単色のリズム 韓国の抽象
昨日初台のオペラシティに行きました。昨日の目的地はホールでも近江楽堂でもなく、アートギャラリーでした。
そこで展示されていたのは韓国の何人かの抽象画家の作品です。
大きなキャンバスにほとんどモノクロームで描かれた作品や、和紙のような韓紙を使った平面作品などです。
マーク・ロスコ―が好きなのですが、そっち系統のものです。
この墨で書かれた横長の作品は、徐世鈺(1929-)の作で<<群舞>>という題名。手をつないで踊っているような姿ひとつひとつの表情が微笑ましく、体の流れるような動きがあり、また画面全体の濃淡の配置、構成が素晴らしいです。
どう描いたか想像するとそれが簡単なものでないことが分かります。墨を付けてどこからスタートしてどこまで一息に行くか。
音楽に比べて、美術は本番がなくて、毎日ゆっくり積み上げて一つの作品ができて、ある時間に絶対にやらなくてはいけないものではないからいいなあなんて思うこともありますが、これは限りなく本番の緊張感を持ち、そういう意味で時間が厳しく絡み、音楽の手法を想起させるものでした。
きっと多くの練習を重ねてこの最後の1枚が出来上がったのだと想像します。
出来上がったものはでもこうやっていつも(つまり、演奏者が舞台に立たなくても、オーディオのスイッチを入れなくても)こちらに素敵な光を送ってくるという意味では紛れもなく美術作品なわけです。
次のこのぼうっとそびえたつ作品が私は一番好きかもしれません。一言で言えばとても大きなキャンバスに四角がひとつかふたつあるだけなのですが、それが絶妙な形と位置と質感を保って描かれています。
これだけ単純なものだけでこの大きな平面を支えられるパワー。
ちょっと写真だけでは想像しにくいもしれませんが、緊張と広がりを同時に感じさせる力強い作品です。男性的で、哲学的な手仕事の世界です。偶然のように見えるにじみやシミひとつひとつはあるべくしてあり、美しい。
寡黙でありながら、作家の目がこの世界の何を見ているか、何に心を動かされているかがわかり、それに強く共感を覚えるのです。尹亨根(1928-2007)の作品。
全部で19人の作家の作品が展示され、一部屋に1人か2人の作品という感じで、とてもいい感じで配置されていました。
一人一人がそれぞれ独自の感嘆すべきテクニックと方向性を持っていて、日本人がこれだけ複数の人がこういうひとつのやり方(抽象)をテーマに対してそれぞれが別のものを提示できるだろうかと思いました。
韓国人は力強い大陸の人なのだと、そして家に帰ってカタログを読んだりして、朝鮮戦争、祖国の分断という厳しい環境を超えた人たちだということにも気が付きました。
12/24までです。本当に行って良かったと思ういい展覧会でした。
(2Fの併設展は見なくてよいと思います。)