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NPO法人こおりやま子ども若者ネットワーク

2019.12.15子ども若者に関わる100人会議

2020.02.10 12:18

こんばんは。遅くなってしまいましたが、2019年12月15日にこおりやま子ども若者ネット設立1周年記念シンポジウム「子ども若者に関わる100人会議」が開催いたしました!

当日は名実ともに100名の来場者があり、子ども若者に関して関心が高まっていることが感じられました。
午前中は放送大学名誉教授宮本みち子先生による基調講演、その後は郡山市内で活動する実践者によるパネルディスカッション、午後は「居場所」「就労・仕事」「不登校」の3グループに分かれ分科会を実施しました。

本当はひとつひとつブログらしくご報告したいところですが、情報量が多いためこわかネットが作成した実施報告書からの転記をもって、今回の活動報告とさせていただきます。


こおりやま子ども・若者ネット
設立一周年記念シンポジウム
~子ども若者に関わる100人会議~
実 施 報 告 書

こおりやま子ども若者ネット

日 時:令和元年(2019)12月15日(日) 10:00~16:00
場 所:ポラリス保健看護学院(福島県郡山市向河原町159番7号)
主 催:こおりやま子ども若者ネット
後 援:郡山市

セミナーの概要
【午前】

第一部 基調講演
 講師:宮本みち子 氏(放送大学・千葉大学 名誉教授)
 講師紹介: 若年層における失業者・フリーター問題、生活困窮者、貧困問題、社会的な孤立等の問題について、日本及び国際比較の研究に尽力。国及び地方自治体の子ども・若者政策の立案や、全国の若者支援団体の活動を精力的に行っている。
著書:『若者が無縁化する』(ちくま新書)、『すべての若者が生きられる未来をー家族・教育・仕事からの排除に抗して』(岩波書店)ほか。

 テーマ:子ども・若者の生きる権利を支える地域社会
~子ども・若者育成支援推進法の10年とこれから~

 概要
講演者宮本先生から、まず始めに日本における子ども・若者支援(支援の必要性の背景)についてお話を頂いた。青年期の位置づけと成人期への移行課題についての説明があった。移行期のリスクとしては、低学歴、低学力、心身のハンディキャップ、学校における負の体験、情報不足、困難な状況に陥った際の脱出できる力の格差、親世代からの格差の引継ぎ等が報告された。自己責任論から脱却される本人の背景に関しての課題が共有された。

また近年の子ども若者を取り巻く傾向についても、引き続き困難な状況が報告され、その困難な状況に包括的若者政策が、どの様に展開されているのかの概説がされた。2005年の「若者自立塾」、2006年から「地域若者サポートステーション」等が制度的に開始された政府側の議論の内容や、その時点での仮設(その後、仮説検証の結果、おおよそ想定されていない実態が見えてきたこと)が報告された。当時、政府の座会に出席する事の多かった宮本先生ならではの、事実に沿った話が分かりやすく会場に届けられた。

若者包摂政策以外にも2009年からの「ひきこもり対策推進事業」、2014年「生活困窮者自立支援法」2014年の「こどもの貧困対策法の登場等、若者政策からユニバーサルな支援への転換期の課題についても報告がされた。

最後に、日本における包摂制度の特徴を「申請主義」「家族扶養の前提主義」「捕捉率の低さ」「給付無し包摂」等の海外との比較から、課題を論じた。そうした背景もあり、支援機関の深度や展開が困難な事、選択肢が増えていない現状のなか、既存のリソースの繋がりを強化したり、新しいアクターが登場しやすくする土壌を創ることに意義があるとの論を話され、こおりやま子ども若者ネットの存在意義の重要性を会場や我々に伝えて頂いた。

時間の関係で会場からの質問時間をとることが出来なかったが、有意義な報告を多々いただいた。

(報告者:こおりやま子ども若者ネット代表 鈴木 綾)


第二部 パネルディスカッション
● パネリスト(3名)
【不登校・フリースクール】 遠藤 真弘(大町キッズベース所長)
【就労】 七海 一代(福島県中・県南若者サポートステーション)
【居場所】 櫻井 優(生き方工房necota)
● コーディネーター: 小林 直輝(こおりやま子ども若者ネット事務局)
● コメンテーター: 宮本 みち子(放送大学・千葉大学名誉教授)

● 概要
パネルディスカッションでは、「不登校・フリースクール」「就労」「居場所」の実践者3名に「私たちは何を支援しているのか」をテーマにそれぞれの視点から大切にしていることや、活動から見えた課題などをお話しいただいた。遠藤さんは、元教育委員会にいた立場から子どもの「適応」とは何かを考え、公的サービスの隙間であるフリースクールの活動に取り組んでいる。七海さんは、これまで民間企業に勤め、福祉でも相談者の立場でもない畑違いの場からこの業界に飛び込んできた。櫻井さんは、自身の不登校の経験から「学び」の重要性を提言し、自ら学びの場をつくる活動を始めている。

