HOUSE OF THE RISING SUN
2020.01.25 14:08
人は色んなことを勘違いや思い違いをしながら生きている。
真実が解ったときに、酷く驚愕し、狼狽もする。
イギリスの「アニマルズ」の『HOUSE OF THE RISING SUN』という歌があり、日本では「ダニー飯田とパラダイスキング」というバンドが『朝日のあたる家』という邦題で歌っていた。
♬朝日のあたる家がある
街で一番の古い家なのさ
やさしい顔でおふくろが
俺を育ててくれた家なのさ♬
…… とまあ、ハウジング・メーカーのCMソングのような歌だった。だから、家を建てるときにも、“やさしい朝日のあたるような家”って胸のどこかにあった。
しかし、しばらく経って「アニマルズ」のものをチェックすることがあった。なんと!この歌は不良少年の歌であった。HOUSE OF THE RISING SUNは「少年院」か「孤児院」の施設らしく、そのゴミ溜のようなところで育った少年が、長じて他の町で犯罪を犯し、再びニューオリンズの「刑務所」らしきところへ戻るというブルースなのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=8wb2I3sOdfU
そしてその後に。
たまたま「ちあきなおみ」の『朝日楼』〜朝日のあたる家〜というものにぶつかり、クレジットが<アメリカ民謡:浅川マキ>とある。
れれれ…。Animalsが歌ったからといって、イギリスの歌ってことはないとは思ってはいたが、娼婦の歌だったのか……と困惑気味。
もともと浅川マキが歌っていたものを「ちあきなおみ」がカバーしているもの。日本に〝ディーヴァ〟がいたとしたら、「美空ひばり」とこの「ちあきなおみ」だろうと思う。とにかくうまい。とっくの昔に引退しているのに、彼女のカバー曲を含めてyoutubeで随分聴かれているという。
https://www.youtube.com/watch?v=PEYeDcVcoK4
この歌では男じゃなく女の歌だ。〝貧しさ故に売春婦に身を堕とした女が、妹に私のようになるんじゃないよ〟と歌っている。そして、HOUSE OF THE RISING SUNというのはニューオーリンズの娼館の名前という。エッ!!
そんな「朝日楼」のことを知った後に、たまたま機会があり、ニューオーリンズへ行った。
ニューオリンズ。その名前からしてフランスのオレルアン公からきているし、ルイジア州はルイ14世に因んでいるので、ここはかつて仏領であった。(後年、アメリカがフランスから買収した。)
ニューオリンズの繁華街は「フレンチ・クオーター」という一角にぎゅっと詰め込まれている。そのまた中心は「バーボン・ストリート」。さすがにアメリカを代表するウイスキーの名前かァなどと思っていると、あにはからんや、これが名家・ブルボン家から来ているというのだ。なにからなにまでフランス尽くし…。
そんな新宿歌舞伎町のような猥雑でいかがわしい一帯にジャズのライブハウス、ストリップ小屋などがごちゃごちゃとあり、街の角々には大勢の売春婦、そしてレストランがひしめいている。
ここの料理は「クレオール」(白人とどこかの混血のような意味)とか「ケイジャン」(カナダ来たフランス系アカディア人からの変化した言葉)と呼ばれるが、こちらはその区別はさっぱり分からない。「ケイジャン」の方が黒人料理の趣が強いかなと思うが……。とにかく、評価の高くないアメリカ料理のなかでは群を抜いておいしい。不思議だよね、フランス人の血が一滴でも入れば、料理が格段においしくなるのって。
その「バーボン・ストリート」と目と鼻の先に「プレザベーション・ホール」というニューオーリンズ・ジャズ(デキシーランド・ジャズでもいい)の発祥のライブ・ハウスがあるのだ。「メッカ」「殿堂」という言葉とはまったくウラハラにほんとに粗末なもので、観客のボクのほんの1メートル先くらいの同じ平面の木の床でトランペットとかアコースティックなベースをやっているわけなのだ……。
そしてそこから遠くないところに、その「娼館」はあった。相当に大きな構えで営業していたという。その女主人の名が仏名=マリアンヌ・ル・ソレイユ・ラバーンといい、「ソレイユ」=le soleil=太陽 から"HOUSE OF THE RISING SUN"と呼ばれるようになったというのだ。
また、フランス語かい?
エスプリを効かしているんだろうね?これって。