「宇田川源流」 <現代陰謀説> ドイツ人の元EU大使が「中国のスパイ」というヨーロッパの闇
「宇田川源流」 <現代陰謀説> ドイツ人の元EU大使が「中国のスパイ」というヨーロッパの闇
今週は基本的には大河ドラマの話をしていたので、ニュース解説はほとんど行っていない。
まあ、私個人の話としては、あまり大河ドラマもネタを出しすぎるとなくなってしまうので、三日間くらいの特集の方が良いかもしれないという感じがする。そこで連載はいつも通りに行うこととして、本日は「現代陰謀説」に戻すことにした。
さて、陰謀というのは普段から様々にうごめいているものであり、ここで何度も書いているように、ネットの中で言われているような陰謀は基本的には存在しない。
まあ、何か大きな事件があって、その事件を利用して慌てて陰謀を組むとか、何か対応したのが偶然に大きく動いて、それがのちに陰謀というような形になってしまうというようなことはある。
実際に、歴史で語られるようになって、その時のことを語れば、すべてが仕組んだように見える場合もあるが、しかし、そのようにうまくゆくような話はほとんどないのである。そのことがわからないで、陰謀を語る人があまりにも少なくない。
基本的に情報をいかに集め、その情報をいかに分析し、そして自らの動きのためにどのように利用するかということをうまく行い、それに合わせた工作を行う。そのうえで、それが失敗した場合、露見した場合の「保険」をしっかりと行っておく。これが陰謀ということになる。
まあ、巷で語られているようなものはほとんど少ない。コストや時間をかけて、それに見合うものでなければならないし、また、それだけの効果がなければならない。
適当に誰かを殺したり、あるいは、何らかのことを動かすなどといっても、それだけの効果が発動しなければ意味がない。誰かが死んだりしても、その効果がなければ、陰謀は失敗と判断される。現象に対して陰謀ということを言っていてもあまり意味がない。
そのような「目的的行為論」に基づいて、陰謀をしっかりと解析できない人は、基本的に「陰謀論」に振り回されることになる。中には、そのような陰謀論を語らせることそのものが「陰謀」であることがあるので、十分に気を付けなければならないのである。
さて、今回もなかなか面白い内容になっている。
ドイツ検察、「中国のスパイ」容疑で3人を捜査 1人は元EU大使か
【1月16日 AFP】ドイツの検察当局は15日、中国のためにスパイ活動をしていた容疑で3人を捜査していると明らかにした。メディアによると、容疑者の中には元欧州連合(EU)大使も含まれているという。
ニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)によると、容疑者の1人はドイツの外交官としてベルギー・ブリュッセルの欧州委員会(European Commission)で勤務した後、EU大使として複数の国々に赴任した。他2人は「著名なドイツのロビー会社」で働くロビイストとされる。
検察当局は容疑者らの詳細を明らかにせず、まだ逮捕はしていないと述べた。一方、警察が15日にベルリンとブリュッセル、ドイツ南東部のバイエルン(Bavaria)州と南西部のバーデン・ビュルテンベルク(Baden-Wuerttemberg)州で、3人に関連した住居や事務所を家宅捜索したとのシュピーゲルの報道内容を認めた。
シュピーゲルによると、元EU大使とロビイストの1人には、「私的および営利情報を中国の国家安全省と共有」した疑いがかけられている。もう1人は、そうした情報を「共有する意志」を示すにとどまったとみられている。
主犯格とされる元EU大使は2017年にEUの仕事を辞め、ロビー会社に転職したとされる。その後、他2人をリクルート。同年にスパイ活動を開始したとみられている。
有罪が確定すれば、中国のスパイ活動が露見した希少な事例となる。
(c)AFP/Michelle FITZPATRICK 2020年1月16日 11:26
https://www.afpbb.com/articles/-/3263709
ドイツの検察が、中国のためにスパイ行為をしていた元欧州大使を逮捕捜査している。いずれもドイツ人である。つまり、ドイツ人が「ドイツという国家を売って」中国のために利益を供与していたということになる。
記事によれば、元EU大使とロビイストの1人には、「私的および営利情報を中国の国家安全省と共有」した疑いがかけられている。もう1人は、そうした情報を「共有する意志」を示すにとどまったとみられている。<上記より抜粋>
まさに、中国国家安全省と情報を共有しているということであり、その中には、個々の記事にはないがEUの安全保障や、政治的な問題またはイギリスのブレグジット情報が入っていると、ほかの媒体によって明らかにされている。
なんといっても、「大使」であるのだから、少なくともEUとドイツの関係のことに関してはほとんどの情報が集まっており、その情報を中国は金で買っていたということになるのではなかろうか。
さて以前より、それも戦前からドイツと中国はかなり親しい。これはある意味で「国民性が似ている部分がある」ということを意味しており、その国民性により他の国から孤立化してしまうということからその内容が出てきているのである。
このように書くと「几帳面で勤勉なドイツと、いい加減な中国とが似ているはずがない」というかもしれないが、少なくとも国民性というのはその部分だけではないので、一面で似ていない部分があったとしても、そのことだけで国民性が似ていないというような判断をすることはできない。
日本人は、普通にレッテル貼りをして、そのイメージから抜け出して物事を判断することができないので、このような「多様性を持った見方」ができず情報などがうまく入ってこない状況があるのだが、実際に、本人たちが重要視していること、価値観を共有してその内容を見てゆけば、似ているということも見えてくるのではないか。
そのうえで、「似ている部分」をうまく強調し、そこに金銭上の利益を組み合わせると、「大使」というような要職にいる人間も落ちてしまうということになるのである。
さて、この大使がスパイであったということをより一層解析すれば、一つは「大使が持っていたまたはアクセスできていた情報を中国が入手した」ということであり、そのことで、「弱みを握ってヨーロッパを動かす」のか「ブレグジットを中国政府の有利なように動かす」のか、あるいは、「一帯一路の協力をさせる」のかはわからないが様々な情報を得ることができたはずだ。
一方、ドイツの中では「EU」が非常に大きな比重になってしまい、ドイツ人の中に、ドイツ人としてのナショナリズムが欠如してしまっていることがわかる。
大使のような要職に就く人やロビイスト会社の人々、つまりドイツの政治を左右するような人々が、簡単に買収されてスパイになってしまうということは、そこにナショナリズム的なプライドが少なくなっているということであり、そのプライドを失った国民が全くおかしなことになってしまうというような感じになってしまうのである。
つまり、片方で人間個人が弱いということもありまた国民性が似ているということもあるが、その事件から、EUという国家連合体が、国家そのものに及ぼす悪影響が見えてくる。そして、陰謀としてこの時期にこのような事件が発表されるということは、まさに、「中国がEUという連合体を必要としなくなってきた」ということも見えてくるのではないか。
まあ、これらの答えは歴史が教えてくれることになる。