中学校のとある英語の授業
次の中学校のとある英語の授業のマンガを見てください。Aさんの困り感は何だったと想像できますか。
マンガの3コマ目からAさんが困っていたことが分かりますね。では,何に対して困っていたのでしょうか。「みんながなぜ笑ったかがわからないから?」,「教室が騒がしくなったから?」,それとも「急に先生が変わったから?」いろいろな理由が考えられると思います。
では,Aさんの困り感は何だったのでしょうか。Aさんにこの授業の後に理由を聴くと「発音が下手なので,この人は先生ではない」と答えました。
つまり,Aさんにとっては「英語の先生であれば,発音が上手なはず」という意識が強いそうで,英語に自信のあったAさんにとってみれば,「ぼくよりもアクセントが理解できていない。発音が下手だ」という理由で「英語の先生として認めることができなかった」ことがAさんにとっての困り感に繋がっていたのでした。
ところで,この場合において,このAさんにとっての困り感は「英語の発音」にありましたが,このマンガのような場面ではすべての子どもがこのような困り感を持っているとは限りません。
つまり,たまたまAさんにとっては「英語の発音」でしたが,別のBさんにとってみれば,「みんながなんで笑ったかがわからない」ことが困り感かもしれませんし,「急に先生が変わったこと」が困り感かもしれません。
大切なことは先生や周りの人が困り感について考えることだと思います。
ここでは,さまざまな場面での子どもの困り感とその理由について紹介しますが,実際にあった体験をもとに作成しています。つまり,個別のケースの一例ですので,別のケースもたくさんあります。というより,ここに紹介できるケースがごく限られた一部です。繰り返しになりますが,大切なのは「困り感」について周りが考えることだと思います。
では,話をAさんに戻します。Aさんは「自閉症スペクトラム」があり,急な変更が苦手なのに加えて「こうあるべきだ」という思い込みが強い性格です。 もしかしたら,マンガを見る前に,「Aさんには自閉症スペクトラム障害がある」と知っていれば,困り感もAさんが感んているものに近づいたかもしれません。しかし、それは教師や周りの支援者が自閉症
スペクトラム障害について知識を持っているからこそ分かることなのです。