熊本 八代・Jazz Bar FIRST(ファースト) ⑤20/01【マスターのコルトレーン講座①インパルス時代】
今年も元旦からお店を開けておられた熊本・八代(ヤツシロ)のJazz Bar FIRST(ファースト)さん。
※お店のFBはこちら。新しくご購入されたアルバム等も掲載しておられますので、ご参考まで。
このお店のマスターと言えば、やはりコルトレーン。
今年も例年どおり、「至上の愛」を元旦の朝一番に聴いたとおっしゃるマスター。即座にママが「私は布団の中で聴きましたけどね」とボヤかれ、笑い話になってしまいましたが、やはり感心すべきこと。
そんなこのお店に、今回新年挨拶で訪問するに当たって、考えたこと。
恥ずかしながら、私のコルトレーンへの苦手意識は未だに解消されないまま。2年程前にこのマスターに教えを請い、次への道筋もつけていただいたにも関わらず、その後、私の関心がまた方向性もなくジャズの大海を彷徨。それ以降もこのお店を何度も訪問したものの、コルトレーン以外のお話で盛り上がってしまう始末。もちろんそれはそれで楽しかったのですが。。。
もしかして、このマスターだからこそ、コルトレーンをちゃんと教えていただかないともったいない?更には、このお店の常連さんと胸を張って言えない?
「うちの店の常連で、コルトレーンをまともに聴き込んでいる人なんてそんなにいないから大丈夫」というマスターの声が聞こえたような気がしましたが。。。やはり初志貫徹。「コルトレーン・再挑戦!※」をお願いすることに。
※後日、このマイ・ムーブメントを「プロジェクト・リ!トレーン」と命名しました。
ちなみに、何故私がここまでコルトレーンに執着するのか?
その理由は個人情報になりますので、もしどうしてもお知りになりたい方は、お会いした時にお聞きくださいませ。笑
まず最初に聴かせていただいたのは、北九州・黒崎の風土さんで教えていただき、今では愛聴盤となった「クレッセント」。
ここから始まった「マスターのコルトレーン講座①インパルス時代」ですが、ご興味のある方は後述(注)にておつき合いくださいませ。
その後、閉店時間28時までコルトレーン三昧。
マスターの懇切丁寧なガイドの下、現代JBLの最高峰 初代EVEREST D55000を始めとしたこのお店の音で聴くコルトレーン。極めて贅沢、かつ、刺激満載の充実した時間。
実は、この日あったライブも最初から聴かせていただいたので、滞在時間は約9時間。しかも、いつもは遅い時間に来る常連さんもライブの後、帰られたので、24時を過ぎてからはほとんどマン・ツー・マン。
楽しい時間があっと言う間に過ぎ去ってしまうのはいつもどおりですが、このご縁の有難さには心から感謝した次第。
少し話が逸れますが、余談を一つ。マスターは常連さんが来られた時、その方の好きな曲をリクエスト無しでも必ず1曲はかけられます。
アルバムの片面単位ではなく、何曲目であっても、1曲。CDならともかく、レコードなのでかなり面倒な作業。いつもスゴいなぁと頭が下がるような想いで見ておりますが、その一方、この過剰なまでのおもてなしは、やはりこのお店の魅力の一つ。
更に話は逸れますが、このお店の魅力と言えば、これが人気No.1ドリンク 晩白柚サワー。
※「晩白柚 ばんぺいゆ」はこの八代の特産品で、ギネスブックでも認定されている世界一の重量級柑橘類。
アルコール抜きの晩白柚スカッシュもありますが、泊まりで飲める時にはやはりこのサワーがおススメ。
グラスの縁に塗られた粗塩とのマッチングの良さもあり、ここでしか飲めない病みつきになる美味しさ。。。これを飲みながらこのお店の音楽に浸れる幸せはちょっと格別ですので、併せてご参考まで。
いい気分で帰り始めましたが、さすがに28時を過ぎるとかなりの冷え込み。これだけ寒いと普通景色には目がいかないものですが、商店街の四つ角で強烈に目に飛び込んできたこの派手なくまもん。思わず苦笑。
今年も引き続きお世話になりますが、次回のコルトレーン講座もよろしくお願いいたします。また、最後まで全力投球でおつき合いいただき、ありがとうございました。
【駐車場:無(近辺にコインパーキング多数有)、喫煙:可】
(注)マスターのコルトレーン講座①インパルス時代
ジョン・コルトレーン[1926年9月23日 - 1967年7月17日]、その40年の短い人生の内、今回マスターが教えてくださったのは、その晩年6年間のインパルス時代。
それぞれのアルバムの中から一番聴きやすいものを選んでいただき、その雰囲気と聴きどころを教えていただきましたが、ジャズは大音量・いい音で体感することも大切。その意味でも、このお店は最適だったのかもしれません。
尚、それぞれのタイトルからYoutubeにリンクを貼りましたので、ご参考まで。(もしリンクが切れていたら、コルトレーン、そのタイトル名でご検索願います。)
1.クレッセント(Crescent) Recorded 1964.4&6 Released 1964 by Impulse!
