「忠魂納骨塔」。
(あしあと その300・豊平区の44・月寒の12)
月寒西の平和公園にある「北部軍司令部正門門柱」の左脇に、白御影石でできた大きな石碑が建てられています。
その碑面には「月寒忠靈塔 参道」と大きく刻まれ、その左に小さく「月寒忠靈塔 奉賛會長 井川伊平謹書」と添えられています。
碑の背面には、「昭和三十八年九月二十二日建之」に続き、「寄進者」として「札幌彰徳会 井川伊平 岡川文雄 黒澤和雄 澁谷清人 田中政士」と刻まれています。碑銘を揮ごうした井川伊平は、大正12年に札幌で弁護士を開業し、その後札幌市議から道議を経て参議院議員を務めた人物です。
この参道を示す碑から公園内に入ると、「北部軍司令部正門門柱」の間から真正面の奥に、「忠魂納骨塔」と大きく刻まれたコンクリート製の建造物が見えてきます。老朽化が著しいこの塔は、周りを工事用の柵で囲まれて、台座の部分から足を踏み入れることはできません。
忠魂塔の背面には内部に入るための鉄扉が設けられ、その上部には
「忠魂納骨塔由來
惟フニ我カ聯隊ハ創設以來既ニ三十有四年ノ星霜ヲ經タリ其ノ間精忠雄節ノ將兵ニシテ身ヲ以テ國難ニ赴キ戦傷病歿セシモノ其ノ芳骨今ヤ實ニ一千餘體ノ多キニ上ル其レ皆生キテハ國家ノ干城死シテハ護國ノ神霊トシテ軍旗ノ光彩ト共ニ永ク後人ノ敬仰スルトコロナリ是ヲ以テ其ノ遺績ヲ偲ヒ其ノ神霊ヲ慰メンカ為ニ忠魂納骨塔ノ建設ヲ企テ廣ク官庶ニ計ルニ賛ヲ得ルコト十数萬ニ達シ國民銃後ノ赤誠溢レテ茲ニ其ノ實現ヲ見ルニ至レリ嗚呼忠勇ナル我カ先輩將兵ノ義烈ハ是レ即軍人精神ノ亀鑑ナリ其ノ勲蹟ヲ敬慕スルノ士ハ須ラク塔前ニ額キテ先人ノ偉功ヲ壯トシ禮ヲ以テ忠勵ノ誠ヲ誓フへシ
昭和九年二月三日 歩兵第二十三聯隊長 永見俊徳」
と刻まれています。
平和公園には、かつて帝国陸軍第7師団歩兵第25連隊が駐屯する北部軍司令部の敷地が広がっていて、陸軍兵士の戦没・病没者を供養する墓地が設置されました。この塔は、その慰霊のために建てられたものです。
陸上自衛隊真駒内駐屯地内にある駐屯地資料館には、忠魂納骨塔の写真とその由来文が掲示されていて、そこには
「月寒忠霊塔
昭和9年、時の聯隊長永見大佐が歩兵第25聯隊戦没者の遺勲を永遠に奉慰顕彰の目的で建設され、同年4月27日除幕式を挙行した。」