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道を聞かれる

2020.01.19 02:44


2002年1月

阪神大震災が起こる前の神戸での出来事です。

私は神戸の町を見学しようと一人でガイドブックを携えて歩いていました。

一つ目のお目当ての庭園を見た後で、今度は神戸の異人館を見ようと思って歩いていたのでした。 そうしたら、一人の若い美女が私に近づいてきて、言いました。

美女:あの。 道をお聞きしたいのですが?

私:はあ。 私も不案内なのですが、ここに地図を持っているので何とかなりますかね。 何処ですか?

美女は行き先を告げたので私が本で調べてみるとすぐに分かりました。

私:これなら私が行く方向と同じですね。

美女:そうですか。 どうも有り難うございます。

ところで、東京のお方ですか?

私:はい。 そうですが、良く分かりますね。

美女:東京はどちらの方ですか?

同じ方角に歩きながら美女は聞いてきます。

私:新宿から出ている京王線の沿線なのですが。

美女:新宿の方ですか。 私はかつて新宿の服装の専門学校で習ったことがあるんですのよ。

私:どおりで素晴らしいファッションだと思いましたよ。

美女:神戸にはお一人でご旅行ですか?

私:旅行という訳ではないのですが、せっかくここまで来たのでどこか見学しようと思ってるんですよ。

美女:そうですか。 よろしかったらご案内致しましょうか?

私:え。

私は絶句してしまいました。 私の頭の中のコンピューターは高速で回転し始めたような感じでした。

さっき、道を尋ねたのに、今度はご案内しましょうかと言う。 変ではないか。

そうか。 道を聞くのは私に近づくためのきっかけで本当は何か狙いがあるのかな?

でも、こんな美女と神戸を散策して、食事でも一緒にしたら、さぞ楽しいだろうな。

しかし、レストランで一緒に食事をしていたら、恐いお兄さんが出て来たらどうしよう。

恐いお兄さん:お楽しみ中のところ、悪いが俺の女に手を出してどうしてくれるんだ?

私:『 どうしてくれるだ』と言われましても、私は誘われてこうなった次第なので。

恐いお兄さん:何をごちゃごちゃ言ってるんだ。 落とし前をつけてもらおうじゃねえか。

私:落とし前って何ですか?

恐いお兄さん:この始末をきちっとつけてもらおうってことよ。

私:そう言われましても。

恐いお兄さん:財布を出しなよ。

私:これを全部出すと私は東京に帰れませんよ。

恐いお兄さん:そんなこと俺の知ったことか。 つべこべ言わずに早く出すんだ!。

こんな事態になったらどうしよう。 私は恐怖感に襲われて、美女に言いました。

私:申し訳ないけど、急に用事を思い出したので、これで失礼しますよ。

美女:それは残念ですわね。

私はかくて、その場を退散したのでした。 その後で異人館を見学したのですが、さっきのことがあったので、なんだか気もそぞろでした。