しかし考えても大概はわかりません。だってわかっていたらそれを克服するための実践をしているはずですからね。わかっているのに実践しないのだったら、相当もったいないですし、論外です。


そして人間はできないことがあると往々にして「不足している」と捉えがちです。確かにそういった場面は世の中に多いです。重いものが持てなければ力が足りないと思うでしょうし、成績が悪ければ勉強が足りないと考えるでしょう。


しかし、トランペットの場合、その発想は裏目に出ることのほうが多いのです。トランペット奏者の多くが、いわゆる奏法について混乱している理由がここにあります。トランペットに関する真偽不確かな情報が溢れかえっています。情報を手に入れたら実践したくなるのが人間ですが、そうやってどんどん方法のカードを増やしていくことで、目的達成の方法を複雑化してしまうのです。


しかもそれらが本当に理論的に、そして自分にとって正しく必要なものである検証もせずに取り入れてしまいがちなので、残念なことにそのほとんどがマイナスの結果を生み出しているのです。そしてまた情報を求めてしまう。


元を辿れば、原理を理解できていないことが発端でした。



レールの上に車両を乗せる

ウォームアップに話を戻します。


私はウォームアップについて、レッスンでこのように例えることが多いです。


「レールの上にきちんと車両を乗せる行為」


もしも電車がレールの上に正しく乗っていなかったら、当然進むことができません。それでもなお進ませようとするなら、相当な(本来必要のない)努力や力、そして時間を必要とします。しかもそれが良い結果につながるとも到底思えません。


退屈で丁寧さを要求されますが、レールにきちんと乗せることさえ成功すれば、その後はとてもスムーズにいくつもの目的地に向かうことができます。ただし、走行中に負荷のかかる無理な行為をすれば脱線する可能性もあります。


レールに車両を乗せるために必要な行為は、そう複雑なものではありません。変な道具や訳のわからないマジナイなども必要ありません。また、「誰でも1日でできる!」というあなたにだけに教えてくれるコツ(メールマガジン/有料)も必要ありません。


大切なのは理論、目的、シンプルで明確な最低限の方法だけです。



次回の記事では、ウォームアップの最初に何をすべきか、具体的に解説してまいりますので、引き続きご覧ください。


ということで今回はここまでです。

それではまた次回です!




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