「猫と悪魔」ジェイムズ・ジョイス ジェラルド・ローズ
20世紀を代表する偉大な作家ジェイムズ・ジョイスは自身の孫に当てた手紙の中で、唯一子供のための童話を書いていました。
その発表するつもりも恐らく無いまま書かれたお話に、ジェラルド・ローズが挿絵を付けて絵本にしたのが、本書「猫と悪魔」です。
フランス/ボージャンシーを舞台にした、所謂「悪魔だまし」のお話ですね。
ボージャンシーの町を流れる大きなロワール川。
けれど、その大きな川には橋が架かっていませんでした。町には、橋を架けるほどのお金がなかったのです。
ですので、町の人達はいつも舟に乗って向こう岸まで渡っていたのです。
不便をしながらも暮らしていたのですが、そこへ悪魔がやってきて、市長に、代償を寄越せば、一晩で橋をつくってやる、と言うのです。
市長はその話を受け入れ、悪魔に橋を作らせるのですが…。
孫を溺愛していたジョイスが、なんとか楽しませたいと手紙に書いた一篇の童話は、楽しく言葉遊びに満ちていて、そして付けられたジェラルド・ローズの絵がとても良いです。
ジェラルド・ローズは「トラのじゅうたんになりたかったトラ 」が日本でも比較的よく読まれているでしょうか。その絵を見たことのある方も多いとお思いますけれど、この「猫と悪魔」は、日本語になっているジェラルド・ローズの作品の中では、絵に関して言えば一番良いと思っています。
絶版になって久しく、なかなか手に入れづらい絵本ですので、古書価がすこし高くなってしまっているのが申し訳ないのですが、是非ご覧頂きたいです。
巻末にはジョイスと言えばのお二人、翻訳を担当した丸谷才一さんと、英文学者の大澤正佳さんの読み応えのある解説が掲載されているのも嬉しいです。
(今まで読んだ絵本の中で一番長い解説である気がします…)
ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。
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