Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

凸と凹マガジン

凸と凹「登録先の志」No.4:森洋三さん(社会福祉法人いぶき福祉会 法人理事・法人事業部長)

2020.01.27 02:30


「障害者福祉って楽しいな」と思ったことがきっかけ


関東出身ですが、祖母の影響で高齢者福祉がやりたくて、愛知県にある日本福祉大学へ進学しました。高齢者施設へ実習に行ったり、アルバイトもしましたが、介護に追われる中で高齢の方を流れ作業のように扱ってしまう自分が嫌で、心が折れてしまったんです。

そんな時に友だちに紹介され、障害者の親の会がやっているボランティアサークルに参加しました。そこで出会った障害のある子に衝撃を受けました。しゃべれない、すごくよく動く子でした。初めて会った時に話しかけてもぴゅーっと行ってしまう姿にオロオロして、この子はどんな子なんだろうと思いました。だけど、お母さんはすごく愛情を持ってその子に接していて、人間らしくその子を受け止めている姿にひかれました。そこから、障害者福祉に興味を持つようになりました。

その子の家へ行ったり、プールや海へ一緒に行くようになり、初めて笑ってくれたり、手をつないでくれたりして、「障害者福祉って楽しいな」と思うようになりました。そこで、ゼミの選択を障害者福祉にして、大学の恩師にも出会いました。当時は就職が厳しく、特に障害者分野の求人は少なかったのですが、どうしても障害者分野に携わりたくて探していたら、いぶき福祉会(以下、いぶき)が求人募集をしていて受かったので、ここに来ました。

現場での仕事はとてもやりがいがあって楽しくて、ずっと現場にいたいと思っていましたが、3年経った頃に総務の仕事をやるようになってから、ずっと総務を担っています。ただ、やっていることはずっと一緒だと思っています。「何がやりたいかを聴いて、相談して、やっていく」という対象が利用者から職員に変わっただけで、やっていることはずっと同じなんです。

いぶきは利用者や親御さんとも距離が近いから、直接叱られることもたくさんあったけれど、同僚や先輩も含めたみなさんに育ててもらって、なんとかやってこれたと感じています。


「多様性が認められることがよい社会」と胸を張って言えるように


今年度、グループホームを作るための資金2,000万円を、寄付で集めることになりました。

「困っているから助けてほしい」ということで、これまでも何回も先輩方が何千万円と集めてきました。これまでは地道な取り組みを重ねて、根性でなんとか集めることができました。このすばらしいがんばりが多くの共感を生み、今のいぶきがあります。

しかし、今は困っている人がたくさんいるので、「困っている」と伝えるだけではお金は集まりにくくなっています。組織も大きくなり、寄付募集の未経験者が大半を占める中で、今までのやり方だけではつらさだけが先行し、幸せをつくるはずの寄付募集が不安・不満をつくる活動になってしまう恐れがありました。今回はみんなが前向きに取り組むことも大切だったので、寄付をすることでどんな社会をめざすことになり、その仲間になってほしいと頼めるように、共有できるストーリーを考えました。

ぼく自身は、「多様性が認められることがよい社会」と胸を張って言えるための活動だと思うようになりました。なかなか理想と現実のギャップは激しく、集まった金額も今回が最も少なかったですが、いぶきの転換期になる活動だったのではと感じています。

多様性が認められた方が、みんな働きやすいし、過ごしやすい。いぶきはその象徴ではないかと思っていて、まずはいぶきを知ってほしいと願っています。ストーリーでうまく伝えることもまだまだできていません。その努力をしていかなければ、と思い始めているところです。


せっかく生まれてきたからには、輝かしい人生を過ごしてほしい


活動の原動力は、今いる当事者の人たちです。いぶきには、ぼくが働いてきた20年間を一緒に過ごしてきた人たちがいます。何気ない日常でも、たくさんの思いがあふれていて、精一杯生きている時間をともにしていると、とても感情を揺さぶられます。今を生きている彼ら・彼女らを後回しにできないなと感じます。

現状ではグループホームができないと地域生活が成り立たない。そんな人がたくさんいます。地域の中で暮らし続けることを支えるために、グループホームを建てたいという思いを強く持っていますし、ホームに入る以外の選択肢も支えていけるようにしていきたいと考えています。

今は最低限を支えている状況なんだと思います。ホーム以外の方策も考えることが、地域の人に知ってもらうということと結びつくと思っています。

一人ひとりに人生を輝かせてほしい。彼・彼女たちの思いを一つひとつ実現していきたいです。せっかく生まれてきたからには、輝かしい人生を過ごしてほしいですから。


取材者の感想


森さんのお話を聴いていて、障害者福祉の道に進むきっかけとなった障害を持ったお子さんと、その子をやさしく見守るお母さんの姿がなんとなく目に浮かぶ気がしました。

現場が楽しいと思って入職したのに、たった3年で現場から離れてしまうことになったら、私ならやっていけるか不安になってしまう気がしますが、森さんは「やっていることは同じだから」と前向きに捉えられていて、感銘を受けました。

「多様さを認められる社会にしたい」という思いは、以前インタビューさせていただいたいぶき福祉会の北川さんと共通する部分で、共有された価値観として組織の中に存在していることが感じられました。(長谷川)


森洋三さん:プロフィール


社会福祉法人いぶき福祉会 法人理事・法人事業部長(施設長)

東京で生まれ、埼玉と東京で過ごし、福祉を学ぶために大学へ進学する。在学中に障害児と出会い、その魅力にひかれて障害者福祉の仕事を志す。1999年に社会福祉法人いぶき福祉会へ入職。以後、現場責任者をしながら公益的事業、人材育成、商品開発など、法人総務を担当する。




社会福祉法人いぶき福祉会は、凸と凹「マンスリーサポートプログラム」の登録先です。