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#新観光立国論 - #デービッドアトキンソン

2020.02.01 15:48

「BOOK-SMART」様よりシェア、掲載。ありがとうございます。感謝です。

『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

——イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」』

 2014年、訪日外国人数が過去最大の1,300万人を超え、2020年東京オリンピック誘致成功とともに大きな話題を呼んだ。その文脈で「観光立国」や「おもてなし」という言葉が注目されたのも記憶に新しい。では本当に日本の「おもてなし」は巷間言われているほど世界に認知され、日本は観光大国として存在感を示せているのだろうか?

 本書では、そうした楽観論へ異を唱え、人口減少・高齢化を迎える日本がこれから歩むべき観光戦略を真正面から論じている。著者はオックスフォード大学で日本学を専攻し、外資系証券会社アナリストとして活躍後、日本の文化財修復を手掛ける小西美術工藝社の経営に転じた異色の経歴を持つ。それゆえデータを元に説得力ある内容が展開される。

 本書によれば、観光立国には「気候」「自然」「文化」「食事」の4条件が必要で、日本はこれら全て満たす稀有な国だ。しかし、観光立国という意味では、観光客数は世界で26番目であり、アジア諸国のなかでも低い位置にいる。問題は観光をビジネスとして捉え、適切な客に適切なサービスとインフラが整備できていない点にあるという。

 真の意味で国際対応していない「おもてなし」だけでは、世界の観光ビジネス競争では勝てないのだ。客観的な日本の強みや弱みを活かした観光戦略が理路整然と説かれ、観光産業やサービス業関係者だけでなく、マーケティングや戦略立案に携わる方にも気付きが多いはずだ。日本経済の希望の書として、また日本文化論としてもぜひご一読頂きたい。

日本人だけが知らない「観光後進国」ニッポン

 人口が右肩下がりで減っていく日本で、事実を客観的に分析すると、GDPを大きく成長させていく方法はそう多くはない。その有力な1つが、人口減を補うほど多くの外国人観光客を受け入れる、つまり「観光立国」の道を歩んでいくということだ。

 実は日本という国は、世界でも数少ない「観光大国」になりえる国の1つである。