只管打坐・只管打算 その2
今回挑戦したのは,あるブラックホール解から別の解を「生成」するというもの。専門用語がいくつか出てきたので説明しましょう。
よく知られているように,ブラックホールとは光ですら吸い込まれると脱出できないような領域のことで,大きさには様々なタイプがありますが,典型的なものに星がその一生を終えたときにできるものがあります。太陽は,およそ 2 x 30乗 kg,すなわち 2000兆 x 1000兆 kg もの質量を持ちますが,この値の30倍以上の星が一生を終えると,ブラックホールになると考えられています。
ブラックホールが存在すると,その周囲の時空は激しく歪められます。ゴム膜の上に石を置くと膜が曲がって窪みができますが,ブラックホールによって時空が歪められるのはちょうどそのような状況です。ただしゴム膜の表面は2次元ですが,ブラックホールがある歪んだ空間は私たちが住む3次元空間(4次元時空)です。ブラックホールの周りでは光の軌道も時空の窪みにそって曲げられますが,その様子はゴム膜の上でビー玉を転がすと,窪みに沿ってビー玉の軌道が曲がるのと同じです。
ゴム膜に置いた石が軽ければ窪みは浅く,逆に重い石を置けば窪みは深くなります。ブラックホールも,質量が小さければ周囲の空間の歪みも小さ,質量が大きければ周囲の空間の歪みも大きくなります。物質があるとその周囲の時空がどのように歪むのかを求めるには,一般相対性理論の基礎方程式であるアインシュタイン方程式を使います。ブラックホールがあるとき,その周囲の時空の歪み方はアインシュタイン方程式を解けば得ることができます。
一番簡単なタイプのブラックホールは,ボールのように球対称な形をしていて,回転などはせず,じっとしているタイプのものです。これはシュヴァルツシルトブラックホールといい,その周囲の歪んだ時空はシュヴァルツシルト時空と言います。アインシュタイン方程式を解いて得られる,この歪み方を表す数式がシュヴァルツシルト解です。具体的には下のような方程式です。(その3へ続く)