Crescent/Wise One/Bessie's Blues/Lonnie's Lament/The Drum Thing
John Coltrane Quartet[John Coltrane (ts)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)、Elvin Jones (ds)]
コルトレーンはスローな曲がいい。何が入っているのかはわからないけど、その時の精神状態によるのかもしれないけど、何かが入っているから。。。これがマスターのコルトレーン観。
このアルバムは「至上の愛」の直前の作品なので、その前哨戦という評論家もいるけど、そこがまだ薄い、がマスターの評。
このアルバムで私がリクエストしたのは、1曲目のタイトル曲。甘過ぎる音楽が苦手な私にとって、メロディ・ラインが甘くなり過ぎることなく、そのアンサンブルのカッコ良さに浸れる名演。まずは、自分の原点を確認してからのスタートです。
2.至上の愛(A Love Supreme) Recorded 1964.12 Released 1965 by Impulse!
Part1:Acknowledgement(承認)/Part2:Resolution(決意)/Part3:Pursuance(追求)/Part4:Psalm(賛美)
John Coltrane Quartet[John Coltrane (ts)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)、Elvin Jones (ds)]
「スロー・バラードは全て好きだけど、一番はやっぱりこれ。安らぎがあり、ゆっくり聴けるから」。これが、この一枚をコルトレーンの最高傑作として評価するマスターの弁。
その一方、私がコルトレーンに苦手意識を持つようになった原因も、まさにこのアルバム(詳細は後述※)。ということで、今回一番緊張し、背筋を伸ばして聴かせていただいた一曲が、終曲のPart4:Psalm(賛美)【このYouTubeだと23分頃からで、長いベース・ソロから始まります。】。
正直なところ、よくわからないままにす~っと終わりました。数十年ぶりに相対峙しましたが、嫌悪感も拒絶感もなく聴けました。そう、別に何の問題もなく聴けました。好きになれるかどうかはまだわかりませんが。。。もうこれまでのように避ける必要もなさそうです。
※苦い思い出:まだ私がクラシック一辺倒だった数十年前のこと。意を決して、ジャズに挑戦。最初の一枚はマイルスではなく、コルトレーンから!と斜に構えて手に取った名盤紹介本。そこに書かれてあった「最高傑作」というカッコいい文言。それを鵜呑みにし、ドキドキしながら購入した高価なCD。ネット情報がないどころか、廉価盤もまだ発売されていなかった時代。かなり期待して聴いた結果。。。手酷く轟沈。その後10年近くジャズにすら近づけなくなるという絵に描いたような初心者の悲劇。よくぞ、ここまで、です。笑
3.トランジション(Transition) Recorded 1965.5&6 Released 1970 by Impulse!
Transition/Dear Lord/Suite(Prayer and Meditation: Day, Peace and After, Prayer and Meditation: Evening, Affirmation, Prayer and Meditation: 4 A.M.)
John Coltrane Quartet[John Coltrane (ts)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)、Elvin Jones (ds,1&3)/Roy Haynes(ds,2)]
マスターが、実はコルトレーンの最高傑作はこちらかも?と悩まれる一枚。曰く、音の生命力では断然こちらの方がいいんだけど。。。でも、聴くのに集中力がいるし、疲れるからなぁ、だそうです。
A面1曲目のタイトル曲を聴かせていただきましたが、この放出され続けるエネルギーの凄まじさ!マスターのお言葉にあっさり納得。ただ個人的には「至上の愛」よりこちらの方が断然聴きやすく、好きになれそうな予感がしましたが、これだけ集中力を維持し続けるのはやはり大変。
しかし、この1枚にはとっておきの次があるのです。2曲目のDear Lord。ちょっと甘い曲ですが、その前が強烈過ぎただけに何とも癒されること!
