年末年始の活動報告
(ブログ内容とは関係のない絵画①)
元気してる?と聞いてくれる知り合いがいたので、11月から年末年始に何をしていたか書きます。
昨年の10月でパリに来て一年が経過しました。
現在、パリ地方音楽院の古楽科、ヒストリカルファゴット専攻で二年目の学生をやっています。
普段どんな活動をしているかというと、大学内での個人レッスン、授業、プロジェクト。それから外部での演奏などです。
11月は友人と組んでいるアンサンブルの本番、レコーディングがありました。一月からずっと一緒に演奏しているグループで、フレンチカンタータ「のみ!」を演奏するというプロジェクトをやりました。フレンチバロックについて特に知識のなかった僕にとって、クレランボー(Clérambault)やモンテクレール(Montéclair)といった作曲家たちは名前の発音からして未知でした。歌詞が聞き取れないので、フレーズの入りや切りを理解するのにとても時間がかかりました。10か月演奏してやっと形になったという感じです。また他の団体でもチャレンジしたいです。多分機会は沢山あるでしょう。
(↑アンサンブルを指導してくれた世界的オーボエ奏者のアルフレッド・ベルナルディーニ)
それから僕にとっては大事なイベント。バロックオーボエ科の公開コンサート。大学内の小さなイベントだとあなどることなかれ!僕の大学のバロックオーボエのクラスは人気で生徒が10人くらいいるのです。それに対してファゴットは3人。それなので発表会の度に数人の生徒の通奏低音を一気にやります。またまた全員がゼレンカ、ファッシュ、プラッティといった技巧的なファゴットパートを書き残した作曲家をチョイスします。それがふた月に一度あるので毎回難しい曲を3-4曲まとめて勉強します。バッハの時代、オーケストラ奏者は毎週のように渡された楽譜をすぐに読まなければならなかったと聞きます。それを考えると今、自分は当時の演奏家と同じようなペースで曲に取り組んでいるのだなと思っています。
(↑関係のない絵画②。ランケットというファゴットの仲間の楽器を吹いている人がいます)
今年度から、可能な限り、安い値段で買えるコンサートには行くようにしています。10月はパリ管弦楽団とバイエルン放送交響楽団の二つのコンサートに行きました。特に世界的指揮者であるマリス・ヤンソンス率いるバイエルン放送響きの演奏は鬼気迫るものでした。その公演の2週間後にマリス・ヤンソンスは亡くなりました。彼の演奏を生で聴くことが叶わなかった人が世界中にいるなか、運が良かったと思います。
11月は世界的ピアニストであるダニエル・バレンボイムのピアノリサイタル。それから彼が指揮するベルリン国立歌劇場管弦楽団の演奏会に行きました。彼の演奏、ドイツの二つの世界的オーケストラを聴いて、僕が普段聴いているフランスのオーケストラは全然違う言葉を使っているのだなと実感しました。
流麗な言葉を喋るフランス人の演奏はたいへん魅力的です。が、たまに聴く他の国の団体の演奏は今自分が何を目指しているのか、どうなるべきなのか見直させてくれます。どれも日本で聴いたら2,3万もするような団体です。全て10ユーロで聴けました。28歳のうちに可能な限りのコンサートにいかないと!!
また、11月は2つの楽器が仲間に加わりました!!
