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俳優への夢2

2020.01.19 00:00


2003年5月

2003年5月1日(木)

エキストラへの道を歩き始めた弟は夢膨らんで、私の家にやって来ました。

弟:兄さん。とうとう私のプロマイドが出来ましたよ。

私:ほう、よく撮れているね。

弟:そうでしょう。やはり、プロのカメラマンが撮ったのは素人のとは違うでしょう。

それで、遂にエキストラの仕事が三つも決まったんですよ。

プロデユーサーに自分を売り込むのが大変だったんだよ。

私:本当か? 凄いじゃないか。それで、どんな仕事だい?

弟:一つは刑事役だよ。 背広に、地味なネクタイをしてくるように言われたんだよ。

今度の土曜日がその日なんだよ。 早速、地味なネクタイを7本も揃えたよ。

当日、どれが良いでしょうと監督に聞こうと思って。

私:そうか。 ドラマで、二人の刑事役がいて、主役の隣にいる刑事役かな?

そうだったら、凄いね。

弟:そうでしょう。他のは別の日だけれど、レストランでの客と通行人の役だよ。

(弟は期待がいっぱいで、興奮して話したのでした。)

私:そうか。そしたら、出演した後で、話を聞かしてよ。

弟:いいとも。

2003年5月4日(日)

弟はエキストラ出演の話をしてくれました。

私:昨日、出演したんでしょ。どうだった?

弟:刑事役だったんだけれど、二人どころじゃなかったよ。

場面は刑事役がたくさん集まって、合同会議をするところだよ。

要するにその他大勢の刑事役だったよ。だから、実際にテレビに映っているかどうか、分からないよ。

(弟は先日の勢いがなくなって、どこか寂しそうでした。私は弟を励まして、言いました。)

私:でも良いじゃない。とにかく、まず第一の仕事があったんだから。

弟:日当が3000円だよ。交通費を引くと実質2000円だね。

とにかく、趣味で収入が入るからいいよね。

ある人が言ってたんだ。 エキストラを1年も続けているとチャンスがあれば、テレビ番組で再現ドラマの主役をもらえることがあるんだって。そういった番組は素人が出演しているんだってさ。

私:そうか。今後が楽しみだね。

2003年5月5日(月)

午後に弟がエキストラの報告に来ました。

私:どうだった?

弟:今日は四川料理の中華飯店の中でのテレビドラマシーンだったよ。

朝の7時15分の集合で6時ぐらいに行ったら、一番乗りだったよ。

ディレクター:丸テーブルの何処の席でもいいですから、座って下さい。

弟はカメラがでよく映りそうな場所を選んだのでした。

いよいよ撮影のリハーサルが始まりました。

ディレクター:前に用意された麻婆豆腐でも、ラーメンでも好きな物を食べながら、何かしゃべって下さい。

弟:これはおいしいなー。

弟は独り言を言いました。

ディレクター:そこの人。カメラの方ばかり見ないで下さい。

弟は映りたい一心で、カメラを意識し過ぎたのでした。

ディレクター:そこの人。背広を脱いで下さい。

弟はワイシャツ姿になったのでした。

本番では有名女優が来ました。

しかし、エキストラは有名俳優とは会話をしてはいけないと言われていました。

シーンの撮影が終わって、他のエキストラが言いました。

他のエキストラ:最近、仕事がなかなか来ないんですよ。

弟:そうですか。 どうしてですか?

他のエキストラ:エキストラの登録数が延べ、9000人もあるんですって。

だから、積極的にディレクターに売り込まなくては、仕事がもらえないんですよ。

2003年5月10日(土)

弟にテレビドラマ以上の事が起こったのでした。

地元には新聞にも紹介された有名なおいしい寿司店があります。

母と弟はバスに乗って、住宅街の中にあるその店に行ったのでした。

昼食を済ませた後、またバスに乗って、最寄りの沿線の駅に着いたのでした。

弟は母のための簡易な車椅子を持っていました。

バスを降りると、一人のやくざ風の男が後ろから声を掛けてきました。

男:そこの男。ちょっと、待て。

弟:何ですか?

男:お前の車椅子が俺のズボンに触れて、汚れたんだよ。

母が見ても、その男のズボンが汚れているとは見えませんでした。

弟は黙って、返答しませんでした。

男:この背広とズボンは高価なものなんだよ。洗濯に出しても、元に戻らないんだよ。

男は機関銃のようにまくしたてました。

男:20万円払ってくれ。

弟は依然として、沈黙していました。

男:払って、もらえないんだったら、訴えるから、警察に行こう。

弟:行きましょう。

男と母と弟は駅の近くの交番に向かったのでした。

いつのまにか、男は後ろから付いて来るのでした。

線路を渡り、3人が交番に近づいて来ました。

ところが交番の少し、手前の所まで来ると後ろの男は消えて、何処かに行ってしまったのでした。

この出来事を母は家に帰って、何回も興奮して、家族に話したのでした。

私だったら、その男に返答して、おかしなことになっていたかも知れないところ、

弟は冷静に対処したのでした。

趣味と言えども、俳優への弟の見果てぬ夢は果たして、どうなるのでしょうか?

弟は、エキストラに採用してもらうため、今後ともしっかりとディレクターに売り込むことを決心したのでした。