《支援とは何か》

櫻井さんは支援のような上下の関係や、助けて「あげる」・「られる」の関係ではなく、お互いに同じ立場にある、学び合える立場と話されている。七海さんは、行政の委託事業として就労支援を行っているが、決して「就労させる」という立場ではなく、若者と一緒に併走している感覚でいるという。しかし、活動を伝える相手に併走といってもなかなか伝わらないため、支援という言葉を使うことが多い。遠藤さんは、支援という言葉は使うが、子どもたちが自分自身の力でできるようになる=生きる力を育むことを大切にしている。

《持続可能な活動を続けていくためには》
櫻井さんは、お金になりにくい活動をしているがその重要性を説いている。また支援者自身が経済的に恵まれにくい状況も危惧しており、持続するためには活動する人が報われるようなものも必要だと考えている。七海さんは、自分たちだけで活動せず、いかに地域の中に味方をつくるかが大事と話している。遠藤さんは、経営的なところよりも、支援者の当事者性についての不安を話していた。不登校経験が無い支援者が何をしたらよいのか、人材育成をどうしたら良いのか課題に感じているという。

《総評》
宮本先生より、特に当事者性・非当事者性の関係についてコメントをいただいた。支援の現場には、どちらかだけに偏った考えをもってはいけない。当事者性の無い人間は謙虚に現実を学んでいく姿勢が必要であり、逆に当事者性をもった方はその当事者性を脱した客観的な視点で何が必要かを捉えていかなければならないという。お互いの弱さを認め合うことが、持続可能な社会の在り方だと話されていた。
(報告者:こおりやま子ども若者ネット事務局 小林 直輝)

【午後】

分科会(3つ: ①居場所 ②就労・仕事 ③不登校・フリースクール)

 分科会①:居場所
 コーディネーター
・新美穂里(一般社団法人グレースコミュニティサービス)
・櫻井龍太郎(生き方工房necota)
 スピーカー

・工藤信一(ぼんじょいの会)

・小林直輝(NPO法人ビーンズふくしま)

本分科会を開催するにあたり、準備会では市内で居場所づくり活動をしている団体が集い現在の実践課題の共有を行った。その結果居場所の価値の言語化と発信が必要であるという長期的な目標認識で一致した。そのために今回の分科会では事前に居場所に関するアンケートを集めた上で、子ども食堂や多世代交流事業を行っている「ぼんじょいの会」工藤氏、若者世代の居場所づくり活動を行っている「ビーンズふくしま」小林氏の実践報告を受け、「居場所の多様性」に関する共通認識を共有し、分科会参加者が願う居場所像を検討した。

 実践報告① 工藤 信一氏(ぼんじょいの会)

・核家族化、共働き世帯や一人親家庭の増加という背景があり社会的弱者と言われる子ども・高齢者を孤立させない場として一緒に活動できる場の提供と食事の提供。心と身体両面から栄養を補給する事を目的としている。

・活動内容としては、「ジョイクラカフェ」としてこども食堂を毎月1回主に子どもと保護者が参加。その他、ジョイクラ子ども塾として適宜、農業体験や茶道・そば打ちなどを開催。

・今後の活動は継続性をもっていくために、若いスタッフの確保とモチベーションの維持が課題。そのためのインセンティブの検討や公民館に月に1度だけあつまるのではなく、回数の増加や小規模での活動も模索していく必要性がある。

 実践報告② 小林 直輝氏(NPO法人ビーンズふくしま)
(若者世代向けの「ユースプレイス」と高校生向けの「すきまカフェ」の実践報告)

・当該事業は何か特定のコンテンツを用意して提供するものではなく、集うメンバー発信によるプログラム作りを基盤にしている。スタッフと参加者が対等で主体的に作る、ゴールや期限を設けずに場づくりを進めている。目的をつくることが排除につながるため、目的は作らず、来た人一人一人に目的を合わせている。

・目指していく社会としては、ユースプレイスから多様な人に繋がっていき、ゆくゆくは地域の活動につながるような活動にしていく。形は何でもいいが、その人に合った場が繋がり続け輪が広がっていくイメージ。

 グループディスカッション
自身が作りたい居場所はどのようなコンテンツ・要素。拠り所があるか。または無いものは何かという問いのもとグループごとに議論し、居場所における目的の必要性や不必要性、子どもと大人の対等性、安心安全の場づくりについて、ゆるい繋がりの必要性などの議論が行われた。

(報告者 生き方工房necota 櫻井 龍太郎)

 分科会②:就労・仕事

3名の方から子どもや若者の就労・仕事に関するキーノートスピーチを聴いた後、グループディスカッションを行った。

 キーノートスピーチ

① 七海 一代氏 (福島県中・県南若者サポートステーション 総括コーディネーター)