ひとつは師から譲ってもらった1800年製のオリジナルのファゴット。Rustというメーカーによってフランスのリヨンで作られたもの。細かいラインを描くような音色は、現代のフレンチバソンの音色に通じていくものがあると思います。
もう一つは去年の今頃から注文していたドゥルツィアン。Henri・Gohinという現代のフランス人メーカーが作ったものです。野太い音がするというよりかは、音がならぶ、機動性重視の楽器で、バロック初期のドゥルツィアンの為の技巧的な音楽に向いていると思います。これらは買ってすぐに出番があり、大活躍してくれています。
12月は冬のバカンスまで毎日リハーサルと本番でした。そのうちの半分は、バロックヴァイオリンの巨匠シギスヴァルト・クイケンとパリ・リヨン国立舞踏音楽院合同のオペラ企画でした。演目はハイドンのL`infedelta delusa(勘違いの不貞)でした。シギスヴァルトは芸大にもマスタークラスで来たことがあり、一度一緒に演奏していますが、本当にすばらしい音楽家でした。激しい動きをしたり、突飛なことを言ったりはしません。しかし、演奏家たちの気持ちがすこしずつ彼の周りにまとまって、本番で一気に爆発する。そんな感動体験をさせてもらいました。彼は今75歳でもうすでに伝説になっている人ですが、また一緒に演奏することが出来たらいいと思います。
それらが終わった二日後、大学でシャルパンティエ(フランスバロックの宗教曲作家)のクリスマスのミサを演奏しました。シャルパンティエは日本ではバッハのようには沢山演奏されない作曲家です。(演奏したいけど環境的に演奏できないのでしょうか?)バッハやヘンデルには無いお洒落なハーモニーや香りを持っています。こっちにいる間に浴びられるだけこのレパートリーに触れたいです。ヴェルサイユピッチ(a=392)の楽器、、手に入れるべきかなぁ、、、
(エルヴェ・ニケと、ル・コンセール・スピリチュエルによるヘンデルのメサイア。ファゴットの首席は師匠のジェレミー・パパセルジオでした)
年末も3つの演奏会を聴きに行きました。 「アンサンブル・アンテルコンタンポラン」という世界有数の現代曲のオーケストラと、「ル・コンセール・スピリチュエル」と「レザールフロリサン」というフランスの二大古楽オーケストラです。どの団体も日本ではなかなか聴けないです。
現代音楽の方は満員とはいかなくてもかなりの客が入っていて、古楽の方は満席でした。どれも素晴らしかった!!当たり前ですが、クラシック音楽という文化の浸透具合の違いを肌で感じています。現代音楽や古楽というジャンルは、日本では数少ない熱狂的なファンが好んで聴いているジャンルです。個人的に古楽は知られていないだけだと思っていますが。(現代音楽ファンの方がいたらすみません笑)
留学生がこの違いを感じたら、日本に帰りたくなくなるのが普通だと思います。他にも場所、演者の数、演奏機会などにも圧倒的な差があるし。
クラシックは日本の文化ではないのでヨーロッパでのそれを日本で完全再現するのは難しいのかなと思います。
その上で自分はどうするか。
僕は日本に帰るつもりなので、日本でどう追求していけるか、いろいろ思うところはあります。
また今年で帰るのか。もう一年ここで勉強するか。
現状自分は、フランスで多くを学んだ!日本に持ち帰ろう!という状態ではありません。こんなんじゃ日本に帰れない。
ただもう一年勉強して同じことを思っているとしたらと思うと怖いのです。
ひとまず先生無しでも考られる人になるべし、、、
(グラン・パレの前で仲間たちと。珍しい楽器沢山有ったのに全然写真とらなかった)
年が明けたらまた忙しい生活が始まりました。
17日はパリに工芸博物館でバッハ。
18日はグラン・パレでルネサンス、初期バロックの音楽。セルマによるVestiva i coliのディミニューションも演奏しました。ドゥルツィアンのためのソロ曲です。
また25日は大学でハルモニームジークをやります。
この三つのコンサートで、バロック(a=415)、クラシカル(a=430)、ドゥルツィアン(a=440)を演奏することになります。楽器を手に入れられてよかった。けど疲れるー。
31日、1日、2日はバッハの音楽祭でプロの団体に参加します。身内の居ない場所にひとりで放り込まれる現場は初めてです。バッハのカンタータ数曲。芸大で毎週カンタータを演奏していたのは本当に幸せだったのだなあ。フランス人の演奏するバッハは日本とかなりニュアンスが違っていて(特に音の入りがわからない!)戸惑っていますが、それ含めて楽しもうと思います。
長くなったので尻すぼみになってしまった笑
本当は僕の住んでいる場所や、生活についても書こうと思いましたが、それはまたの機会に。
今年もどうぞ宜しくお願いします。