※1993年発売のCDでは、2曲目がWelcomeに変わり、4曲目にVigilが追加されているので、要注意。
初めてこのアルバムを教えていただいた2年前、「お葬式では『至上の愛』を流して欲しい、いや、でもこの『トランジション』も捨てがたい」と真剣に悩むマスターを「はいはい、どちらも流しますよ」とママが軽く流したという一幕があり、それを思い出しましたが、その当時の私より、コルトレーンが近くなっていたのも間違いなさそうです。
【2020.1.28追記:長崎・マイルストーンさんでこの曲に再チャレンジし、打ち震えるような感動を味わうことが出来ました。一度聴いただけではわかりませんでした。大音量・いい音で何度も聴くことの大切さを改めて痛感、です。】
あとこの1枚で驚いたのは、初めて発売されたのが、コルトレーンの死後3年経った1970年であったこと。コルトレーンの死を嘆いたジャズ・ファンにとって、この強烈なアルバムはどう響いたのでしょうか?コルトレーンの凄さを再認識すると共に、その早過ぎる死を悼むしかなかったのでしょうか?
4.バラード(Ballads) Recorded 1961.12&1962.9&11 Released 1963 by Impulse!
Say It (Over and Over Again) /You Don't Know What Love Is/Too Young to Go Steady/All or Nothing at All/I Wish I Knew/What's New?/It's Easy to Remember/Nancy (With the Laughing Face)
John Coltrane Quartet[John Coltrane (ts)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b,1-6& 8)/Reggie Workman (b,7) )、Elvin Jones (ds)]
「どうすればソロを終わらせることが出来る?」と聞いたコルトレーンに「マウスピースから口を離せばいい」とマイルスが答えたという二人の性格を如実に表わした有名な逸話や、このバラードとエリントンとのアルバムがスローなのは、コルトレーンの体調が悪かったからだったという都市伝説等を教えていただきながら聴いたこのアルバム。
多くの方が初心者おススメ盤に挙げる一枚ですが、これは1曲目の「Say It」だけで十分!とのこと。
本文中の余談の続きになりますが、マスターはそのサービス精神からか、アルバムの中でも選りすぐりの1曲をかけるのが結構お好き。でも、そのせいだと思います。このお店の常連さん達が、アルバムの中からこの1曲というわがままなリクエストをするようになったのは。笑
5.エクスプレッション(Expression) Recorded 1967.2&3 Released 1967 by Impulse!
Ogunde/To Be/Offering/Expression
John Coltrane(ts,fl)、Pharoah Sanders(fl,piccolo)、Alice Coltrane(p)、Jimmy Garrison (b)、Rashied Ali(ds)
コルトレーン最後のスタジオ録音で、亡くなった1967年7月の2カ月後に発売されたアルバム。
聴かせていただいたのは短い1曲目のOgundeでしたが、ギャリソン(b)以外のメンバーを総入れ替えした結果、音楽がどう変わったのか?がポイント。。。マッコイ・タイナーやエルヴィン・ジョーンズの素晴らしさを改めて認識しましたが、それ以上は今後の課題です。
6.ヴィレッジ・ヴァンガードの全貌(Trane's Modes) Recorded 1961.5&11 Released 1980 by Impulse!国内盤
Impressions/Miles' Mode/Chasin' Another Trane/Greensleeves/Impressions/Naima/Africa/The Damned Don't Cry
John Coltrane(ss,ts)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)/Reggie Workman (b)、Elvin Jones (ds))/Roy Haynes(ds)、Booker Little(tp)、Eric Dolphy(as,b-cla,fl)他
このアルバムは1979年にThe Mastery of John Coltrane, Vol. 4としてリリースされたコンピレーションアルバムの国内盤。。。ちょっと唐突な感じがしますが、事の発端はマスターが「確か、コルトレーンがフルートとサックスを持ったカッコいいジャケットのアルバムがあったなぁ」とおっしゃったので、「是非、見たい!」とリクエストしたから。笑
このアルバムを聴いた記憶はほとんどなかったマスター、ここでの選択は、エリック・ドルフィー(as)やブッカー・リトル(tp)が入ったスタジオ録音、7曲目(D面1曲目)の Africa(アフリカ/ドラムで収録された同曲の別テイク)。
「こうやって聴くと、オーレ!コルトレーン(Olé Coltrane)[1961年5月録音 Atlantic)と同じような感じがする」とマスターがおっしゃったので調べてみたところ、何と全く同じ時期の録音で、さすが!の一言でした。
7.ラッシュ・ライフ(Lush Life) Recorded 1957.5&8,1958.1 Released 1961 by Prestige
Like Someone in Love/I Love You/Trane's Slo Blues/Lush Life/I Hear a Rhapsody
John Coltrane(ts)、Earl May(b,1-3)、Art Taylor(ds,1-3)、Red Garland(p,4-5)、Paul Chambers(b,4-5)、Donald Byrd(tp,4)、Louis Hayes (ds,4)、Albert Heath(ds,5)
ちょっと一休み。この一枚だけはインパルス時代から少し遡ったプレステージ時代で、57年録音の1曲目 Like Someone in Love。。。朗々と吹くコルトレーンのカッコ良さ、緊張感を強いられない心地良さを耳に残して、時代はまた戻ります。
8.ライヴ・アット・バードランド(Live at Birdland) Recorded 1963.10&11 Released 1964 by Impulse!
