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鍼灸(専門)の続きです

2020.01.24 00:37

昨日の続きです。


首と顔面部は近いところにありますが、反応は全く違います。

また前頚部の左リンパ系の反応がありました。リンパ系に炎症反応があったのだと思います。

最近、風邪の人が多いのでリンパ系の炎症反応は多くみられます。

この炎症反応は風邪をひいてもでます。免疫と深く関係するからだろうと思います。

リンパ系の炎症反応を狙っても効果がでるということを意味しています。


もちろん、それだけで治療が終わってしまう場合もあれば、そうでない場合もありますが、季節の影響を受けて肉体が変化しているからだろうと思います。まぁ範囲は限定的です。


症状は後ろ側なのに、全体に影響する反応は、首から顔面部の前側です。 この違いを診断するというのは、とても重要です。

TL(セロピーローカライゼーション)すればよくわかります。顔面部に手をあてると肩や腰、足等の全身に影響が行きわたり全体が緩むということです。

後頚部にTLしても変化はありません。これで全身に影響を与えている場所だとわかります。

しかし、全身に影響を与えているから全てが良くなる訳ではありません。

鍼灸治療で言う治本法だけで全てが治ってしまう訳ではないということですが、全体を捉える治本法はとても重要です。局所治療を明確にしてくれます。


殆どの鍼灸をされる方は全身の調整は難しく、局所の治療は簡単だと思い込みがちですが、全くの逆です。全体の治療は狙いやすく、局所はかなり複雑なので、治療経脉や孔穴も複数出るのが普通で、その順番も関係します。


それでは、全体の異常反応がなくなると、どこの器官が一番影響を受けているのでしょうか? 

それはリンパ管の「水」「陰」でした。臓腑でいえば肺です。肺は顔面部と近距離にあるので当然臓腑の異常としても考えられると思います。 

全身に影響すると言っても全てが100%良くなる訳ではありません。肩は50%ぐらい、首は20%ぐらい、腰は10%ぐらいというような感じで、それぞれに影響しますが、パーセンテージがあります。 「水」「陰」ということは「水」の流れが滞っていることは間違いありません。


触ってみても左側だけプクプクしています。ここまでの診断なら、全身を触れば感の良い人ならわかると思います。 しかし、ここで問題が発生します。それは顔面部のリンパ系の反応を調整しても、それなりに首の痛みは減りますが、痛みがなくなっている訳ではありません。

つまり痛みがないことを自覚しているレベルではない訳です。


また、この異常は、リンパ管を通って顔面部から首、首から胸(胸管の左側)を通って、下腹部で散在しているような感じです。

また腋窩から左腕の方にも問題がでています。 質を調べれば陽明の風邪反応でした。

全身の反応と言っても、その質を調べると風邪の反応であったりします。風邪の反応は動きが早く出たり引っ込んだりしますから、表面的な反応のように思います。しかし、それが全身に影響を与えている一番の問題だった訳です。

もちろん、風邪のような症状はありません。内在しているので本人は気づかない訳です。


これを調整すると、全体の反応が消失して首の痛みが若干へりました。本当はこの時点で治療を終わっても良いぐらいですが、更に診ていくと、左膝に、「血」「陰」「熱」という反応が胃と関係してあります。

しかも、皮膚と関係しています。 膝の痛みはありませんが、未病としての問題があります。それを調整すると首の痛みが更に減ります。

この反応は局所的な反応になります。局所的な異常反応は、痛む場所ではなく、局所的な反応の出ている部位です。つまり、大きな穴が中心に向かって行くような流れをしている穴の集合体と言えます。

穴は無数にあるので、一般的な経絡の概念とは違います。局所経気の難しさは、こういうところにあります。全体の治療は、一般的な経絡を調整することで、ある程度論理的に解釈することができますが、このような調整は一般的な経絡を考慮してもうまくいきません。

ベテランでも悩むところであり、ベテランでも面倒くさいので、局所の脉診はせず、強刺激で痛む場所に刺激してしまう場合も多々あります。

その方が早いと考える訳ですが、それによる問題も起こりやすくなります。


再度、診てみると、右手の屈側にも局所経気の問題があり、これは、よく調べてみると、右の咽に影響を与えている治標経気となっていました。 つまり、左の首の痛みは、全体から問題になっている部分と左膝の局所の問題、右の咽のあたりは、風邪や局所異常とは無関係に右手から問題になっているという診断ができました。


それを調整すると、左の首の一点だけの症状になりました。 そこで最後左の後頚部から後頭部にかけて、「水」も「血」も無関係な、単独の「熱」の反応があるのに気づきます。

ここで最終的な局所治療が適応になる訳です。 つまり首から後頭部にかけての症状と一致しているということです。

このような例で考えなければならないのは、複数の異常がまたがって首の痛みを出しているということです。そしてそれは激しい症状ではなかった訳です。

意外にこの激しい痛みでない痛みというのが曲者の場合もありますから注意深く観察していくことが大事です。


症状のある部分が、実は、全身からも風邪からも、膝や対側の手の末端からも影響して隠れているということです。この順番どおりに調整をして、はじめて効果を得る訳です。また、これは一つの回答例であり、この回答だけが正しい訳ではありません。

どこの異常からはじめるのかによって、効果と手順に大きな違いがあります。それは術者の身体を読む力によっても変わります。まずは何を問題にするのかという大きなポイントを見逃さないで調整していると、徐々に範囲が狭まって、明確な調整を行うことができるようになってきます。


症状のある場所や緊張している場所が悪くないと言っているのではありません。その段階にないのに刺激をしてはいけないと言った方が適切です。  

その段階になると、自然に症状のある場所の一点だけが単独ででてきます。 このように、治療しながら弁証していくということができます。 質的にどんなものがあり、どこに影響し、その影響は、何と関係があるのか?


中医などの本を読んでいると、まさに全体的な調整を主にして、部分的な問題は、案外サラッと過ぎていくことが多いと思います。 しかし、局所治療は、全体の治療より数百倍難しく、複雑な手順を経ないと診断できません。もちろん弁証をすることを批判している訳でもなんでもなく、そこで終わってはいけないと言っている訳です。だから局所の治療には時間がかかります。

できるだけ、全体観を明確にし、局所の調整をする時間を減らすことが、治療時間の短縮につながります。


絡んだヒモをほどくのに、どこが端なのかを見つけて一つ一つほどいていく手だてを考えるのが全体の調整で、細かく絡んだところは、その端を頼りにして、少しずつ紐解いていかないといけないというのと全く同じです。 

無理やり絡んだところを引き剥がそうとすれば、余計にグチャグチャになって問題を解決することができないということによく似ています。


治療もヒモを解くのも建設的なやり方が大事です。それをぬきにして、目的を達成することは困難です。できないとは言いませんが、時間がかかり過ぎます。 できるだけ短時間で効率良く身体に負担をかけない組立が大事だということです。  


出たとこ勝負にならないように注意深く調整していくことが、時間の短縮にもなり、効果をあげる最も手早い方法だと言える訳です。