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第5回 世界の昔話を彷彿とさせるちょっと残酷さもある話~『石の少年‐ブルーレ・スー族』

2020.01.25 15:00

今回のお話は石を飲んだ少女が身ごもって産んだ少年が活躍するお話。

世界各地の昔話にあるような人食いの老婆が出てきたりして、アメリカ先住民らしさもありながら、どことなく小さい頃に怖がったおとぎの世界の残酷さがあって非常に興味深かったです。

出典はこちら。

お話の導入は、5人の男兄弟と一緒に暮らしていた少女が、狩りに出たまま一人また一人と行方不明になってしまったことに絶望し、石を飲んで自殺しようとすると、代わりに男の子を出産したという色々と勘ぐってしまう内容でした。


ともあれ、少女は男の子をひとりで育てるのですが、成長した彼――〈石の少年〉は、おじたちのように狩りに出かけてくるようになり、そこで老婆に出会います。

この老婆が実は人食いで、おじたちは犠牲になっていたという衝撃の展開が待ち受けますが、少年はこの老婆を倒し、石たちの言葉を聞いておじたちを復活させるというハッピーエンドで物語は終わりました。


これを読んだ後に気になって調べてみたのですが、スー族の占い師はユイピの儀式という祈祷のようなことを行うようです。

石と犬がキーワードとなるもので、このうちの犬の方は犬が好きな人は知らなくていいようにも感じる儀式でもあるのですが、石の方はこのお話との繋がりも感じました。


そういえば、石を神聖視する価値観ってどこから来たのでしょうね。アメリカに限らず、色んな地域で不思議な石の話は古来より残っていると思うのですが、これは大昔の人たちが石を使って暮らしていたことに由来するのでしょうか。

何にせよ、不思議な形の石があると特別な思いを抱くのは共感できるのですが、その石がまさか男の子になるなんて。


あともう一つ、人食い老婆が出てくるのも面白いですよね。

世界の昔話って何故か人食い老婆がいるんですよね。山姥もそうだし、西洋の昔話でも、たとえば『眠り姫』に出てくる義母が嫁と孫たちを食べようとするし。

何かの隠語なのか、はたまたナチュラルに食べていたのか……。色んな世界で共通しているところが不思議で、それだけに興味深かったです。


◆今回のメモ

・石の少年

ある日突然、兄弟たちを失った少女が悲観して石を飲み込んだことで身ごもり、生まれた男の子。成長が早く、勇敢で、石の言葉を聞いておじたちを復活させる。

・老婆

人間を食べる。

『アメリカ先住民の神話伝説』(R.アードス、A.オルティス編 松浦俊輔、西脇和子、岡崎晴美ほか訳 1997 青土社)