Afro Blue/I Want to Talk About You/The Promise/Alabama/Your Lady
John Coltrane Quartet[John Coltrane (ts)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)、Elvin Jones (ds)]
4曲目のAlabamaは、アラバマ州の教会で4人の黒人少女がKKKに爆殺された事件を受けてコルトレーンが書いた作品とのことで、その悲しみのこもった音楽をここでは聴かせていただだきました。
9.アフリカ・ブラス(Africa Brass) Recorded 1961.5&7 Released 1961 by Impulse!
Africa/Greensleeves/Blues Minor
John Coltrane(ss,ts)、McCoy Tyner (p)、Reggie Workman (b)、Elvin Jones (ds)、Booker Little(tp)、Eric Dolphy(as,b-cla,fl)他
コルトレーンがアトランティックからインパルス!に移籍し、大規模なブラス・セクションで録音した異色の一枚。
あのエリック・ドルフィーが演奏者/編曲者として加入していた短い時期の作品でもあり、とても楽しめた一枚でもありました。
10.デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン(Duke Ellington & John Coltrane) Recorded 1962.9 Released 1964 by Impulse!
In a Sentimental Mood/Take the Coltrane/Big Nick"/Stevie/My Little Brown Book/Angelica/The Feeling of Jazz
Duke Ellington(p)、John Coltrane(ts,ss)、Jimmy Garrison(b,2-3&6)、Aaron Bell(b,1&4-5&7)、Elvin Jones(ds,1-3&6)、Sam Woodyard (ds、4-5&7)
ここからは少し企画モノに入り、まずはデューク・エリントンとの一枚ですが、「やはりこの一曲に尽きる」とのことで、1曲目 In a Sentimental Mood。
あまりにインパクトの強過ぎる名演で、さすがに私でも知っていましたが、この流れで聴くとエリントンの独特の音色、上手さも楽しめました。
※このコルトレーンとエリントンの写真はネガを裏返しで使っているとの指摘は以前、同じ八代のミックさんの所で書いたとおりですので、ご参考まで。
11.ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン(John Coltrane & Johnny Hartman)
Recorded 1963.3 Released 1963 by Impulse!
They Say It's Wonderful/Dedicated to You/My One and Only Love/Lush Life/You Are Too Beautiful/Autumn Serenade
Johnny Hartman (vo)、John Coltrane (ts)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)、Elvin Jones (ds)
そして企画モノの最後はジョニー・ハートマンとの一枚。
「ジョニー・ハートマンはいい声だけど、この一枚しか売れなかった」というお話等を伺いながら、「これもやはりこの一曲に尽きる」という4曲目のMy One and Only Love。
今ではなかなか聴くことの出来ない深々とした甘い声に耳を傾けながらも、ちょっと小休止。
12.アセンション(Ascension) Recorded 1965.6 Released 1966 by Impulse!
Ascension
Freddie Hubbard(tp)/Dewey Johnson(tp)、John Coltrane (ts)/Pharoah Sanders (ts)/Archie Shepp (ts)、Marion Brown(as)/John Tchicai(as)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)/Art Davis (b)、Elvin Jones (ds)
「神の園」と題された一枚で、そのジャケットを見せていただきましたが、かけてはいただけませんでした。初めてフリー・ジャズに取り組んだ作品だけど、「何をやりたいのか、わからないから」だそうです。
後日談ですが、実際に聴いてみて、マスターがおっしゃりたかったこともよくわかりました。
13.クル・セ・ママ(Kulu Sé Mama) Recorded 1966.6&10 Released 1966 by Impulse!