福島県中・県南若者サポートステーション(以降「サポステ」)の紹介の後、実際にサポステの相談窓口から見えてきたことについて話があった。初回相談内容の傾向、相談者の属性、若者の悩み、本人を取り巻く地域課題について説明があった。就労相談だけでなく、それ以前の悩み(家庭環境、金銭、ひきこもりなど)の相談も多く寄せられている現状があることがわかった。
② 深谷 昇氏(認定NPO法人キャリア・デザイナーズ 理事長)
中高年ひきこもりについての話があった。実際に活動している様子を画像を見ながらの説明であった。中高年ひきこもりの支援をするうえで、まずは安心した雰囲気で社会参加できる環境が必要なこと、そして、社会参加した後の実践的なトレーニングの必要性についての話があった。地元企業が受け入れ事業所となり、中高年ひきこもりの方のジョブトレーニングを実施している様子について詳しく説明がされた。
③ 戸部 裕子氏(認定NPO法人ほっとスペースR)
「障がい者手帳を持つ若者の自立について」をテーマに、地域の現状の話があった。その後、一般就労だけにこだわらない働き方(フリーランス、小規模事業)の模索や集団に入っていくことに困難のある若者が、自分に合った形で就労・自立できるようになるための支援やマネジメントの必要性について話があった。最後に、自立とは何なのかという問題提起があった。

 グループディスカッション
キーノートスピーチを受けて2つのテーマについて、3つのテーブルに分かれてディスカッションを行った(①子ども・若者の就労・仕事に関して地域で気になること、②子ども・若者の就労・仕事に関して、明日からやってみたいこと)。参加者からは、「地域で働く場所がない」、「本人がやりたい仕事が、支援側から見てむずかしいと感じられるケース」、などの話があった。当事者として参加した方からは「就労していないという事を言いづらい雰囲気がある。」などの意見が寄せられた。

 総括

キーノートスピーチでは、国(厚労省)の機関として、若者サポートステーションには様々な相談が寄せられるものの、年齢制限(15歳から39歳まで)や相談内容の幅広さのため、支援が行き届かない現状が明らかになった。こぼれてしまう例として例えば、中高年ひきこもりや障害者(精神・知的・発達)があげられる。3つのキーノートスピーチで挙げられた話題(若者の相談窓口、中高年ひきこもり、障害者支援)が相互に関連している現状がわかった。キーノートを受けて会場では活発な意見交換が交わされ、地域の現状の理解や今後の連携についてのきっかけ作りの機会となったように思われる。

(報告者 認定NPO法人キャリア・デザイナーズ 鈴木 隆将)

 分科会③:不登校・フリースクール

 不登校経験者のお話
 中学校2年生から不登校になった。学校に行かされるのが嫌だったので、勉強もしなかった。なぜか、勉強すると学校に戻されると思っていた。高校は通信制に行ったが、勉強したい気持ちが高まってきて、専門学校に進学した。この時、一生の師と仰ぐ教員との出会いがあった。あたたかい目で見守り、適切な助言をいただいた。

専門学校卒業後はいったん就職したが、また勉強したい気持ちになり、通信制の大学に進学した。大学卒業後は一般の会社に就職し、現在に至っている。

不登校になったときは、父親が単身赴任中で、厳しい言葉を毎日聞くことにはならなかったので、よかったかもしれない。両親には心配をかけたり、経済的に負担をかけたりしたが、今は感謝している。

 不登校の家族(母親)のお話
 3人の子どもがいるが、真ん中の男の子が小学校1年生の時に不登校になった。お腹が痛いなどの身体的な兆候も出て、学校を休ませることにした。母親としては不安が募るばかりで、どうしてよいかわからない状態が続いたが、様々な会合などに出席して不登校を理解しようと努めるうちに、少しずつ不安が和らいできた。

 しかし、そのうち長男が不登校になり、一番下の長女も不登校になってしまった。そんな時、2か月半で小中高の基礎学力を身に付けて大学進学をした親子を知り、地域で講演会を開催する企画を考え、実行に移した。先日は、親子の本の出版を機に2回目の講演会を開催したところである。現在は、子どもの成長を願いながら、穏やかな日々を送っている。

 グループ討議
 家族1グループ(7人)、支援者3グループ(20人)で、それぞれにテーマを設けて意見交換を行った。主な内容は、次の通り。

(家族のグループ)

・ とにかくお金がかかるので、大変である。公的な支援があれば助かる。

・ 「学ぶ」ということについて、様々な意見交換をした。学ぶことが大人になる時にどれだけ必要なのか、社会に出るときに社会性がどれだけ育っていればよいのか、など。

(支援者のグループ)

・ 今の教育制度と現実のギャップが大きい。学校の在り方について再考する必要がある時期に来ているのではないか。

・ 「普通」ってなんだろう。普通という尺度が子どもや親を苦しめているのではないか。
・ 学校へ行く意味は何か。不登校は悪なのか。

・ 不登校生徒はエネルギーが溜まって、その時期が来ると学びたくなるものである。焦らず待つことも大切ではないか。

・ フリースクールを地域に組織したいが、どのようにすればよいか。 

→ 運営資金づくりや仲間づくり、理念づくりや支援者集めの大切さなどについて意見交換をした。
・ 学校と不登校の子ども・家族は、なぜ分かり合えないのか。 

→ 教員の多忙化が相互理解を阻害している面もある。お互いを理解し合う場がもっと必要ではないか。

(報告者 大町キッズベース所長 遠藤 真弘)

以上

報告書の構成: 

こおりやま子ども若者ネット事務局 鈴木 隆将(認定NPO法人キャリア・デザイナーズ)