【広島県】竹原(竹原市)
広島県中央部、瀬戸内海に面した竹原は江戸時代に干拓による塩田開発に成功したことで富を蓄積、加えて廻船業や酒造業で繁栄したことで、町人文化も隆盛を極めた。
旧市街地の本町を中心に、江戸~明治期の本瓦葺・塗屋造の町家が連続し重厚かつ繊細な街並み景観を保ち続けている。
*昭和57年重伝建指定。
【広島県】竹原本町「竹鶴酒造」(竹原市)201207
入母屋・妻入り・黒漆喰が連続する竹鶴酒造はもともと万治年間に製塩業を開業した「小笹屋」で、酒造業を始めたのは享保18年。
「マッサン」のモデルでニッカウヰスキーの創業者・竹鶴正孝の生家でもある。
【広島県】竹原本町(竹原市)201207
町並み保存地区の中程高台には西方寺があり、その石段を上った先の山門前からの眺望がよい。
重厚な甍が重なり合いながら並ぶ光景は圧巻である。
2016年3月に石段下左側の町家が火災に見舞われ焼失したらしく、この眺望を撮ることは叶わなくなっている。
【広島県】竹原本町「西方寺普明閣」(竹原市)201207
この地はもともと禅寺の妙法寺があったが、慶長7年に火災で焼失し、その跡地に移ってきたのが浄土宗西方寺である。
その本堂横にそびえる普明閣は宝暦8年建立、かつての妙法寺の本草「木造十一面観音菩薩像」を祀っている。
京都の清水寺を模した舞台造りで、そこから竹原市街を一望できる。
普明閣から望む竹原市街の眺望
【広島県】竹原本町「日の丸写真館」(竹原市)201207
町並み保存地区の入口に建つ木造3階建ての「日の丸写真館」は、昭和7年頃築(国登録有形文化財)。
竹原が舞台のアニメ「たまゆら」に頻繁に登場した建物。
この辺りは塩を船で運び出す船着き場で、その名残として雁り木や常夜灯、海上交通の神様である「住吉神社」が残っている。
【広島県】竹原本町「胡堂」付近(竹原市)201207
竹原本町通りの北端突き当りに見える「胡(えびす)堂」。
その名の通り、商売神「恵比寿様」を祀り、江戸時代後期に建立された。
大林信彦の映画「時をかける少女」にも登場することでも知られる。
右手には頼山陽の祖父である頼惟清の旧宅が見える。
【広島県】竹原本町「旧町立図書館竹原書院」(竹原市)201207
本瓦葺・塗屋造の街並みにあって異彩を放つ下見板張りの洋風建築は、昭和4年「町立図書館竹原書院」として竣工されたもの(国登録有形文化財)。
竹原は製塩や廻船・酒造など商業とともに文化面でも繁栄し、多くの儒学者や医者を輩出した。
中でも頼山陽の父・頼春水は郷宿を開学、その流れをくむ形で明治43年に図書館「竹原書院」が設立される。
建物は昭和4年に竹原町立に移管されると同時に竣工されたもので、昭和46年まで市立図書館として、現在は「竹原市歴史民俗資料館」として利用されている。
【広島県】竹原本町(竹原市)201207
通りに沿う町屋は2階建て、切妻平入、瓦葺きの漆喰塗り大壁で、大半は江戸中期から明治期にかけて建てられたものである。
町家一階の正面は出格子、平格子で特徴づけられ、各戸で意匠が異なる。
メインの本通りに並行した脇の通りは微妙にカーブしており、「景観の連続性」(シークエンス)を感じ取ることができる。
【広島県】竹原本町「西方寺」参道口201207
普明閣がある西方寺への参道口に残る建物は、明治4年に建てられた旧竹原郵便局だが、郵便局としての機能は同7年からで(~昭和9年)、その前は上吉井邸という町屋だった。
向かいには元禄3年築で塩田開発で富を築き、広島藩の本陣でもあった本家の「吉井邸」が残る。
手前に見えるお好み焼きの店が入る「ほり川」は大正8年創業の醤油醸造蔵を利用している。
明治4年築の旧「竹原郵便局」(旧「上吉井邸」)
【広島県】竹原本町「松坂邸」付近201207
重伝建地区を代表する「松坂邸」は文政年代の築で、唐破風の屋根と虫籠窓が特徴の商家。
製塩業と醸造業を手広く商い、往時の富の高さを物語っている。