Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

【鬼滅の刃小説】童磨恋蓮(4)

2020.02.15 21:00

あああああ随分時間が経ってしまった…


とにかく脳内は童琴です(笑)



でもさでもさ、19巻は他にも見所目白押し!というかヤバイよね!!!!

(ここからネタバレ注意!)





噂のオバミツ、ちょっと垣間見えてdkdk(*ノェノ)キャー


それから、無一郎、玄弥の刻まれ方が凄すぎて震えました…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


ここは本誌派の皆様がTwitterで絶叫していたので、なんとなく知ってはいたのですが(我慢できなくて皆さんの呟きを追っていった…)


ヤバイっす…。


あと続々と出てくる兄弟の話…_| ̄|○ il||li


兄と弟の話がヤバイです。←ヤバイしか言わないwww

上弦の壱さんのことも、Twitterで色々知ってしまっている俺…


泣くしかない…(´;ω;`)ブワッ




ということで、

話は尽きないですが、ようやく終わりが見えた妄想話です。


字数がかさばるのでさっそく参りましょう!



「琴葉。見て見て」


珍しく童磨から琴葉を呼び出した。いつもは呼ばなくても琴葉の方からやってくるのだが、今日は彼女に見せたいものがあるのだ。


「教祖さま、なんでしょう」


赤子を抱えてやってきた琴葉は、広間の真ん中に置かれた見事な鉢に目を奪われた。


「まあ、これは?」


桃色の独特な形をした花が、綺麗に並んで咲いている。見たこともない花だった。

「これはね、コチョウランというらしいよ」

童磨が答える。

しげしげと花を見つめる琴葉の横で、童磨はさらに続けた。

「ある信者がくれたんだ。とっても高価な花らしいけど、俺は世話をしきれないからさ、琴葉にあげるよ」


それを聞いて、琴葉は軽く震えた。どうしたんだろうと思って顔を見ると、また頬が赤く染まっている。

「こんな高価な花…私、もらっていいんでしょうか…?」

「いいよ」

そして童磨はさらに言葉を連ねる。

「ねえ琴葉。ここにいる人はね、ずっとここに居続けるわけじゃないんだ。いつか皆いなくなっちゃう。だから俺はずっと一人ぼっちだったんだけど、琴葉はこれからもずっといてよ。」

最後の言葉に、琴葉は目を見開いた。

「赤ん坊が大きくなっても、琴葉がおばあさんになっても。俺は、実は普通の人間とは少し違って、だから君よりずっと長生きになっちゃうんだけどさ、君が可愛いおばあさんになったところも見てみたいなって思うんだ」


琴葉がこのとき、童磨の言葉をどれだけ理解できていたかは分からない。童磨は相変わらずいつもの笑顔だったけれど、いつもと少しだけ違う風にも見えた気がした。


彼はいつも楽しそうに笑ったり、時には涙を流して哀れんだりしているけれど、宝石みたいにキラキラ輝く目の奥には、常に真っ暗な闇が垣間見えていた。琴葉はそんな童磨の暗闇を感じ取って、本当はとても哀しかった。

寺院の奥で、ひたすら人々を導きながら、彼は自分を押し殺してきたのではないか。だから、あんなに哀しい瞳をしているのではないのだろうか。

そう思った琴葉は、拙いなりに一生懸命、彼に光を届け続けた。野山に咲く花ばかりだったけれど、お天道様をたっぷり浴びた美しい花々は、きっとお心を癒やしてくれる。

童磨の瞳の奥の変化を見て、琴葉はほろほろと涙を流した。

「はい、教祖さまがそうおっしゃるなら…」



しかし、二人は根本的に異なっていることに、このときお互いに気づいていなかった。

琴葉は光を愛し、光を愛するすべてのモノから愛された者。対して、童磨は暗闇にしか居場所のない、人食い鬼。どんなに近づきたいと思っていても、どんなに近づけたいと思っていても、そこには超えられない巨大な壁が立ちはだかっている。



