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The Weekend Traveler

こうなる前の香港のこと。

2020.02.23 03:53

世界がこんな風に閉じてしまう前の話。

10月後半のとある週末、香港に行ってきた。


羽田発の深夜便の恩恵を受けてもう4回目の香港。

ただし今回の香港はデモという大きなムーブメントの最中の旅。とはいえ、今となってもそれさえはるか昔の出来事のよう。

早朝4時半くらいに空港についてそのまま友人宅へ転がり込む。

今回の旅で初めてお目にかかった友人のネコ様に寝床を借りてひと眠り。


起きて遅めの朝食にでかける。

さすがにデモで荒れてるのかなと少し心配していたけど町は穏やか。

香港の朝ごはんと言えばお粥。

私のはコーンのお粥。優しい味が空腹の胃袋に染み渡る。

肉とか出汁になるようなのが入っていないお粥は薄味なのでおかずみたいなのと一緒に食べたりこんな調味料で味を足したり。

塩コショウと一緒にゴマがあるのが中華圏ぽい。

お粥を待つ時間は焼きそば食べたり、お粥には揚げパン浸したり。

つるつるのお餅みたいなのに包まれたエビとネギをタレと食べる。

美味しすぎておかわりする女たち。

揚げパンたちは店の前のショーケースにいて、これだけ買っていく人たちも。


お腹が満たされて、なんと隣が足マッサージ屋さんだったので友達が受付してくれて、さらなる至福の時に身を浸す。

香港のマッサージは価格的にも店の敷居的にも日本よりカジュアルでお手軽に入れる。

色んな国でマッサージしてみてるけど、香港の足マッサージは中でも極楽クラス。


金曜の会社から夜を超えてきた体も元気になったところでお買い物へ繰り出す。

今回は前回時間切れでゆっくり見られなかったモンコックの市場に時間をかけることにする。

10月末でも暑い香港だけど、風が抜けていくと夏とは違う涼しさがある。

こんなに平和的で穏やかな週末の午後なのに、電信柱にはデモの場所が書いてある紙が貼ってあって、今日はここには近づかないようにしようとか気をつけなきゃいけない現実に、少しピリッとなる。

鳥屋街の入り口には陶器でできた艶やかな柵が。

わたしが好きなアジアの美しさってこういうしっとりした艶っぽさみたいなとこにある。


こういう模様も品があってとても素敵。


素敵模様の隣には大量の鳥かご。

実は鳥が好きじゃないんだけどかごの中にいてくれるなら近づける。


こうやって並んでる鳥かごを見ると、香港のアパート群に暮らす香港の人たちみたいって思う、と香港在住10年越えの友人が言う。確かに。

鳥かごの中に暮らす香港の人たちそれぞれには人生ドラマがあるみたいに、この鳥たちも買われた先でいろんな人生があるんだろうか。


鳥屋街から次は花屋街へ。

今だったら「密です!」ってどこぞの知事に手のひら向けられそうな光景だけど、この時はまだ、というか本来はとても平和で穏やかな生活風景。

花屋街のあたりで友人家族は家に戻り、旅人のわたしともう一人の友人はフラフラと小腹を満たしに喫茶店に入る。

知らない町で食事に入るのって結構賭けみたいなところがある。

ローカル感を感じられつつ、美味しいものがあるところ、この際言葉は通じなくてもよい、という心の中の条件を満たす場所にありつけたよう。

みんなおしゃべりとおやつに夢中。


前回も飲んだ甘いコーヒー。この牛さんのデザインが好きで前は缶を買っていったら、中身が練乳だったらしく、液体ってことで空港で没収された。どっかに売ってないかな、このカップ。

香港では毎回エッグタルトを食べてる気がする。

前回はマカオでも食べた。

昨日、そういえば横浜の中華街でも食べた。

もしやわたしはエッグタルトが好きなのかな。


頷ける魅惑の黄金色。

このメロンパンみたいなのにバターがてへぺろみたいに挟まってるのが、この店の人気メニューだそう。相席のカップルが教えてくれた。

旅先だからって自分の根本の性格が変わるわけではないけども、好奇心がよりむき出しになっていつもより物怖じしなくなる。面白そうだから食べてみた。

メロンパンにバター、、、っていうそのままの味がまた面白かった。


喫茶店を後にして、文房具屋やらなんやらを覗きながら小さい買い物を楽しむ。


楽しみながらまた食べる。

「秘製 大腸頭」って漢字のインパクトすごいね。

またもぐもぐしながら歩く。香港は食いしん坊にとってかなりの天国。


なけなしの罪悪感で薬草茶を飲んでみる。

美味しくはないけど体によさそう。ついでに罪悪感も流してくれる。


そんなこんなで全然お腹は空いてないけど夕飯が始まる時間になるので、友人宅への帰路につく。

デモの影響で電車が早く終わってしまうから、夜の宴会もまだ明るいうちに始めるそう。

香港の一日目はこれで終わり。


去年の香港といい、今の世界といい、当たり前にあった風景がこんな風に奪われてしまうなんて、これも一種の諸行無常なのか。

鳥屋街の鳥たちとだいたい同じように暮らしてる今の生活の中で、灰色の気持ちに染まらずに居るのってなかなか簡単じゃない。

だけども、日が射せばなんだかうれしくなるし、風がそよそよしてたら気持ちよくて少し幸せになってまだ世界は終わりじゃない、と思う瞬間もたくさんある。


きっとこのウィルスとの闘いを抜けた先はもう違う未来の世界になっていて、きっともう同じ香港、同じ日本には戻れないんだろうなと思うけど、この先、どこの国に行ってどんなものに出会っても、変わらぬ好奇心と敬意をもって新しい世界と付き合っていきたいな。


おしまい。