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鬱病患者と灰色の朝

2020.02.28 15:10

今日がまだ始まらない部屋に曇り空が雪崩れ込んできて、

ナンニモ、シナイをしてる僕を 天井の染みが眺めていた

化学繊維製の洞窟を正午手前に抜け出したのは

眠気の反対を拵えて 人に擬態したヒトモドキだった


あの人は今日も仕事に行く ぼくは仮想世界に逃げ込む

現実が日々動いてるのが何より非現実的だった

父さんの優しさが逐一胸に刺さって死にたくなった

画面の向こうで死のうとして 却って人を殺し続けた


心が弾力を失って 無感動にただ日々が過ぎ去って

世間から切り離された僕の今日は何事もなく終わった


この世界が明日消えてもどうでもいいよ

風の音さえ止まれ

無責任な励ましの言葉がただ痛いよ、痛いよ、痛いよ

逃げることからも逃げたくなるほど惑って

眠れなくなっているのは灰色の朝が明日も落ちてくるから


生活の底に横たわってただ机の角を眺めてた

液晶伝った笑い声は聞くだけで胸が痛くなった

年端もいかないメダリストが涙ぐんで話した言葉も

僕の生産性の欠如を暗に嗤ってるみたいだった


それを厭世的と嗤う人も 死にたきゃ死ねと宣う人も

痛くない死に方を教えて そしたらちゃんと消えてあげるよ

夜は悪い夢の中で溺れて 目覚めた朝には失望して

それでも頭をもたげながら気怠さの中に思い出した

この世で生きるしかないことを。


この世界に相応しい生き方も出来ずに透明になってしまう

それでも人の眼も声も仕草も怖いよ、怖いよ、怖いよ

生きた証も傷跡も残せないままで

それでもいいと笑う

こんなに愚かでも生きてていいですか。