かたり、と廊下から音がして、童磨は顔をあげた。

「誰だい?」

すると、顔を出したのは女たちのまとめ役の老婆である。

琴葉は見慣れた顔にぱっと明るい表情になったが、老婆の方は相変わらずぎょろりと一目するだけで一言も発しない。童磨はそんな老婆の様子を察してか、琴葉に柔らかく退室を促す。

「はい、失礼いたしました…!」

慌てたようにバタバタと退室した彼女の足音が彼方まで消えるのを待ってから、老婆はゆっくりと口を開いた。


「そろそろ娘たちの宿坊が狭くなって参りました。いかがなさいますか」


老婆がこの極楽教でこの役を務め始めてから幾度となく、このような状況になることがあった。宿坊とは本来参拝者のために用意された宿泊施設なのだが、事情を抱えた女性たちにもその場所を提供している。手狭になってくると、必ず教祖へ伺いを立てるのが決まりになっていた。

教祖は彼女たちの身の振り方を指南し、人数の調整をするのだ。正式な信者として迎え入れ、各地の極楽教の末寺で役職を与えられたり、あるいは仕事を紹介して俗世での居場所を与えたりしているのだという。

だが、十年もこの仕事に従事していると気づくこともあった。


教祖は女好きだというのは事実だ。

だが、これといった色恋沙汰は聞いたことがない。かと言って、女たちを売買して儲けている、などという噂こそあれ、長年務めてそんな様子はついぞ見ることはなかった。

むしろ、何もない。なさすぎるほど、ない。

娘たちの行方は一切追えないほど、跡形もなく痕跡がなくなる、と言っていい。


(女たちは、この教祖によって殺められているのではないか…)


しかし、そんな薄ら寒い考えは頭の隅に追いやってきた。彼女たちは確かに酷い生い立ちの者が多かったが、若く、そして美しい。自分など、美しいと言われたことなど1度もなく、彼女たちのその後などどうでもよかった。

そんなことよりも、老婆自身はここより他に行く宛もない身。下手な詮索などせず、ただ言われたことをやっていけば飯が食え、布団で寝れる。


そうしてやってきたこの十年。しかし、年々この薄ら寒い気配は強くなっていった。


(この方は、老いることがないのか…)


十年前、ここへやってきた老婆は、今ではすっかり髪も白くなり、皺も増え、体も衰えてきた。その老婆がいつも仰ぎ見るあの方は、十年前と寸分違わぬ見た目のままだ。仮に教祖が十八ぐらいの歳だったとしても、それから十年、まったく見た目が変わらないことなどあるのだろうか。


ふと顔をあげると、教祖の美しい瞳がきらりと輝いてこちらを見ている。だが、その煌めきにおぞましいものを感じた老婆は、思わず身震いした。

「あれー。もしかして君、気づいちゃったかな。何年、ここにいるんだっけ?」


いつものように砕けた物言いの教祖だったが、老婆は思わず仰け反った。


「早いなぁ、月日が経つのは。人間はすぐ老いていく。可哀相なほどにね。顔も手足もシワだらけじゃない。そんなんで、悲しくならないの?」


あまりの恐怖に叫びそうになった老婆だったが、声は出なかった。代わりに目の前がどす黒い血しぶきに覆われる。理解できないまま、体がどしゃりと血溜まりの中に倒れるのを感じた。


