第1回 悪役はいつも己の策略に溺れる~『兎少年‐ホワイト・リバー・スー族』
思い付きなので最後まで出来るかどうかは分かりませんが、青土社から出版されている『アメリカ先住民の神話伝説』という書籍を創作のために読み進めているので、その1話ごとの感想や要点をこちらにメモしておこうと思います。
出典はこちら。
個人的なメモでもあるので内容そのものの引用はしません。
ですので、もしも興味がありましたら、注文したり図書館で探すなりしてぜひその目で確かめてみてください。
さて、そろそろ本題に映ります。
序論や第1部の前書きにも目を通していますが、このお話の中でとくに印象深いのが物語の結末でした。
簡単に説明しますと、ウサギの蹴った血の塊から誕生した人間の少年……「兎少年」が、人間の村でひとりの少女を巡って、悪のトリックスターである蜘蛛男イクトメに悪意を向けられるお話です。
イクトメはトリックスターらしく、大衆を先導し、ありとあらゆる暴力で兎少年を打ちのめそうとするのですが、自惚れが仇となって自滅により敗北し、物語は終わりました。
語り部によれば、悪役はいつも自分の策に溺れてしまうとのこと。
たしかに、嫉妬や悪意を振りかざすあまり、冷静さを失ってしまうということはあるだろうと理解できます。そうして、結局は破滅を迎え、ろくな目に遭わないのだと。
このお話には興味深いキーワードが色々と出てきましたが、もっとも人々が伝えたかったのはここなのでしょうね。
現実の世界では、ひょっとしたら悪人が笑ったまま結末を迎えてしまったケースは多々あるかもしれません。
そんな現実だとしても、人々が求め、子どもたちに教えるべきだと信じるものは、悪しき者の敗北なのでしょう。
悪役は正義によって美しく散ってこその存在。私利私欲であろうと、歪んだ理念による暴走であろうと、物語を書くときの参考にしたいと思いました。
◆今回のメモ
・兎少年
ウサギが蹴った血の塊から誕生した男の子。不思議な力や知恵を持ち、やさしさも持ち合わせていたため、村の美しい少女から恋心を抱かれる。
・蜘蛛男イクトメ
このお話の悪役。医者でもあるらしい。嫉妬深く、人々の悪意を煽動し、兎少年の命を奪おうとした。しかし、自らの策に溺れて死んでしまう。
・死の歌
兎少年とイクトメが物語の中で歌う。兎少年の歌を真似てイクトメも絶望的な死からの復活を試みるが、正しい歌詞を思い出せずそのまま復活できなかった。
イクトメの間違った歌詞の中にも、よこしまな思いが滲み出ているのが面白い。