㊸産声のない出産
O先生は、
淡々と私の処置をしてくれました。
と言っても、
会陰切開もする事なく、
裂けることもなかったので、
残った胎盤を出すだけです。
お腹を押されて痛かったのを覚えています。
私…赤ちゃんに会ってない。
どして?!
聞くのが怖いと思ったその瞬間、
オギャーと小さな声が聴こえました。
O先生
「泣いたね。」
私
「うん…
良かった…」
涙が私の頬をつたいました。
これは、
後から夫と助産師から聞いた話しですが、
双子弟は、産まれた時、失神していて、
息をしていなかったそうです。
O先生は、赤ちゃんを見て、
すぐ後ろにいた、
新生児科の男の先生に赤ちゃんを渡して、
その先生が中心となり、蘇生させました。
赤ちゃんを取り囲むように、
沢山の人が居て、
とても怖かったと…
もう失いたくない…
その想いは一緒でした。
その間約1分…
夫は、その様子を見ていて、
途中、看護師に、
「旦那さんは見ないで下さい。」
と言われたときに、
死を覚悟したと言っていました。
知らない間に
私よりも怖い思いをさせてしまったなぁと。
胸が締めつけられるようでした。
そして、産まれたばかりなのに、
このピンチを乗り越えてくれた
強い赤ちゃん。
よく頑張ったね!
立派だね!!
新生児科の先生方には、
感謝の気持ちでいっぱいです。
O先生は、私の処置を手早く終えると、
何処かに行ってしまいました。
……
でも、直ぐに戻ってきました。
その手には、
赤ちゃんを抱いていました。
O先生
「赤ちゃん連れてきたよー。
会いたかったでしょ!
ほら、大丈夫だよ。」
私、夫
「頑張ったね!
よくやったね!
可愛いね、可愛いね!」
おててを触りお顔をすりすりしました。
O先生
「呼吸が苦しそうだから、
もう連れて行くねー!」
私
「ありがとうございました。
O先生、大好きです!」
なぜか、ありがとうよりも大好きという言葉が先行😁
O先生
「ありがとう…(笑)」
O先生が部屋を出て行きました。
そして、
O先生と入れ替わるように、
新生児科の男の先生が入ってきました。
自分たちが双子って
分かるのはいつなのかなー?
もう、何となく分かってるのかなー?