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砕け散ったプライドを拾い集めて

爆心地(グラウンドゼロ)

2020.02.09 04:25

40年を超えるアメリカ の友人がいる。名前はHMという。今はニューヨーク市からハドソン川を北へ遡った小さな町に住んでいる。
だが、35年ほど前の2年間ほど横浜の青葉区に住んでいたことがある。それ以前はパリやロンドンにも住んでいたはずだ。

彼はユダヤ系のアメリカ人で、IQがすごく高く、経済学の修士を持ちながら、かつては作曲家をやっていた。その横浜にいる頃から画家になり、修行を続けていた。(今では、アメリカでちゃんと画家をやっている。)
彼のホームパーティに参加したときだったと思う。アメリカ とかヨーロッパの話になったとき、彼が……

 「俺はユダヤ人だ。アメリカが自分の国かと言われれば、ちょっと違う気がする。今はたまたまアメリカにいる、もしくは、たまたまアメリカ人をやっているという言い方のほうががしっくりする」

さすがにコスモポリタンってそんなものなのかって感心した。
そしてさらに、ニューヨーク市の話になったときに、彼が、


「まてまて、NYってUSAにとってそんな大きな存在ではない。俺にとってもね。明日NYが海の底へ沈んだとしても、どうってことは無いんだよ。」

おお!「メタ認知」の極意……空の高みからオノレを見ている!


2001年の9/11の「アメリカ 同時多発テロ」の翌年、友人と一緒にマイアミからNYへ入った。友人が「グラウンド・ゼロ」を観たいという。見物に行くところなのか?と一瞬過ぎったが、「黙祷」しに行くんだと自らを手懐けて出掛けた。 「爆心地(グラウンド・ゼロ)」の周りはまだ工事現場にあるような仮設の壁で仕切られていたが、窓は何箇所かはあり、そこから〝鉄骨の十字架〟が見えた。組んであった鉄骨が偶然十字の形で残っていたものだ。(今では「グラウンドゼロ・クロス」と呼ばれているそうだ。)それに向かって黙祷を捧げた。

その日の夕刻、HMと落ち合って三人で食事のあと、ホテルのバーへ。彼の方から9/11のツインタワービルの話をしてきた。

「人が何人も降ってきたのをTVで見たか?!」
「ビルの上部が燃えているのに、構わずに駆け上がって行った消防士……それから間も無く崩落したのであの彼は……」

と言い、よく見るとHMの目には光るものが……。
そして、消防士のヘルメットをワザワザ買ってきて、家に飾ってあるという。彼らの勇気と献身を忘れないために……だという。

 


おいおいおい。たかがたまたま住んでいるアメリカのことじゃないのか?
NYが海の底へ沈んだところで、どうってことないって言ってたよね?
ビルが2つぺしゃんこに潰れただけだよ?
いつのまに、そんな愛国者になったんだよ?

責めてはいない。 人間って、そんなものだ。
何も質さず、そっと置いておいた。