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おもしろがろう、鳥取

みんなが楽しく集える場所に ー NPO法人ハーモニィカレッジ 代表 大堀貴士さん

2020.01.16 08:16

みなさんには、自分の「居場所」と呼べる場所はありますか?

馬との触れ合いを通じて、多くの人にとって安心できる居場所づくりを目指す『NPO法人ハーモニィカレッジ』。

今回は、代表を務める大堀貴士さんにお話を伺いました。


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今までやっていなかったことを

大堀さんは大学時代、学外で子どもと関わるボランティア活動をしていたという。もともと高校生の頃から、地元の子供会に参加するなど、積極的に子どもと関わっていた。

「子どもと関わることが好きになったのは、ボランティア活動を通して、子どもたちからたくさんの学びや気づきをもらったからです。子どもは純粋で、いやなことはいやだと包み隠さず伝えてくれます。自分にとって子どもたちは『客観的に自分について気づかせてくれる存在』ですね。」

子どもと関わる活動に取り組む一方で、2年間の留年も経験した大堀さん。一見『留年』はネガティブなイメージに捉えられるかもしれないが、大堀さんはこの2年を、自分を大きく変えるチャンスの時間と捉えた。

「それまでに行なっていた活動のおかげで、物事のプラス面やワクワクする面を見られるようになっていました。仲間と一緒にやっていたことは、どんなに大変でも、見方を変えて楽しみながら乗り越えられたんです。物事には二面性があって、自分の見方次第だということを学びました。だからこそ、留年もチャンスと捉え、今までやっていなかったことができる時間だと考えました。」


1回しかない人生をどう生きるか

2年の間、自転車で日本の最北端まで行ったり、兵庫県で小学生を対象にした自然学校の指導補助員を務めたり、様々なことに挑戦された。新しいことに飛び込む中で、大堀さんを大きく変えたのは『人との出会い』だった。

「今後の進路を考えているとき、キャンプカウンセラー※をしていた大学の後輩に『鳥取で牧場を作った人がいるから、ぜひ会ってほしい』と言われ、紹介してもらいました。それがハーモニィカレッジ創設者の石井博史さんでした。」

※キャンプの補助など、子供たちの教育を目的としたボランティア活動を行う学生


「今まで会ったことのない人だと感じましたね。特に仕事に対する考え方が僕の周りの人と違っていて。私の周りには『世の中そんなに甘くない』とか『人様に迷惑をかけないように、早く自立しなければならない』というような『こうしなければいけない』という発想で考える人が多かったのですが、石井さんは『◯◯をしたい』という夢をたくさんお持ちでした。」

「『こんなことがしたい、あんなこともしたい』とこれからの未来や社会を語るとき、いつもポジティブなことをおっしゃっていたんです。ワクワクしながら人生を過ごされているように見えました。話を聞く中で『自分もこんな大人になりたい、この人と一緒に働きたい』と思うようになりました。」

「ぼく、大学に入る前はお金持ちになりたかったんです。工学部に所属していたこともあって、将来は技術職に就こうと思っていました。でも、様々な活動を経て改めて『どんな人生にしたいか、1回しかない人生をどう生きるか』を考えるようになりました。人生の幕を引くときに『とてもおもしろい人生だった』と思いたいなって。若い人たちに対して『人生はおもしろいぞ、お前らも楽しめよ』と伝えられる人になりたいと思いました。」

「色々と考えた末に、自分は『人の可能性を伸ばせる人になりたい』と思うようになりました。当時、技術系大手の企業から内定をもらっていたのですが、それを蹴ってハーモニィカレッジで働くことを決めました。もちろん周りからは反対されました。給料も5分の1くらいだったし(笑)。でも『思い描いた人生のゴールに辿り着くために、ハーモニィカレッジで働きたい』という想いがあったので、決断に迷いはありませんでした。」


<乗馬体験をさせていただきました>


その後、大堀さんは石井さんの想いを受け継ぎ、ハーモニィカレッジの代表に就任した。

現在、ハーモニィカレッジではどのような活動が行われているのだろうか。

「活動のひとつに『ポニークラブ(ポニーパーク)』があります。地元の子どもたちが週末を利用してここに通い、ポニーに乗ったり遊んだりしています。」

「また『因幡ふれあい乗馬』という大人向けの乗馬教室もあります。ポニークラブに通っている子どもの保護者の方が、子どもたちの楽しそうな様子を見て『そんなに楽しいなら自分たちも乗ってみたい』とおっしゃってくださり、活動が始まりました。今は保護者だけでなく、色々な大人が関わる活動になっています。時には、メンバーでランチ会などを行い、親睦を深めています。」

「『森のようちえん』事業も行なっています。鳥取県内に8か所ある『森のようちえん』は、園舎をもたなくても子どもを預かって保育を行うことができます。鳥取県で『森のようちえん』が条例化されていることも追い風になり、ハーモニィカレッジは、県からの認可を受け幼稚園事業を行っています。ご紹介した3つの活動の他にも、研修会や環境イベントなど、様々なことに積極的に取り組んでいます。」


