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さいたま自死遺族の集い*星のしずく

優しい死別

2020.01.15 18:28

祥月命日1月12日。

2017年、我が子が自死(自殺)で旅立ってから3年経ちました。


遡ること3年弱前、四十九日の法要を自宅で執り行ったのですが、その当時既に認知症を患っていた実母を連れて実父が遠方からさいたま宅に来てくれました。

持病の手術予定が組まれていたため、私の両親は葬儀に参列不可能でしたので、四十九日には何がなんでも駆け付けたかったようです。


そのときのこと。

数日の滞在期間中、日中の気温が一番あたたかな時間帯に、私は実母の手をとり一緒に春先の自宅周辺を散歩しました。

我が子が旅立った中学校周辺をゆっくりと実母のペースに合わせて歩きながら、私はひたすら話して聞かせたのです。


「◯◯ちゃんて覚えてる? お母さんの孫だよね、覚えてる?」


「うーん…………」


「あのね、その子がね、この学校の3階渡り廊下のフェンスからね…………」


「…………」


すでに孫の名前も存在も忘れてしまっていた実母に、それでも私は話して聞かせました。

もしかしたら、自分の辛い気持ちを声にして吐き出したかっただけかもしれません。

分からないのは承知で、それでも実母に話さずにはいられなかったあのときの気持ち。


実母はとても亡き子を可愛がっていて、遠く離れて暮らすようになっても、自身の趣味だった油彩画のモデルにしていたほどですから、自死した事実を知ればどんなことになっていたか……、どれほど悲しみ苦しんだか……、それこそ計り知れません。


でも、実母の認知症が進んでいたことが幸いして、何度説明しようと誰のことなのか分かっていないようでした。


「あのね、その子は死んじゃったの。あそこからね、飛び降りてね」


すると、


「なんで? かわいそう! なんで?」と、“落ちて死んだ”ことには反応を示していました。


「なんでなんだろうねぇ……、自分から死んじゃったんだよ」


「なんで? かわいそうに!」


「でしょう? かわいそうでしょう? 悲しいよねぇ……、その子はお母さんの孫だったんだよ。わかる? おぼえてない?」


「うーん…………」


「死んじゃったの。まだ中学二年生だったんだよ」


「かわいそう、なんで? かわいそうに!」


「なんでだろうねぇ」


同じ会話を何度も散歩中にしました。

誰のことなのかわかってなくとも相槌を打ちながら「かわいそう!」「なんで?」と返してくれるんです。

それこそ認知症の症状に似かよった“執拗に繰り返す話”を延々と聴いてくれ、感じたままを簡潔に返答するというのは、あのときの実母にしかできないことだったと思うのです。

愛する人の自死を体験していない人ならば、悲しすぎる話に対応できない、もしくは寄り添いたいと思っても噛み合わない返答になってしまったり、必要以上に諭すような出過ぎた答弁になっていた恐れもあります。


今になって考えるとですが、あのときの実母の状態は有り難いことであり、私のメンタルの支えになっていたんだとわかりました。


皮肉な話ですけどね、認知症だったがゆえに、とてつもないショックを実母自身が受けることもなく、私を責め立てることもなく、悲しすぎる話に拒絶反応を示すでもなく、ひたすら繰り返し語られる嘆きの聞き役になっていたという哀しいエピソード。


けれど今こそ心の底からの感謝を述べたいのです。


ありがとう、と。


そして、

ごめんなさい、と。


大事に可愛がってもらい、一番大変な時期の育児にも協力してもらったのに、あの子をたった14歳で自死で旅立たせてしまいました。


ごめんなさい。


ごめんなさい。


そして、これまで本当にありがとう。


悲しい事から3年、奇しくも我が子が旅立った同じ1月に、実母は永眠しました。

葬儀告別式を終えて納骨された場所は、我が子のお墓の隣。

夫とそのご両親とも相談して、同じ霊園内の隣同士に配置した、私の実家のお墓。


悲しいはずの葬儀も、終始和やかなムードでした。

笑顔と涙の両方に包まれる小さな会場。

和尚さんがこれまた粋な方で、通夜のお経の後には、続けていきなりアカペラで歌を披露……(;´Д`)!?


♪『この街で』♪


隣に座っていた実妹が泣き笑いになって肩を大きく震わせていたので、こちらも噴いてしまいそうになるのを必死に堪える“我慢大会”ガキ使状態。笑


ありがとう。


ありがとう。


実母には、感謝しかありません。

そりゃぁ健康年齢を重ねた実母と、一緒に旅行にもまだまだ行きたかったですよ。


ありがとう。


ありがとう。


対し我が子……亡き子には、どうしても“ごめんなさい”の感情が強く出てしまいます。


生まれてきてくれたことにはありがとう。

楽しい思い出がたくさん作れたことにもありがとう。

けれど“ごめんなさい”の念が強いのです。


自死でこの世を去るというのは、こういうことなのですね。


死別後に遺された者の気持ちの違いを、これほどまでに感じた1月の別れでした。


写真は、我が子と実母が隣同士で納骨された霊園です。

遠くに太平洋が見渡せます。


 * * * * *

P.S.謝罪と感謝

1月11日に開催された【第4回 星のしずく*わかちあいの会】に、実母の法要日程が重なり突然不参加になってしまいましたことをお詫びします。

参加してくださった皆様には感謝し申し上げます。

本当にありがとうございました。

m(__)m

悲しいご縁ではありますが、またお会いして、たくさん亡き大切な人のことを語り合いたいです。


また(^-^)/

星のしずく*管理人


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