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モイーズのソロ初録音

2020.02.01 07:00

 モイーズのソロ初録音は1927年で「ヴェニスの謝肉祭」「アルルの女~メヌエット」だということは有名な事実なのですが、これは完璧じゃない。確かにこの2曲が収録されたフランス・グラモフォンのSP盤は大変なヒットで、世界中で売れたらしい。しかし、実はこの録音は4面がセットで行われています。それは、

グルック/オルフェオとエウリディーチェ~精霊の踊り BFR438-1△

ビゼー/アルルの女~メヌエット           BFR439-1△

ヘンデル/ソナタ~メヌエットとアレグロ       BFR440-1△

ジュナン/ヴェニスの謝肉祭             BFR441-1△

 この4面なのですが、曲名の後ろにある記号はSP原盤のマトリクス番号で、レコード会社が原盤を管理するためにつけている通し番号。ということは、最初に録音されたのはグルックの「精霊の踊り」(この曲もモイーズの十八番だったらしい)だということがわります。

 番号のハイフンに続く数字はテイク番号で、1曲を何回か録音した場合に「何回目の演奏か?」を管理するものですが、全部テイク1ですね。さすがモイーズというか....。その後ろにある△は電気吹き込みのカッティングマシン(レコードの溝を刻む機械)の種類を表していて、この△は初期の型で、後期(1930年代半ば頃)は□のマークを、コロムビアの場合は初期がw(○の中にW)、後期がC(○の中にC)を記していました。

 SPのカップリングはグルックとヘンデル、ビゼーとジュナンがそれぞれ裏表となって発売されました。ひょっとすると、発売はビゼーとジュナンの方が先だったとかいうことも考えられますね。絶対こちらの方が売れますものね。こういう「売り」を考えたカップリングの技みたいなのは、この当時からあったようで、タファネルの「アンダンテ・パストラールとスケルツェッティーノ」がなぜか2枚に分かれて発売されていたりすんです。なんてことしてくれるんでしょうねレコード会社さんは。

 なんか、ずいぶんオタクなことを書いているようで恐縮ですが、僕はモイーズのSP盤を入手すると必ず盤面中央付近の、このマトリクス番号を見ます。ここからは色々な事実がわかるからです。他に、例えばどこの国で録音されたのか?とか、日本の盤だと何年頃にプレスされたものかがわかる場合もあります。特にフランス・コロムビアの盤は通し番号がわかりやすく、ずいぶん長い期間に渡ってその前後関係がわかるので、おおよその録音年代を番号から特定することも可能です。いずれ、その辺のデータもご紹介したいと思っています。

(1999年2月6日室長Kirio)