Kulu Sé Mama (Juno Sé Mama)/Vigil/Welcome
John Coltrane (ts)、McCoy Tyner (p,1,&3-6)、Jimmy Garrison (b,1&3-6)、Elvin Jones (ds)、Pharoah Sanders(ts, per,1&4)、Donald Rafael Garrett(b-cla, b, per,1&4)、Frank Butler(ds, vo,1&4)、Juno Lewis(vo,per,ds,1&4)
今回、色々聴かせていただいた中で一番気に入ったのが、この1曲目Kulu Sé Mama。鳴っている音楽はジャズなのかアフリカ音楽なのか、はたまた現代音楽なのか、ジャンルはもはやわかりませんが、私の大好きな音響。空間を広く使った録音なので、PCで聴いていたら真価を聴き誤ったかもしれませんが、このお店のシステムで鳴らされるとこれはもう絶品。気持ちがいいの何の!
実際、録音にも参加しているジュノ・ルイスという方の作品なのですが、時代を自らの力で切り拓いていったコルトレーンがこのように他人の作品を前面に出し、献身的な立場に立って演奏しているのも興味深かったです。
14.インターステラ・スペース(Interstellar Space) Recorded 1967.2 Released 1974 by Impulse!
John Coltrane(ts)、Rashied Ali(ds)
この録音の前年1966年からメンバーとなったラシッド・アリ(ds)とのDUOで、「惑星空間」と題された作品。1曲目のMarsを聴かせていただきましたが、火星=軍神のイメージからか、吹きっ放し、叩きっ放しの大騒ぎ。。。2曲目の美の女神・金星Venusも聴きたかったのですが、そろそろ閉店時間で断念。
また、この作品が発売されたのは、コルトレーンが亡くなってから7年後、先に聴いたトランジションからも4年後。このちょっと特殊な作品はその当時、どのように響いたのでしょうか?
15.ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード("Live" at the Village Vanguard) Recorded 1961.11 Released 1962 by Impulse!
Spiritual/Softly, as in a Morning Sunrise/Chasin' the Trane
John Coltrane(ss,ts)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)/Reggie Workman (b)、Elvin Jones (ds)、Eric Dolphy(b-cla)他
最後は、インパルス!に移籍した直後の秋、NYのライブ・ハウス ヴィレッジ・ヴァンガードでの熱演ぶりが収められた名盤から、2曲目(B面1曲目)の朝日のようにさわやかに - Softly, as in a Morning Sunriseを聴かせていただいて、この日のマラソン講義は終了。
ラッシュ・ライフ(57年頃)、クレッセント(63年)、トランジション(65年)を聴かせていただいた二年前は、その音色・吹き方、音の持つパワー・心への響き方が全く変わっていったこと、聴き手側の強いられる緊張感がどんどん増していったことに驚かされましたが、今回はその音楽が今聴いても全く古く感じることがなかったこと、そして、その幅の広さに驚かされました。
また、この1961年から始まったインパルス時代の主役だったコルトレーン・カルテット(マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズ)は、エリック・ドルフィーの加入(1962)・退団(1963)、1965年ファラオ・サンダース(ts)加入を経た後、同年12月マッコイ・タイナー退団→アリス・マクレオド(1966年にコルトレーンと結婚)加入、1966年3月エルヴィン・ジョーンズ退団→ラシッド・アリ加入で終焉を迎えましたが、その4年間という短い時間の中での充実ぶり・輝きぶり・大きな変貌ぶりにも、ただ唖然とするばかり。
同時代を生きていたジャズ・ファン=マスターの年代の方々には、リアルタイムでこれらがどのように聴こえていたのか?どこまでついていかれたのか?どこかで見限られたのか?死後に発売されたアルバムをどんな風に捉えられたのか?マイルスとはまた違った変貌ぶりについてどう思っておられたのか?更には、コルトレーンがちゃんとあと20~30年、いや、せめてあと10年生きていたら、どんな変貌を遂げていったのか?何が起きていたのか?あれこれ妄想が膨らみ、全然考えがまとまりません。
遅まきながら、コルトレーンの世界をゆっくりじっくり探索していきます。