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Botanical Muse

ノースリーブの資格

2020.08.17 08:09

ロマンティックなハプニングを予感させるようなくちなしの花が香り立つころに、カッコいいデニムを買った。ドメスティックブランドのそれは、シャープなシルエットが基盤となっているのであるが、そのデニムはゆったりとしたサイズ感で、他のアイテムの中で異彩をはなっていた。


いくら私でもこのサイズならブカブカだわ、と試着したところ、ぴったりではないか。それどころかボタンをはめるのにすごく苦労した。色違いの同じデザインのものもある。

「両方いただくわ。この形のデニムって、すごく重宝するんですもの」

このとき私は、自分がすごい勢いで増量することをまだ知らなかった。


そしておととい、私はついにそのデニムをはいた。パツパツ、なんてもんじゃない。後ろを見ると、太ももの肉がくっきり出るぐらいくい込んでいるではないか。おまけにヒップが直線的ですごくみっともない。


詩「運命と宿命」

もしデブが私の宿命ならば、甘じてそれを受けよう。

宿命と運命とは違う、と言ったのは誰だろう。

デブは運命と思いたい。運命は変えられるのだ、きっと。

少女のころから、ずっとなじみだったこのカラダの重みは、時には軽くなり薄くなる。

失恋した時には消滅したこともある。恋も運命と同じように、デブも運命に違いない。

だから運命が、私にどれほどの肉を与えても、いつか笑顔でふり落とそうではないか。


もうあの屈辱を体験したくない。私は再びダイエットをきちんとしようと決心した。昔、美容学校で習った手法を思い出し、自分でマッサージをやってみることにした。たっぷりクリームを塗り、ももの外側の肉をつまみ力を込める。せめてここから始める。そして立ち直ることにしよう。痛いけどこのくらい何だろう。この巣ごもりの時期、この肉を落とすことに専念するのだと私は決めた。


テレビを見ながらもするし、本を読みながらもする。ボディクリーム200グラムは、五日で使ってしまう。

「テレビのリモコンにクリームがいっぱいついているじゃないッ」と皆に怒られるが気にしない。

とにかく朝、仕事の資料を見ながらマッサージ、夜は音楽を聴きながらマッサージ、やり始めるとやみつきになる。わがお肉ながら、こんなに手ごたえがあり、ものすごい量のものをもみ出すのは面白い。


おかげで太ももがすべすべ。本当にシルクの手触りになった。

女友だちに向かっては「ね、見て見て、触って」と、すぐスカートをたくし上げるような変態めいたことをする私である。が、彼女たちも一様に驚く。

「えー、人間の肌って、こんなにすべすべしてるものなの、信じられなーい」

本当なら男の人に触ってもらい、同じような感想を言ってもらいたいものだ。切に願う。


そしてこのごろは二の腕も強くやるようになった。ノースリーブを着たいからだ。夏はもちろんのこと、秋や冬にノースリーブを着ると女っぷりがすごく上がる。いかにもおしゃれな人、という感じだ。


私は最近、ノースリーブの女の人を見ると反射的に二の腕を見る。

そしてわかった。世の中には私よりもずっと図々しい人がいるという事実をだ。失礼を重々承知のうえ申し上げるが、ちゃんと鍛えていない二の腕を見せている人が結構いるのである。あの人がけっこうなものを見せているんだったら、私だって見せてもいいかもしれないと本気で思うようになったからコワい。

もうすこし脂肪の勢いが弱まったら、私、やるかもしれません。



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