帰るまで
名前:柴田えっ太
年齢:20歳
性別:男性
職業:社会人
エピソード:成人式
小学生の自分から手紙が届いた。
正確に言うと、
成人式で担任の先生から、自分が小学生のころに20歳の自分に向けて書いた手紙を受け取った。
20才の自分へ
こんにちは。20才の自分は今何をしていますか?
ちゃんと勉強はしていますか?
スポーツはちゃんとがんばっていますか?
色々たいへんだと思いますがあきらめずにがんばってください。
そして、体に気をつけて、家族といっしょにがんばってください!!
12才の自分より
うーん、薄い。
色々悩んで書いたような記憶があるから、もう少し色々書いてあるのかと期待していたのになぁ、、
そして、びっくりするくらいここに書いてあること、全部できてない。
大学は辞めるわ、運動もしてないわ、家族とは離れてるわ、
12歳の自分が悲しむね。
ごめんね、もっと頑張るね。
というわけで、じゃあまずできることから始めようと。
名古屋にもあと数日しかいないし、家族を大事にしようということで長久手のイオンモールにイタリア料理のビュッフェ食べに行くことにした。
東京でどんなことやってるのかとか、普段ちゃんとご飯食べてるのかとか、仕事はどんなことやってるのとか、母から色々聞かれた。
東京に行く時は「好きにしなさい」って半ば諦めるような形で送り出してくれたけど、やっぱり色々心配してくれるんやなぁ、と少し温かみを感じた。
心なしか、母も楽しんでいるように見えた。
家族揃ってご飯を食べるのも本当に久しぶりだったし、自分が東京で元気そうにしていることが分かって、安心したのかもしれない。
東京には美味しいお店がたくさんあるが、家族と一緒に食べるご飯が間違いなく一番美味しかった。
次に戻ってきたときは、自分が美味しいお店に連れていけるように頑張ろう。
とか色々考えてたら妹が自慢げに
「キウイの皮って食べれるの知ってた!?」
と言いながら皮付きのキウイ食べてた。
ホントに食べれた。
*
東京へ帰る日に母から色々と相談を受けた。
父は10年前に病気で他界しており、自分も東京で暮らしているため、実家では母姉妹の3人で暮らしており、母一人で子育てをしてきた故の苦労話などを打ち明けてくれた。
本来、家族を支えるはずの人間が、自分勝手に家飛び出て迷惑ををかけていることへの申し訳なさに胸が熱くなった。
大学を辞める決断をしてまで手に入れた現在の仕事も大事だが、もっと大事なことを忘れていた。
家族のためにできること、それはこれから少しずつ考えていこう。
実家にも、定期的に帰ろう。
そんなことを帰りのバスの中で考えていると、
妹から「遠足だよ」と送られてきた。
この4文字が意味するのは「早く帰ってきてね」なのか、「楽しんでおいで」なのか、「おやつは100円まで」なのか、真相は闇に包まれたままだが、
既に家に帰るのが待ち遠しくなってしまった。
ちゃんと家に帰るまでが遠足。