「◯◯週間」の由来
今からちょうど25年前、平成7年(1995年)1月17日に、阪神・淡路大震災が起きた。これを契機に、災害時のボランティアと平時における自発的な防災活動の重要性が認識され、同年12月15日の閣議了解により、毎年1月15日〜1月21日を「防災とボランティア週間」とすることが定められた。
我が国には、このような「◯◯週間」と呼ばれるものがたくさんあるが、その由来は、あまり知られていないのではなかろうか。
というのは、その由来である「キングス・ピース 」・「国王平和」・「王の平和」で検索をかけても、ヒットしないからだ。
中世イギリスでは、「king's peace」(「キングス・ピース 」・「国王平和」・「王の平和」)が行われていた。
Merriam-Websterによると、下記のように定義がなされているが、ネイティブスピーカーではない我々にはこの定義だけではイマイチよく分からないので、私なりに理解したことを書き留めておこうと思う。
Definition of king's peace
1 : the special protection secured by the monarch in Anglo-Saxon and medieval England to particular persons (as members of the royal household) or places (as the king's highway) and occasionally to specific periods of time (as coronation days) —used when the British monarch is a king
2 : the general peace for the protection of persons and property secured in medieval times to large areas and later to the entire royal domain by the law administered by authority of the British monarch —used when the British monarch is a king
https://www.merriam-webster.com/dictionary/king%27s%20peace
中世イギリスは、封建時代であって、絶対君主制への過渡期だから、中世イギリスの国王の権威・権力は、全国津々浦々にまで及んでいなかった。そこで、王宮から半径何マイルまでの地域や街道(highway)に限って治安維持を強化し、国王や王族を侮辱する反逆者、旅人に追い剥ぎをする強盗犯等の犯罪者を「king's peace」を乱した者として厳罰に処して、国王の権威・権力に従わせ、徐々にその範囲を拡大することによって、国王の権威・権力を全国津々浦々にまで及ぼして行ったわけだ。
また、中世イギリスの国王の権威・権力が弱かったので、国王の戴冠式及び誕生日若しくは復活祭の前後の期間を「king's peace」と指定して、その期間中に喧嘩をしたら法律違反として厳しく処罰することによって、国王の権威・権力に従わせ、常日頃から喧嘩をしないよう習慣付けて、平和を法的に確保しようとしたわけだ。
この時間的な「king's peace」を真似っこしたのが、我が国の「◯◯週間」だ。現在、我が国の自治体が行っている「交通安全週間」を例にとれば、いつ如何なる場合であっても、交通安全に注意しなければならないことは当然であるが、年がら年中緊張するのは難しいのも事実だから、何月何日から何月何日までを「交通安全週間」と定めて、取り締まりを強化したり、啓発活動をしたりして、常日頃から交通安全に注意を払うよう習慣付けようというわけだ。
悠久のときを経て、遠い異国日本で形を変えながら「king's peace」が行われているなんて、大変興味深い。このような些細なことがきっかけでもいいので、「へぇ〜」と法務に関心を持ってもらえたらと思う。