老婆は悲鳴をあげる暇もなく、あっという間に首を切断されていた。


「やれやれ、次から別の世話役を見繕わなきゃ」


いつもと変わらない調子の教祖の声が、最後に響いて消えていった。





教祖の間を離れてしばらく、琴葉は赤子を抱えてとぼとぼと宿坊に向かっていた。

辺りはどんどん暗闇に包まれている時刻。

「なんだろう、この不安…」


琴葉は先程から妙な胸騒ぎを感じていた。あのとき、老婆を見やった教祖の瞳が、なんだか不気味に光っていたような気がして怖かった。

そう考えて、琴葉はブンブンと首を振る。

「怖いだなんて、おかしいわ」

あんなに素敵な花をくださった教祖さま。ずっといてくれ、と言った瞳の奥には、温かい何かがちらりと見えた気がしたのだから。


琴葉が部屋に戻ってくると、同じ部屋の娘たちが談笑をしているところだった。いつもの風景に琴葉は少し安堵する。


「あら、琴葉、伊之助ちゃん、おかえり!ねぇ、教祖さまご用事は何だったのぉ?」


そう言ったのは、ここに来て仲良くなった同年代の娘だ。恋話が大好きで、教祖のことをしつこいほど聞いてくる。

「教祖さまって、本当、琴葉のこと好きだよね。」

それを毎度「違う」と否定しても聞く耳を持たず、相変わらず進展を期待し続けている。

「教祖さまは私のことなんてそんな風に思っていらっしゃないわよ」

そう言うものの、今日は先程の花の件を思い出し、思わず赤面する。

「ふふふ、こりゃ教祖さまの奥方になるのも時間の問題だわね」

そう言ってからかってくるので、琴葉は「もう!」と拳を振って怒りを表した。だが、この茶目っ気のある娘のことは大好きだった。明るく気さくで屈託なくおしゃべりができる、大切な友人の一人である。


そこへ、信者の一人がやってきた。

「皆さん、教祖様が至急広間へ来るようにとのことです。身支度を整えてお越しください」


そう言ったのは、普段はこの宿坊には立ち入らないはずの者。

「お婆はどうしたんだろうね」

「先に行ってるんじゃないのかい?」

「なんの用事だろうね、こんな時分にさ」

娘たちは口々にそう言うものの、言われた通り、身支度を整えて廊下へ出る。琴葉も、なんだろう、と思いながらその列に並ぶと、先程の信者がそれを止めた。

「琴葉様はここへお残りください、とのことです」

それを聞いてますます分からなくなる。

「さっき琴葉は一人で呼ばれたじゃない?もしかしてあたしらもその件で呼ばれるのかしら」

誰かがそう言った。しかし、あの花の件とは違うのでは。琴葉はそう思うものの、うまく言葉が見つけられず、皆の背中を見送るしかなかった。



伊之助のおしめを替えて、お乳を飲ませて、ゆらゆらとあやしながら寝かしつける。


指切りげんまん

お守りしましょう 約束しましょう

あなたが大きくなるまでは

母さんひとりで 守りましょう


「…やっぱり、気になる…」

寝入ってしまった伊之助を抱え、琴葉は返ってこない娘たちを追って再び教祖の元へ足を運んだ。

夜はとっぷりと暮れている。



教祖の間は豪華で変わった造りの広間だった。

屋内に水を引き入れて水路がぐるりと囲っている。その水路を巡るように、蓮がそこらかしこに蔓延っていて、非常に幻想的な空間だ。

蓮は神聖な神の象徴として、極楽教では尊重されていた。故に、造花などの作り物の飾りなどもたくさん飾られているのだが、今は季節柄、水に浮かんだ蓮の花も咲き乱れて、さらに神秘的な印象を与えている。

そんな広間だから、近づくごとに水の匂いがしてくるのだが、琴葉は途中で異変を感じ取った。

生臭い異様な匂いとともに、悪い予感が背筋を這う。


「なんだろう。胸騒ぎがする…」


ぐっすり眠った赤子を抱え、広間の戸の前に立ってみる。話し声は一切ない。琴葉は思い切って戸を開けた。すると…


「なんだ琴葉かー。誰かと思ったよ。君はここに来なくていいって言ったのに、使いの者が言わなかったかい?」


教祖はいつものようににこやかな笑みを浮かべて立っていた。だが、その手はどす黒い赤に染まっており、辺りは倒れた娘たちとその血で埋め尽くされていた。


「きょ、教祖さま…!これは一体…?!」


あまりの臭気に気が遠くなるのを必死にこらえ、琴葉はかすれた声をようやくあげた。


「何って、みんなを救っていたんだよ。行き場のない可哀相な娘たち。僕は皆を救うのが使命だからね」


そう言う教祖の指先からは、


ぼと。


滴り落ちる真っ赤な雫が地面に音を立て流れ落ちる。およそ正気の沙汰とも思えない惨状に、不釣り合いなほど綺麗な瞳が朗らかに輝いていた。そしてその後ろでは、焦点の合わない瞳で空を見つめる、仲の良かった娘が横たわっていた。