自分自身を高めていくことで、提供できる価値を増やす

大堀さんは、20年以上に渡ってハーモニィカレッジの活動に取り組んできた。これまでの活動を通して学んだことや、ご自身にどのような変化があったのかを伺った。

「大学まではどこか勉強をさせられてきたという感覚があって、受け身でやっていた部分がありました。だから、大学を卒業して就職をしたら、勉強はもうやらなくていいんじゃないかと思っていましたね。その考えが大きく変わったのは、ハーモニィカレッジで働き始めてからでした。」

「時給制のアルバイトは、1時間働いたらその時間に見合った給料がもらえる仕組みになっていますよね。ハーモニィカレッジで働いてみて気づいたことは、スタッフと馬がいても、そこに利用者がいなかったら1円も利益が出ないということでした。当たり前のことなんですけどね(笑)。活動を続けるためのお金を生み出すには、人に喜んでもらえるような価値を作る必要があると学びました。」

「世の中のためになる価値を生み出せれば、たくさんの人に求められるようになる。たくさんの人がハーモニィカレッジに来ることで経済も回るようになる。それを実現するために、自ら進んで学び、自分自身を高め、提供できる価値をどんどん増やしていくことが大切なんだなと。学ぶことは生涯続いていくもので、終わりがないものだと気づきました。」


『やりたい、学びたい』という思いがあふれてくるような人に

大堀さんが子どもたちと関わるとき、特に気を付けているのは「子どもの主体性」を尊重することだ。

「気づかないうちに、自分たちの声かけによって子どもたちのやる気をそいでしまっているときがあります。こっちが『子どものために教えてやろう』としている時は大抵うまくいかないんです。」

「私たちがまずやることは『子どもの興味を引き出す』こと。馬に上手に乗れなくても『乗れるようになれば、馬と気持ちを通わせて色々なところへ行けるんだよ』と伝えることで、子どもたちの中に『すごい!やってみたい!』という気持ちを芽生えさせることができたり。」

「子どもたちが上達したいと思った時に声をかけることで、初めて自分たちの言葉が彼らに届くようになるんです。そういったコミュニケーションによって『やりたい、学びたいという思いがあふれてくるような子』になってほしいと思っています。」


何のためにやっているのか考え続ける、自分にできることを探し続ける

ハーモニィカレッジでは「カウンセラー」と呼ばれる大学生ボランティアが子どもたちの活動をサポートしている。子どもと大人の中間にあるカウンセラーだからこそ、子どもたちにとって身近なお兄さん、お姉さんになれるのだ。彼らもまた、ハーモニィカレッジの活動によって様々な経験を積んでいる。

「大学の4年間は、社会に出てからは気づきにくい、色々なことに気づける時間だと思います。だからこそ、自分が学生時代にやっていてよかったと思うことを大学生にも経験してもらいたいと思っています。」

「大学生には、子どもたちにどうやったらより活動を楽しんでもらえるか、良い経験を積んでもらえるかを徹底的に考えてもらいます。実際にやってみてうまくいかなかったところは、みんなで改善策を話し合います。自分たちが考えたアイデアを実践し、喜んでくれている子どもたちを見ることで『誰かのために力を出すことはこんなにもすがすがしいことなんだ』と肌で感じるんですね。それを繰り返すことで、周りに対して自分たちに何が出来るか、何のために活動を行うのかを考える力を身に付けてほしいです。」

「将来社会に出てから、自分は何のために仕事をやっているのか分からなくなる時もあるかもしれません。そんな時こそ、仕事の本質は『人の役に立つこと』だということを思い出してほしいですね。」


「みんなの居場所」をひろげていく

最後に、これから取り組んでいきたいことを伺った。

「ハーモニィカレッジは、発達の障がいを持っている子どもたちと長く関わりがあります。子どものときに牧場に来ていて、大人になってからも訪れてくれる方がたくさんいます。そういう方や、ここを知らない子どもたちにとっての居場所を作るために、福祉の事業を行いたいです。」

「障がいのある方たちにここで働いてもらい、経済的に自立するための支援にもつなげていけたらと思っています。ハーモニィカレッジを色々な人で支え合える場所にしていきたいですね。障がいのあるなしに関わらず、みんなが交じり合える場所が理想ですね。」

「より多様な子育てが出来る幼稚園作りにも力を入れていきたいです。ゆくゆくは、幼稚園を卒業した子どもたちが入学できる学校をつくりたいです。様々な体験を通して学べるような場にしたいと思っています。」

「『みんなにとっての居場所』を作るための活動を、今後も行っていきたいですね!」


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「ハーモニー」は色々な音が合わさり、美しい音色を響かせるということ。

ハーモニィカレッジはこれからも、様々な人が集い響きあう「あたたかい居場所」で在り続けます。


NPO法人 ハーモニィカレッジ:http://www.harmony-college.or.jp/