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【鬼滅の刃小説】童磨恋蓮(3)

2020.02.08 05:25

コミックス19巻読みました!!!!!


あああああ神よ…!

大正コソコソ童琴話!!!( ;∀;)最&高!!!


もっと色々語りたいし続きも気になるし本誌読みたいしwww


まいいや、とりあえず僕の童琴妄想は、今回の19巻をもってさらに加速するような内容だったので、変わらず突っ走ることにいたしますw



ということで、


当方コミックス19巻既読。本誌は読んでません。


19巻までのネタバレはあるかもしれませんのでご注意を。




無惨様に初めてお会いしたのはいつのことだったか。



鬼になれば、それまでの記憶の大半を失ってしまうと言われているが、童磨はほとんどのことを覚えている。


詰め込まれた記憶をかき混ぜると、ふわふわと浮上するように昔の出来事が蘇ってくることを知っていた。



しかし、人間だった頃の記憶と、鬼になってからの記憶。どちらも童磨にとっては大差ない。

実際、やっていることもほとんど変わらなかった。変わったといえば、食べ物の代わりに人間を喰らうようなったことと、太陽の下に出れなくなったこと。しかしこの変化すら、童磨にとっては大したことではなかった。


毎日毎日、寺院の奥で愚かな人々の嘆きに耳を貸しながら、己の責務を全うし続ける日々。外に出ることはほとんどない。子供の頃すら、外遊びしたことが一度もなかった。ため息が出るほど退屈ではあるものの、苦痛に感じたことは一度もなかった。



「教祖さま、見てください!」


ふと顔をあげると、琴葉が木の枝を得意気に掲げて持ってきた。

「なんだい、これ」

すると、琴葉はにこにこしながら「木蓮です」と笑った。

見ると、枝には紫色の大振りな花がいくつも蕾をつけていて咲き始めている。

「もう春ですね。これからもっと暖かい季節になりますよ」

琴葉はそう言ったが、何故この枝を持ってきたのか、童磨には分からない。

「ふーん」と相槌をうって見返すと、琴葉はまったく気にしない様子で言葉を続けた。

「教祖さまは毎日お忙しく過ごしておられるでしょう。お外に出て息抜きをする間もないくらい。だから、少しでもお心が癒やされるように、季節の花を持ってきてみました」

「心を、癒やす?」

童磨が聞き返す。

「はい!お花は人の心を癒やしてくれます。ただただ美しく、何の見返りも求めず、そこにあるだけ。時期がくれば萎んでしまう儚いものでもあるけれど、心を豊かにしてくれます」


そう言って、琴葉はしばらく、咲き乱れた春の花をとっかえひっかえ見せに来てくれるのだった。



極楽教は慈善活動として、事情があって帰る場所をなくした者たち、特に女性を手厚く保護している。

琴葉もそんな娘の一人だが、こういった娘たちの出入りは案外激しかった。若くて美しい娘であるほど、生きていく方法は色々ある。良い男に見初めてもらえば幸福な家庭も築けるかもしれないし、最悪でも、花街に身を置くことだってできるだろう。正式な信者でもない彼女らは、極楽教が嫌だと思えばいくらでも出ていける。それぐらい緩い環境なのも、入れ替わりが激しい所以だとされている。だが…


「女は栄養価が高いから」


優しい笑みを浮かべながら、彼女たちを喰らう者がいることなど、誰が想像できるだろう。仮にそんな想像ができるほど知ってしまった者たちは、


「殺してしまうんだけどね」


クスクスと楽しそうに笑う童磨こそ、万世極楽教の教祖にして、人を喰らう鬼だった。


普通の鬼は理性を失い、人間の頃の記憶も失い、獣より獰猛で狡猾な人食いとなるが、童磨ほど位の高い鬼になると、巧妙に人食いの事実を隠しながら人間の社会で蠢いている。特に童磨は、女を好んで殺して食べる鬼。心配する家族のいない娘ほど、都合の良い食材はない。

琴葉も勿論、最初は取って食らうために側に置いていた娘だった。



「教祖さま、見てください!」


今日も駆け込んでくる琴葉の足音が軽快に廊下を走る。


「今日はなんの植物だい?」


琴葉がたくさんの草花を持ってくるので、すっかり植物に詳しくなってしまった童磨。いつもニコニコと笑いながら聞いていたが、それらを知ることに何の意義があるのかは理解できない。


