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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

最後の皇帝29-皇帝カール最後の希望

2020.01.25 10:46

皇帝カール5世が決めた宗教に関する「暫定措置」は、大部分は受け入れたが、北ドイツ、特にマグデブルクは頑として受け入れなかった。そこで皇帝は、1550年マグデブルク追討を宣言、諸侯に兵と軍資金の拠出を命じた。カールはここで新しい帝国軍を試そうとした、多分軍資金も尽きていただろう。

ここで新教諸侯に押され、総司令官につけたのが「マイセンのユダ」と言われていたザクセン候モーリッツである。モーリッツは、町を包囲し、抵抗が激しいことを理由にいっこうに攻撃を行わない。そして守備側と内密に打ち合わせして、ニセの降伏をすることにした。

もしも帝国の目付をつけていれば小細工は露見したろう。しかしカールは結局人がいいというか、モーリッツの報告をきいて手放しで喜んだのだ。しかし都市との秘密合意では、宗教は従来のままで目立たずにするだけだった。まあ他の都市と同じといえば同じである。

前年に教皇パウルス3世が亡くなり、次に選ばれたユリウス3世はトリエントで公会議を再開することに合意した。カールはトリエントに新教も含め、キリスト教一致が成ることを望み、イタリアに近いインスブルックに宮廷を移した。カールは今度こそ生涯の目的が達成されると思ったろう。

下はインスブルックのフフッガー家のカール5世