「…なんてことを…!!」


琴葉は絶叫した。

大粒の涙を流しながら、まるで地団駄を踏むようにこの状況を拒絶した。


「間違ってます、こんなこと!あんなに明るく笑っていたのに、こんな姿になるなんて!!」

それに対して、童磨は「落ち着いてー」と取り繕う。

「どうしようもなかったんだよ。娘たちは居場所がないんだ。この寺院だって限りがある。皆を養ってあげることはできないだろう?それに娘たちは救われたがっていた。生きるのが嫌になるほど苦しい目にあってきたんだよ。それを救ってあげるのが極楽教。そして、その役目を担うのは俺なんだ」


しかし、琴葉は聞き入れなかった。

頑なに首を振り、涙を流し、愛らしい顔を歪めて叫んでいた。

「教祖様、違います!こんなことでは救われません!苦しかったからこそ、幸せをつかめる機会を見つけるために生きるのに。もっとこれからたくさんのことが起こるはずだったのに。その機会を奪うことは救いではありません!」


どうしても受け入れない琴葉に、童磨はため息をついて項垂れた。

「しょうがないなぁ。やっぱり俺の善行を理解できる頭じゃないのかなぁ」

そう言って一歩、一歩と近づいてくるので、琴葉は後ろに下がろうとして腕の中の伊之助を見た。

(ああ、伊之助。伊之助がいる…)

ぐっすりと眠っている我が子だが、この状況は我が子の今後を危うくする事態だとようやく気づいた。

琴葉は近場にあった物を投げつけた。

「来ないで!」

娘たちの遺品もあれば、広間の装飾、蓮の花をかたどったものもかまわず投げた。


「琴葉」


そんなものにはビクともしない童磨からは、さっきの笑顔が消えている。そして、瞳の奥は真っ暗だった。いや、ただの暗闇ではない。そこには何も映らない、空っぽで虚しい世界しか映ってはいなかった。


(殺される)


そう悟った琴葉は、最後に生きた蓮の花を一握り掴んで放り投げた。童磨に当てられたその花は、ぼろぼろと砕けて地に落ちる。その花弁が童磨に踏み砕かれたのを見送って、琴葉はその場を逃げ出した。



追い詰められた琴葉は、愚かにも人里離れた山奥に逃げ込んでいっていた。

最後に、あれだけ大事にしていた赤子を崖から落としてしまう愚行にも心底呆れたのだが、琴葉は最後にこう言っていた。

「大丈夫。伊之助なら必ず生き抜いてくれると信じてます」

そう言い残した琴葉の愚かさに涙を流しつつ、何故か非常に不愉快な感情が沸き起こった。

「俺のことは信じなかったのに、非力な赤子のことは信じるんだね」


そして記憶は闇の彼方へ葬り去った。

彼はその後、このときの感情を思い出すことはなかったけれど、「信じる」という人の強い情念に初めて心を揺さぶられたのは、彼の最期の時だった。

人は、人を「信じる」のだ。生まれも育ちも、思考も能力も違う相手であろうとも、すべてを受け入れ「共に有る」と心の底から思うこと。童磨は宗教の教祖にして、「信心」を一番身近にしていたはずなのに、童磨自身を信じてくれた人は一人もいなかった。本当は、琴葉に信じてもらいたかったのだ。初めて童磨の心に語りかけてくれた人だったから。

結局、彼女に与えたコチョウランは、虚しく枯れて散っていった。