「クチナシが咲きました!」


彼女の手の中を見ると、白い花が凛と咲いている。

「もうすぐ夏が来ますね。今は雨が多いけれど、クチナシは元気に花を咲かせていますよ。それにほら…」

彼女が花を差し出すと、ほのかな香りが鼻をくすぐる。

「良い香りでしょう??」

コロコロと笑う琴葉は今日も無邪気で、そして無防備だ。


そろそろ頃合いかな。


童磨の虹色の瞳が禍々しく光を帯び始めた。身寄りのない娘を食うのになんの躊躇もなく、そのときの気まぐれで娘が決まる。


彼女たちは可哀相な子たちばかりだった。

貧しくて家族に売られた娘もいれば、夫や家族からの暴力に耐えかねて逃げ出した者、家族の死により、家を追い出された者…一度住む場所を失った女たちは、基本的に生きる場所は残されていない。幸せな過去を持つ娘ほど絶望する。

辛い、苦しい、悲しいと、生きることに希望を失った彼女たちは、童磨に救いを求めてやってきた。


「いいよ。俺がその苦しみから解放してあげる」


若く美しい娘だからこそ、そんな悲痛な顔をさせるには忍びない。君たちは若く美しいまま、俺の身体の一部になったらいいんだよ。そしたらもう苦しみも悲しみもなく、永遠に楽しく暮らせるだろう。



童磨は立ち上がり、クチナシの花を掲げながら幼子に語りかける琴葉に、音もなく近寄った。


指切りげんまん お花がお花が 咲きました

きれいな 白い お花です

香りも とっても いいでしょう


琴葉はいつも指切りの歌を歌っていたが、毎回歌詞が異なっていた。しかも、いつも明るく、楽しげな歌だ。彼女の歌声からは、生い立ちに似合わず悲壮感が少しも含まれていない。


「あら、教祖さま。どうかされました?」


琴葉が振り返ってにっこりと微笑んだ。


「…琴葉。君は今、幸せかい?」


童磨が問うと、琴葉は迷うことなく即答した。


「はい、とても幸せです」


お優しい教祖さまがいて、一緒に生活してくれる信者の方たちがいて、かわいいかわいい伊之助がいて、私はこの上もないほど幸せ者です。



それを聞いた童磨は結局、その日、琴葉を喰うことができなかった。


「困ったなー。哀れな娘を救ってあげるのが俺の仕事なのに、琴葉は苦しくも悲しくもないみたい。」


そして、琴葉を喰うことができない理由は他にもありそうだった。



「琴葉は花みたいなんだ」


ある日、童磨はこのように言った。


「君は花を癒やしだと言ってたよね。ただ美しく、何も求めず、そこにあるだけ。君は花のように癒やしてくれているんだね。俺が今までずっと不思議に思っていた感情は、きっとこれだ」


胸の奥につっかえていたような疑問が解決した、と満足げな童磨だったが、それを聞いた琴葉は見る間に顔が真っ赤になった。

「教祖さまったら、そんなこと…」

と言いかけたかと思いきや、くるりと背を向けてすごい勢いで走り去っていく琴葉の背中(とおぶわれた赤子)を、童磨はきょとんと見送った。

彼女が何故あんなに赤くなったかは分からなかったが、何故彼女を喰らおうとする自分の腕が、毎回途中で萎えてしまうのかを理解した。


「琴葉は美しく、心も綺麗で癒やされるんだ」


しかも、彼女はいつも日の光の匂いがする。


いつだったか、光の届かない寺院の奥から、開かれた扉の向こうに琴葉を見た。外は快晴。目を覆いたくなるような光の中で、自由に動き回る彼女は本当に美しく、まるで屏風の中の絵みたいだった。

対する童磨は、穴ぐらから恨めしそうにその光景を見つめるだけで、決してその手は届かない。それでも無理やり手を出そうものなら、その手は見る間に崩れてしまう想像が頭をよぎる。


光。それは永遠を生きる鬼にとって死を意味する。琴葉の存在は本能的に避けたくなるほど恐ろしい存在、というわけだ。その割には、彼女の存在は不快ではないけれど。


「まあでも、恐怖なんて感じたことないからなぁ俺は」


ケラケラと笑いながら、童磨は自分を客観視した。


結局童磨は最期まで、自分の感情をうまく感じ取ることができなかった。

ここでもう少し、琴葉の存在が近くにあり続けたら、このときの感情に名前をつけることができたかもしれないのに。





もうちょっと続きます。